|Ⅸ|(20xx+3)年9月 顛末
ニコロ・マキアヴェリは、ひたすら良心的に、道徳的に振舞うことで他者にそれに習わせ、追従させる方法は効果が無いからやめるべきであると著書で強く禁じている。しかし、権謀術数のみを追求する者が究極的に行きつく先は、同じく権謀術数のみを追求するもののみを、すなわち同族のみを殺すための論理なんだ。
そうなると、もうほとんど力学と同じなんだけど、そこまでくると今度はマキアヴェリが禁じた良心的に、道徳的に動く相手が、その論理/力学の
計算の範囲外になっちゃうんだよね。
これって、なんだか矛盾してない?
拳銃は空砲だった。事前に何者かによって弾がすり替えられていたようだ。
銃の異常に気づいた出雲は、何度も引き金を引いたが、銃弾が発射されることはなかった。
もちろん、俺の持っていた刃物は本物だったので、あの時躊躇なく出雲を刺していたら、非常に厄介なことになっていただろう。
この劇を仕組んだ犯人は分からなかったが、おそらく社内の誰かだと思う。
(人の集まる社会では、警察なしで一緒にいる他人とうまくやっていく能力が必要とかいうけど、その点では、俺も出雲も失格だよな)
誠志は、自らのアパートの一室で、父親を殴り飛ばしたせいで痛む拳を眺めながら、そう考えた。
確か『頭の智恵があり、そして、心の智恵がある』と言っていたのは、ディッケンズだったか。
(葵さんから、ベアトリーチェ・チェンチの尊属殺人の話を聞いていなければ、きっと俺は、出雲を刺していたんだろうな)
ちなみに、もうこの騒動の顛末は、会社の人間にも関係省庁の人間にも知れ渡ってしまった。だから、出雲はもう簡単には誠志と霞に手を出すことはできないだろう。
これで一応、一件落着、かな?
この物語はフィクションであり
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