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センモンカの正体

ルフトハンザ傘下のLLCが墜落事故を起こした時、ある評論家は午前中の情報番組の中で「LLCのコストカットのつけが出た結果」とコメントし、午後の番組では別の航空評論家が「ルフトハンザと同じ整備工場を使っているから点検面での不備はない」とコメントしていた。
 ここでいえるのは両者とも当該の事故について実際に取材したわけでもないのに堂々と語っているということ。テレビのコメンテイターというのは「尺を埋める」ことがすべてらしい。
 たまに「この段階で言えることはひとつもない」という真摯な姿勢の専門家もいるが、多くは、特にレギュラー出演するようなコメンテイターは判断材料が少ない段階でも堂々と、時には視聴者というシロウト相手にマウント取るかのような上から目線で語りたおす。
 材料が少ない段階なのに語るといえば週刊新潮で コラムを連載している医師の里見清一氏は芸能人の病気に関して実際に診察したわけでもない医者がコメントすべきでないし、情報が揃っていたとしても、それならなおさら語るべきではないと批判していたがごもっともだと思う。
 中居正広氏の一件では元刑事とかいう人物がある事件の捜査の時に中居氏の名前がよく出ていたなどとSNSで発信していたというがこんな漏えいは人としてアウトだろう。

 元刑事といえば佐々木成三という方はアメリカで鹿がパトカーに侵入して書類をムシャムシャ食べてしまってたという事件の映像を見て、「これが日本なら悠長に動画撮影などしていない」などと言っていたが、この方はどうやらボティカメラというのをご存じなかったらしい。クイズ王の伊沢拓至氏が一般的なお皿が電子レンジで使えるということを知らなかったようにわが国には一般常識レベルの知識が欠落したセンモンカは意外と多い。

藤井靖という臨床心理士は伊勢谷友介が講演で話した
「もし宇宙人が人類を見たら」というくだりをあげつらって
「ナチュラリストは人知を超えた存在に逃げがち」
なととつっこんでいたが、これはそんなことではなく環境破壊という問題について単に俯瞰視点、第三者目線から見たら、という単なる喩えバナシだ。
 もうひとついえばこの人はコメントを聴いている限りでは犯罪心理学は専門ではなさそうだが犯罪案件でよくしゃしゃり出てくる。犯罪者の心理を語るには犯罪そのものについてや具体的な事例についての知識も必要なはずだが、それらに関してはなさそうだ。あきらかな専門家である出口保行氏のコメントと比較すると明確に差がみてとれる。

一番の問題は心理ケアにもかかわる専門家が国語力不足ということだろう。

 国語力不足といえば芸能界には、というか、主に芸人界には地アタマの良さがあれば知識不足カバーできると本気で信じているひとが少なからずいるようで渦中の人、松本人志はその代表で彼は政治問題などを扱う「ワイドナショー」の収録に際し一切、予習をしていなかった。
2020年11月8日の「ワイドナショー」ではトランプは4年間やって半分近いひとにノーといわれているのは負けだとドヤ顔でいっていた。アメリカは2大政党制なのだから分断の激しさの度合いこそあれ、常に半分前後の敵と味方がいるのは日常だ。
 三浦瑠麗氏はそこを指摘するのはさすがにたカッコがつかないと配慮したのか、もし松本氏がアメリカにいたらバリバリの共和党支持者になるだろうと別の方向からつっこんでいた。
 地アタマ問題といえばやはり2019年12月8日の「ワイドナショー」でOECDの学力調査で日本人の読解力が低下しているという問題があつかった時にためしにと出された読解力テストで松本氏はみごとに撃沈していた。読解力テストなんてそれこそ予習ゼロで臨める地アタマの良さを示す格好の機会だったのに。あげくのはてに読解力とはこういうことではないとコトバの定義にケチをつける始末。
 私は決して松本信者ではないが、ペケポン川柳で芸人が一流コピーライターや落語家を打ち負かす雄姿を見るにつけ、かつて運動神経にすぐれた子供たちがみな野球選手をめざしたように、今どきは地アタマのいい子どもたちはみな(落語以外の)お笑いを目指すのだなと信じて疑わなかったので、その失態はまあまあショックな出来事だった。

 コメンテイターウォッチに話を戻すと先述の元刑事の佐々木氏、某野球関係者の失踪騒ぎのときに情報番組で出演者が「警察は動かないんですか?」と尋ねると。「警察が動かなかっということはだいじょうぶということです」という謎の返しをしていた。
 以前、小泉首相が自衛隊は戦闘地域には派遣できないはずだと質されると「自衛隊がいる場所、これ即ち非戦闘地域なのだ」と発言していた答弁を思い出した。ストーカー殺人など警察が動かなかったためにおきた悲劇はたしかに存在していたのだからその理屈氏通用しない。古巣にたいして批判的な目を向けられないコメンテイターはダメだと思う。批判しちゃうとその後の取材がしずらくというのを理由にするとしたらその人はただの古巣の広報屋だ。
 やめ検弁護士の若狭勝氏は検察の不当な見込み聴取が問題視された時に「私の周りではきいたことない」などとしらばっくれていたので彼もまた“そっち側の人”かと失望したが最近のコメントは聞くに値するものが多い。橋下徹氏のまちがって法解釈をわかりやすく正してくれる。あるいは橋本氏はシロウト相手にマウントをとるために故意にやっているのかもしれないが。
中でも和歌山毒物カレー事件の死刑囚の息子がツイッターをはじめたことに際しては
「検察は一度調べなおしたほうがいいと」
と発言したのはなかなかのものだと思った。
 薬物とか法律などの各分野の識者の間ではこの事件について冤罪、少なくとも有罪にする要件を満たしていないのではないかという疑義が呈されていたが、テレビに出ている人が番組の中で発言したのを見たのは初めてだった。
 逆に紀州のドンファン事件の裁判で被告を有罪にできなかったのが大失態であるがごとく専門化を含むコメンテイターたちがこぞつて発言していた様には恐怖さえおぼえた。

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