|Ⅳ|(20xx+1年)9月◆三渓園観月会の後で
『うーん、佳月、佳月でした!』
お月見のイベントが終わり、今は、最寄り駅からの帰途。
観月会は葵さん発案だったこともあり、葵さんの機嫌は良かった。
(ま、俺たちは最初からエスコート要員なんだけど)
『佳月って、どういう意味だよ?』
一応、藤四郎が聞く。
『良い月、名月って意味よ。小説でも佳作って言葉があるでしょ?』
もし、葵さんが素で話す言葉を本にしたら、きっと注訳だらけになるに違いない。
さて、目的も果たしたので、後は解散するだけだ。3人の住居の位置を考えると、すぐにバラバラに帰ることになる。でも、葵さんには誰かがついていった方がいいだろう。
『由利。もう、暗いから葵さんを送っていかないと』
藤四郎を見ると、意味ありげにニヤニヤ笑っている。
これは、また、どうしようもないことをいうんだろうな、と思った矢先、
『葵さん。暴漢に出くわしたら、目潰しと金的を同時に出せば、』
予想に反しない藤四郎の軽口。葵さんはニコリと笑うと、なおも続ける藤四郎に歩みより、
『そうしたら、絶対どっちかが当るから、、、ぐわっ!?』
同時に目潰しと金的をくりだした。
(うわ、金的の方が入った)
『本当ね。覚えておくわ』
そういって、一人で帰ろうとする葵さん。
『いてて、、、。いーじゃねーか!なんか、ちょっと焦らして、頼りにしてるからね!って台詞が欲しかっただけじゃねーか!待てって!』
歩みさっていこうとする葵に、股間をおさえながら、情けない歩き方で藤四郎がついていった。
まあ、藤四郎が一緒なら、大丈夫だろう。二人から離れようとしたとき、
『おい、誠志。お前も来るんだよ!』
『そうよ。由利君だけだと、逆に心配だから。』
『逆だ逆!危ないのは俺の方だろ!』
ため息をつくと、何だかくすぐったくも嬉しい気分で、藤四郎と一緒に、葵さんを送っていったのだった。
この物語はフィクションであり
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