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大混乱!大満足!「デザインに恋したアート♡アートに嫉妬したデザイン」@大阪中之島美術館 に行ってきた
ことあるごとに「アートってなんなん??」と疑問に思っている僕のための展覧会じゃないか!(言い過ぎ)
と思って行ってきました「開館1周年記念展 デザインに恋したアート♡アートに嫉妬したデザイン」@大阪中之島美術館。
大阪中之島美術館もお初です。
※記事中の写真は撮影可のトコロ・モノを撮らせていただきました。スマホでしゃしゃっと撮りなので見にくいかもしれません、すみません。
展覧会概要
私たちのまわりにあふれる「デザイン」と「アート」という言葉。学校や職場でも、ショッピングや食事の途中でも、テレビやネットの中にも、そしてビジネスシーンにも。でも、デザインとは、アートとは何でしょうか。そして、デザインとアートの境界はどこにあるのでしょうか。この展覧会は、およそ100点に及ぶ戦後日本の多彩な作品を時とともに追いながら、デザインとアートの境界や“重なりしろ”を見つけていく小さな旅です。変化する社会状況や生活、思想や表現への情熱を抱え、デザインとアートそれぞれの世界で制作に心を傾ける人々が時に相手に恋し、時に相手に嫉妬して、それを自らの糧として新たな作品を世に送り出してきたのかもしれません。ひとつひとつの作品を前に、みなさんひとりひとりが、「これはデザイン?」「あれはアート?」と問いかけ、楽しんでください。
開館1周年を迎えた大阪中之島美術館の活動の両輪であるアートとデザイン。この2つを併せて並行的にご紹介する初めての展覧会です。また、この展覧会は、美術館が準備したストーリーに来館者を誘うのではなく、来館者のみなさんの視点が作り上げていくものです。鑑賞を超えた「参加」という体験を用意して、お待ちしています。
デザインに恋したアート♡アートに嫉妬したデザイン
概要 より
この概要を読んだだけで、なんだかわくわくします。
デザインとアート、それぞれが独立したものってわけじゃなくて、それぞれ不可分なところがあったり影響し合ったりするものなんだろうなとは、何となく思っていました。
それを「境界や“重なりしろ”を見つけていく」「時に相手に恋し、時に相手に嫉妬して、それを自らの糧として」って、なんて素敵な表現でしょうか。
いざ、大阪中之島美術館へ
徒歩圏内のホテルに泊まっていたので、歩いて向かいました。
googleマップを見ながらてくてく歩いていくと、それらしき場所に黒い建物が。ん? あれか? あれなのか?
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美術館の建物に「黒」のイメージが無かったので訝しく思いながら向かうと……
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やはり、そうでした。大阪中之島美術館。
黒なの!? と最初こそ不思議に思いましたが、慣れるとめちゃくちゃかっこよく感じます。
中に入ると大きな吹き抜け空間が。この無駄(と敢えて言わせてください)に贅沢な空間の使い方が、美術館だなーって嬉しくなります。
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(入館時は雰囲気に圧されて撮り損ねたので、これは帰りのエスカレーター(くだり)から撮りました)
ハンドアウト、だと!?
券売機でチケットを買って、4階展示室へ向かいます。
入口で「ハンドアウトです」と、紙とクリップペンシル(名前調べました。美術館とかでよく見る、ペンみたいな鉛筆みたいなやつです)を渡されました。
紙は蛇腹に折られていて小さな冊子状になっています。記載されているのは、展示物の名前や作者などなど。一般的な展覧会でもらう作品リストみたいです。
が、一般的な作品リストと異なるのが、
デザイン――――――アート
と書かれたバーが、それぞれの作品名とともに記されている点。
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作品ごとに、どれくらいデザイン寄りまたはアート寄りだと感じたかを、記録しながら鑑賞するのだそうです。面白い。
しかも、それだけではありません。
タブレット、だと!?
展示室のいたるところにタブレットが設置されていて、鑑賞者がそれぞれの作品についてどれくらいデザインまたはアートだと感じたかを、スライドして入力するようになっていました。(これの写真撮り損ねました)
来場者全体の入力内容は集計され、最後の展示室でその結果がプロジェクターで映し出されます。
つまり自分がハンドアウトに記録しタブレットに入力したデザイン度・アート度と、他の人たちが感じたデザイン度・アート度の一致や不一致を知ることが出来るのです。
(どれくらいリアルタイムで反映されていたのかはわかりませんが……)
余裕のよっちゃん
というわけで鑑賞スタートです。
最初の展示物はポスターでした。
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ポスターは迷う事なくデザインですよね。
ただ、僕のなかでポスターってアート的な要素も多く含むものだという気持ちがあるので……
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このあたりかな。
いろんな展示物があります。それぞれを味わいながら、デザインとアートに分類していきます。
ポスターはデザイン。絵画はアート。彫刻もアート。扇風機はデザイン。デザイン、アート、アート、デザイン、アート……。
はじめは順調でした。見たものが、明確に何かがわかるからです。もう余裕のよっちゃん(古い)で書き込んでいきました。
しかし……
混乱
徐々にわからないものが増えてきます。(僕の不勉強もあって。有名な作品も多く含まれてると思います。すみません)
すごく心惹かれた作品に、透明なアクリルで作られたワードローブがありました。(撮影禁止だったので、お見せ出来ないのが残念です)
41
倉俣史朗
Plastic Wardrobe
1968年 再製作:2008年
アクリル
195×95×55cm
傷ひとつないスケルトンのワードロープはとても美しく、目を引きました。
が。
これは、アートなのか?デザインなのか?
