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はじまり

結婚しよう、といった。
クリスマスイブ、イルミネーション、遊園地、観覧車、というベタな、それはそれはベタなシチュエーションで。
それでもこの言葉が特別な意味をもつのは、プロポーズのその先がないからだろうか。

僕らは二人ともトランスジェンダーだ。
いわゆる、からだは女性・こころは男性、あるいは、からだは女性・こころは男女どちらでもない、というやつ。
戸籍上女性同士の僕らに、今のところ婚姻という選択肢はない。(日本を飛び出すか、どちらかが性別を変更するかすれば別だけれど。)
二人の地元も、これから一緒にくらすつもりの街も、パートナーシップ制度がない地域だ。

そういう意味で、僕らにプロポーズの先はない。
でも、どうしても、結婚しようといいたかった。
その選択肢がないからこそ、結婚という言葉にこだわったといってもいい。

これは、さしてかっこよくもないプロポーズからはじまった、二人のその先の話。

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