キャットボーカロイド(SS小説)
わたしのお父さんはいつも美味しいタレを持ってる。
しかし、ちょっとしかくれない。いじわるめ。
甘く鳴いて強請っても、ちょっとの量しか増えないのだ。
ちっ。
もっとたくさん食べたいなぁ。
――ニャーン。
「明日も出すから、今日はもうあげられないんだピノ~。チュールの食べ過ぎは体に毒なんだよぉ。わかってほしいな~」
あごの下を撫でられる。
――ゴロゴロ、ゴロゴロ。
鳴いてると、お父さんが何か出した。
白くて平べったい。
なぁにそれ。
――ニャーン。
「どうしたのかなぁ。あ~、これが気になる? これはね、ボイレコっていうんだよ~」
――ニャーン。
「ピノの声を録って、曲を作ろうと思ってね~。今流行ってるんだ~自作キャットボカロ~。これでピノのかわいさを世界中に発信できるんだよ~」
ボカロ。聞いたことあるぞ。機会だけど人間みたいに喋るあれだな。
キャットボカロの方はたしか、合成した猫の声だけで歌ったり実況したりしてたあれだな。見たぞ。
機械の声なのに、結構ちゃんとした猫語の文になっててビックリした覚えがあるぞ。
お父さんがパソコンでキャットボカロ動画を見てたとき、机に乗って邪魔したっけなぁ。
あれは、作るのに素材とかいるんだっけか。
なるほど。それでわたしの声を録ってるのかぁ。
なるほど。
なら録る前に、先にわたしの許可を取らぬか!
前足で蹴った。
――シャー。
「おえっ。だめなのか? チュールあげるよ~」
なんだって!
それならいいぞ。
ゆるす。
――ゴロゴロ。
「やった~。ピノありがと~!」
――ニャーン。
ピノは二つ目のチュールを舐めた。