番外編(20xx+2)年9月◆お月様と炭酸水と葵さん。
三渓園観月会。
色々なイベントが行われている中、急に葵さんが雑踏から離れた場所に誠志と藤四郎を引っ張っていった。
そこで、お月さまを三人で見上げる。
『実は、今日はこれをやるために来たの!』
葵さんが手提げのバッグから取り出したペットボトルの炭酸水のラベルをはがすと、頭上のお月様に向けて差し出した。
『何やってんだ?』
不審そうな顔で藤四郎が葵さんを眺める。
『お月様をボトルに閉じ込めたのよ。』
葵さんがボトルを少しずつ揺らしながら、のぞき方を調整すると、、、
『ほら、お月様と、流れ星!』
葵さんに促されて、誠志と藤四郎は中腰になってペットボトルを下から覗き込む。水面が揺れているので、お月様が不定形にユラユラと揺れ、その前面を炭酸がらせんを描いて立ち上っていく。
文学好きの葵さんのことだから、おそらくタルホを気取っているのだろう。
『本当はガラス瓶のを使いたかったんだけど、あれラベルが綺麗に剥がれないのよね』
照れ隠しなのか、珍しく饒舌にしゃべる葵さん。
『ほら、ガラス瓶だったらいざというとき戦えるし!』
、、、NGワード。誠志がため息をつく。
『ダメダメ、ドラマとかでよくビール瓶割って武器にしてるけど、あれシロートが実際にやると瓶の首の細くなっているところで折れて、手元に数センチしか残らないから。ちゃんと先端だけを割れるのは相当慣れてるや、、、』
ゴスッ!
ここぞとばかりに話し始めた藤四郎の脳天に、お月様と流れ星の入ったペットボトルが直撃する。
『ってえ!?炭酸水振り回してどうすんだよ!』
抗議の声を上げる藤四郎をみて、
『ええ、面白い講義ありがと。、、、ついでに蓋開けていい?』
葵さんが炭酸水のキャップに手をかけるのをみて、藤四郎が一歩後ろに下がる。
『待てよ!他の客が巻き添え食うだろ!』
盛り上がっていたムードが、結局いつも通りになる光景を、誠志はため息をつきながら見ていた。
(しかし、葵さんが自分でNGワードを踏むのは珍しいな)
『それもこれも、みんなお月様のせいなのかな、、、。』
なおも掛け合いを続ける二人をしり目に、色々な意味でほっぽりだされたお月様を眺めながら、ひとり呟く誠志だった。
この物語はフィクションであり
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