|Ⅶ| (20xx+3)年6月 決意
ルポライターを目指しているという藤四郎の人脈は、測り知れないものがあった。
“コミュニケーション能力と、人脈さえあれば、自分の能力なんてほとんど人の能力で埋め合わせができてしまう。”
以前に藤四郎は俺にそんな助言をしたが、その言葉の通り、霞はセキュリティーのしっかりした病院へと転院し、俺への直接的な加害行動もなくなったように見えた。
(とはいえ、安全のために、大学にも行けないし、外出もできない)
金銭的な面は、母親の遺産からまかなわれている。出雲による毒殺を受けたとき、母は遺言書を残していて、遺産の大部分が俺と霞に相続されるように手を打っていたのだ。
狙うべきは、出雲。そうしないと、藤四郎、葵さん、霞の身が危ない。
大橋出雲は海運会社の代表取締役で、新興国での運搬船の不足に伴うバルチック海運指数の上昇の波に乗って、成功を収めた人物だ。
最近は、新興国景気の低迷に伴って、業績は悪化し始めているらしく、その機運を利用して出雲のワンマンな経営に異を唱えるため、代表取締役を排除するための裏取引が役員会の中にまで浸透しているという話だ。
その一派が、出雲の息子である俺の動きを内偵しているらしいという話も聞いている。
出雲は、障害となるモノを物理的に排除することしか知らない人間だ。かつて、俺と、霞と、母さんに毒を使ったように。
この物語はフィクションであり
実在の人物団体とは一切関係ありません
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