たぶん、アートでしょう。まるで実用的ではありませんから。
けどもしかしたら、実用のなかで傷が入っていくこともまた良しとされているような、プロダクトとしてのデザインなのかもしれません。
違う気がするけど、前提の知識がないと、ハッキリ違うとは言い切れないのです。
展示室には「見るからにデザイン( or アート)絶対に」なんて言えない作品が溢れていました。
たとえば、ポスター
最初の展示物みたいな、はっきりした情報が載っているものは、まごうことなくポスターです。じゃあ、これは?
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2006年 シルスクリーン,カンヴァス
160×160cm (情報は図録より)
確たる、お知らせしたい情報というのは何も載っていません。ただ、訴えてきます。
アートなのかなって思うけど、もしかしたらこういう、ハテナを抱かせるためのポスターなのかもしれません。だとしたら、デザインです。え、どっち?わからん……。
(図録を見た感じアートなのかな?)
たとえば、椅子
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1954年 再制作:1972年 成形合板
41×42×31cm (情報は図録より)
バタフライスツールは、僕でも知っている、有名な椅子です。美しくまた座り心地も良い(らしい)デザイン・オブ・デザイン的なプロダクトではないでしょうか。
草間彌生の作品も展示されていました。写真NGだったんで言葉でご説明すると……金色のジャガイモを想像してください。大小さまざまの。形も不ぞろいの。そのジャガイモ風の楕円球?をたくさん集めてくっつけて椅子の形にしている、ような作品でした。
これは座れないだろうし、座れたとしても座り心地は悪そうだし、なにより作者が草間彌生だし、完全にアートです。
じゃあ、これは?
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1969年 アクリル・スチール
82×79×68cm (情報は図録より)
座れそうな感じするけど、いや座れないのかな、傷つきそうだし、どうだろう……。
座るために作られた椅子(デザイン)なのか、観るために作られたアートなのか、見ただけではわかりません。
大混乱
一度わからなくなると、さっきまでわかったつもりでいた作品さえ、わからなくなってきます。
ポスターと思って見ていた作品も、実は記載内容はデタラメで、本当はアートだったんじゃないだろうか。
なんて疑心暗鬼です。
そんな時すがろうとするのは、「作者」と「事実」です。
作者がデザイナーだからデザイン、芸術家だからアート、事実を載せているからデザイン、空想を描いているからアート……。
逆に言うと、それらを知らないと、目の前にあるそれがデザインなのかアートなのか、もう全然わからないのです。
あったまが痛くなってきました。
デザインとアートの違いを知るために来たはずなのに、歩を進めれば進めるほど、考えれば考えるほどわからなくなるのです。
なんだこの展覧会!
大満足
結局、デザインとアートの違いは、僕にはわかりませんでした。行く前よりももっとわからなくなりました。でも、大満足です。
わからないってこと自体が、よくわかった気がしたからです。
それから、自分がいかに前情報や知識をもとにモノゴトを見ているのか、という事に気付くことが出来ました。
そうだ。「もっとわからなくなりました」って書いたけど、わからない前提で、こうかなっていう個人的な仮説みたいなのは一個浮かんできました。
デザインとアートを分けるのは、
「どういう意図で作られたか、のみ」
プロダクトを作ろうという意図のもとで作られたものはデザイン、芸術を生み出そうと思って作られたものはアート。
なのかな、って思います。いやでもわかりません。今この瞬間そう思ってるけど、たぶんこれもまた揺らいで、わからないに溶けていくんだと思います。
研ぎ澄まされた一つの問い――デザインか?アートか?――を魅力的な作品の数々と工夫を凝らした展示で与えてくれた、素敵な展覧会に感謝です。
図録がまた素敵なんです
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リングファイル仕様の図録。なかなか見ないデザインです。しかも最初にもらったハンドアウトにも実は穴があいていて、入れられるようになっていました。よき。
展覧会情報
開館1周年記念展
デザインに恋したアート♡アートに嫉妬したデザイン
2023.04.15 – 2023.06.18
会期 2023年4月15日(土) – 6月18日(日)
*月曜日(5/1を除く)休館
開場時間 10:00 – 17:00(入場は16:30まで)
会場 大阪中之島美術館 4階展示室
観覧料 一般 1600円(団体 1400円)
高大生 1000円(団体 800円)
中学生以下 無料
(大阪中之島美術館公式サイト の デザインに恋したアート♡アートに嫉妬したデザイン 展覧会情報 を参照。詳しくはそちらをご覧ください)
最後までご覧いただき誠にありがとうございました!