|Ⅹ|(20xx+6)年8月◆誓いの日
“本日貸し切り”
そう張り紙された洋燈のガラス扉を開けて、藤四郎が入ってきた。
『ふー、あちい、あちい。』
入ってすぐに葵を見つけた藤四郎は、ズカズカと入ってきてカウンターの椅子にどっかりと腰かけた。
『葵さん、久しぶり!』
『久しぶり、由利君。元気そうね!』
以前より、少し落ち着いた印象になった葵は、にっこりと笑った。
『うーん。あなたの本、本当に書店で扱ってもらえているんでしょうね。ほら、最近、条例が厳しいから。』
『あー、期待通りのご指摘、ありがとうな。』
相変わらず人相の悪い藤四郎がきっちりとしたスーツを着ると、どう見てもその筋の人に見えるのだ。まあ、でも、手提げかばんから無造作に雑誌が数冊はみ出ているのを見ると、一応、約束は守ったのだろう。
カウンターに腰かけた藤四郎に、葵はコップに水を入れて出す。
二人は簡単に、近況について話をした。
やがて、約束の時刻を過ぎる。
『誠志のやつは、、、まだか。』
『ええ、でも、ちゃんと来るっていう連絡はあったわよ。』
二人が少し不安になりはじめたころ。
洋燈の扉が開く、そこには誠志と杖をついて頼りなさげに立つ霞の姿。
誠志の手には、舶来のお土産とおもわれる、大きめの手提げ袋。
『ごめん、葵さん。張り切りすぎちゃって。コーヒー、二つ追加でおねがいします!』
『ええ、大歓迎よ!』
『今日は、みんなのために、特別にカフェー・パウリスタから譲ってもらった、特別なコーヒーを用意してあるから!』
この物語はフィクションであり
実在の人物団体とは一切関係ありません
キャライラスト:たもと様(http://coconala.com/users/275422)
飾り枠:百花繚乱様(https://flowerillust.com/)
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