女王陛下と奴隷とレゲエと名誉白人と

 日本人には名誉白人などという不名誉な過去がありますが、実はそのメンタリィは今もかわらず続いているのかもしれません。

 かつてディズニーリゾート提供のミニ番組「夢の通り道」では大航海時代をとりあげたことがたしか5~6回ありましたが、エンディングにはいつもの決め台詞
「ここは夢の通り道です!」
と毎度、ご陽気にしめていました。
世界ではけっこう前からコロンブスを英雄視することもやめようというながれになっていたというのに、なんとも能天気な。

 今回もあちこちに出演されている多賀幹子さんとかいう方は英国王室ジャーナリストという謎の肩書をおもちで、彼女を見ていると、むかし少女漫画から得た知識のみで欧州の寄宿学校のことを喜々として語っていた姉の姿が重なり、なんとも危うさを感じてしまいます。
 メーガン妃のあの一連の騒動は彼女がやらかしてしまったという側面以外に差別を受けたという事実があると思うのですが日本人はあくまで白人側の視点で報じます。

Gackt氏がフランスで差別された話とか、日本のロリータファッションが好きでいじめられたフランスの少女とか、アニソンが好きでいじめにあったイタリア人女性とか、はたまたスイスで意味もなく突然、老人に杖で殴られた日本人留学生の体験談とかがちょいちょい紙面、画面に登場していても、それらはなぜかフィルタリングされて日本人は世界中でリスペクトされてるという結論になっています。

 自分自身が差別されてないと思うだけなら、それはそれはおめでたいので良さそうなものですが、他の被差別者を切り捨て、挙句、差別する側に立ってしまうとしたらどうでしょうか。

 ロシアのウクライナ侵攻に対する経済制裁にインドがのらなかったのは経済という側面だけではなく、そもそも西側の掲げる「正義」に懐疑的だということがあります。もっというなら経済的理由で制裁に参加しなかったのではなく、いままでが経済的理由で西側ともつきあってきたという構図だったのでしょう。

 アフリカについても同様で、中国が札びらを切ってアフリカをてなづけているような語られ方をしますが、そもそもの出発点に西欧先進国に対する信用の低さがあることを考えると、その見方は正しいとはいえません。

 ちょっと前に「ロシアは悪くない」というタイトルでウクライナ侵攻の原因に関する米国の国際政治学者ミアシャイマーの説を紹介したのですが、内容を少しだけかえた別バージョンをのせたもうひとつブログでは
「逆ばりで目立ちたいだけだろう」
とか
「さてはおまえ自閉症だな」
とかクソコメントをいただきました。
たしかに発達障害ではあるので、たいそうヘコみましたが、彼はつい最近(或いは今も?)売れまくっていたエマニュエル・トッド「第三次世界大戦はもう始まっている」は読んだでしょうか。

まぁ、読んだとて…かもしれません。
というのもトッドの本もミアシャイマーの主張を支持したカタチでほぼほぼ私の書いたものと同じベクトルなので。
 こう書くとおまへは自分の駄文とトッドを同列にするのか?とつっこまれそうですが、私のやつはミアシャイマーの文章をほぼほぼ引用して訳しただけのオリジナリティ極小ですから。
 つまり先述のクソコメントくんは構図としては、御大ミアシャイマーに反論した挙句(論は無でしたが)、私のメンタルをディスったわけすから無からクソを生むという意味ではなかなかのお方です。

 ウクライナ問題に対する日本の姿勢もどこか名誉白人的です。中学生でもわかる矛盾が満載なのだとわかりやすく本に書いてくれた方がいます。

欧米諸国がイラクやコソヴォでおこなった蛮行もその評価から本来は逃れられるようなものではありませんでした。

「中学生から知りたいウクライナのこと」小山哲・藤原辰史

こような経過の理解を抜きにプーチンの「クレイジーさ」をいくら強調しても、あまり意味がないと考えているのです。

「中学生から知りたいウクライナのこと」小山哲・藤原辰史

イラク戦争のとき、「アメリカの蛮行を認めぬ」と日本の首相やその周辺の政治家が言ったでしょうか。「イラクの難民を受け入れる」と言ったでしょうか。岸田文雄首相は今「ロシアの蛮行を認めぬ」とか「ウクライナからの難民を受け入れる」と世界に向けて表明しているのに。
 このような歴史をふまえることでようやく、私たちは、ロシアの蛮行を、欧米諸国から借りてきた人道主義者の仮面をかぶることなく、心の底から非難しはじめることができると思うのです。

「中学生から知りたいウクライナのこと」小山哲・藤原辰史

Twitterを見ていると、祖父が拷問を受けたとか、アフリカの植民地の記憶はまだまだ新しいのです。この対立構造はあのジェフ・ベゾスもまきこみました。
どうやらベゾスはracist側のようです。まぁ劣悪な労働環境がしばしば指摘される巨大企業の海外の製造拠点はある意味、現代の植民地といえますから、当然の帰結ということでしょうか。
 搾取の構造でいえば日本の技能実習生問題もある意味、植民地主義的ではないでしょうか。なので日本人も少しはこの議論に興味をもつべきです。

この議論はすでに女王のプラチナジュビリーの時点で燃え上がっていました。

ケンブリッジ公爵夫妻が女王のプラチナジュビリーのためにカリブ海ツアーをしたことは、王室の植民地主義と奴隷制とのつながりという側面から批判されています。
ジャマイカの著名人による公開書簡には、「あなたの祖母が英国王位に就いてから70年を祝う理由は見当たらない、なぜなら彼女のリーダーシップと彼女の前任者たちのリーダーシップは、人類史上最大の人権の悲劇を永続させてきたのだから」。

the Conversation.com

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