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あり方を変える時。たまには仕事の話を。

最近はつぶやきの投稿ばかりで記事らしい記事を書いてこなかったnote。

たまには、生業のこと、何を目指してこの仕事をしているのかなど、綴ってみます。

西陣織、一反の布は職人の手仕事の集大成。


以前から投稿をフォローいただいている皆様には重複する情報かと思いますが、私自身は京都市在住で京都の地場産業でもある『西陣織』の仕事を生業としています。

西陣織の仕事は分業化が進んでいて、機織りをする職人さんだけでなく、各工程にたくさんの職人さんがいらしていて、幾多もの職人技が合わさって成り立っている業界です。

西陣織の産業は、主に着物やネクタイ、お土産もの、バッグや名刺入れなどの和装小物、そしてインテリアやバスなどの内装などに進出しています。

けれど、これまで一番業界を支えて来たのは、帯や着物などの和装の分野だど言えます。

そして、私たちが取り扱うのも"帯"が主軸で、友禅作家さんや着物メーカーさんの御用聞きというか、OEMでデザインをつくり帯を織り、検品加工して卸すまでの仕事を家内制手工業でおこなっております。

その中で私自身が従事しているのは、
デザイン画と織物の構造を考えて、「紋図」と呼ばれる織物の設計図のような版画の版のようなものをつくり、糸を選んで機を動かす職人さんに指示を出して思うような織物ができるように微調整をしたりする仕事です。

機場は京都府の海側の丹後にあり、made_in_kyotoの絹織物を職人さんとの密なやりとりのなかで作っています。

建築の分野で言うと、現場監督のような仕事と言えるかもしれません。

高齢の父に変わって仕事を引き継げるようにと、目下修行中の身なのですが、父の代とは時代も需要も取引先さんとの関係も全く違います。

今後も西陣織の機場を動かしていくために、私たち自身の仕事のあり方もまた変わらざるを得ないし、意識的に変えようとしているところです。


伝統をつ受け継ぎ、「変える」ものとは

一言で「変える」と言っても、実はその変わり方そのものを模索していると言っても過言ではありません。

時代に合わせてニーズも変わるし、デザインも変わるし、業態そのものもまた、変わっていくことを必然とされている気がします。

その中でも、一番大きく変えなくてはいけないのは、やはり"売り方"であり、流通のあり方そのものであると、この仕事に携わる中で痛感している昨今です。

2020年に流行した感染症の影響で、着物業界は受注が伸び悩み、淘汰されたところも少なくありません。

着物を来ていく場所自体がなくなり、着物を販売していた催事なども開催がなくなり、これまで勢いを保っていた売り場も規模を縮小せざる得なくなりました。


突然ですが、皆さん、「着物」というワードを聞いた時に、どのようなイメージを連想されるでしょうか。

きっとどこかで、「高い」、「堅苦しい」、「高級品」などとイメージと結びついていらっしゃる方も多いと思います。

もちろん、手の込んだ職人による手仕事の集大成で作られる着物なので、ある程度の値が張るのは仕方ないのですが、
実はこの値段に関しては、これまでの流通のあり方自体に構造的な問題を孕んでいたために、本当に着物を来たい人の手に届きにくいものとなってしまった側面があることは否めません。

私たちが作って卸した帯なども、卸値×数十倍の値がついて、店頭に出され、そこから値引きを表示した価格で取引されるという、とても不透明な値段の付け方をされています。

お値段が高くなる流通の一つとして、
小売店さんへ納品されるまでにたくさんの問屋さんを経由する業界の仕組みそのものが、もはや今ではネックの1つとなっているのが皮肉なものです。

私たちの機場では、この業界では珍しく、お給料制で反物を織っていただいていますが、未だに一越:○○銭というお給料計算で、出来高制で機を動かしている職人さんはたくさんいらっしゃいます。

店頭に並ぶ着物のお値段は高いのに、私たち含めて職人さんに入る工賃は本当にお安い業界です。

なので、若い職人たちがこの仕事に魅力やチャンスを感じられるはずもありません。

どこでも同じですが、各工程を担う職人さんがどんどん居なくなっており、今日できていたことでも、明日出来なくなってもおかしくない所まできています。

職人さんや私たちつくり手の生活を守り、お客様の声をちゃんと活かしながらものづくりし、本当に欲しいお客様の手に直接とどけられる場所をつくりたい。

そんな思いから、直接私たちの仕事を見てもらえる場所としてアトリエをつくりました。

まだ、本格的には稼働していませんが、わたしたちのものづくりの発信基地にしていきたいと思っています。

ほんの少しづつしか進められていないのですが、売り方や流通のあり方そのものを変え、
お客様のニーズを掘り起こし、ものづくりに直結させていくために、今、私たちの業態そのものを変える必要に迫られています。


個性を打ち出し、思いをこめたものづくりと
直接お客様へ手わたせる喜び


和工房明月という名をつけて姉と二人、自分達発信のものづくりをおこない、かなり個性的な帯や、素材の面白さそのものを生かした織小物をつくり、西陣織の面白さや素材感を楽しんで頂くためにここ数年は活動して来ました。

自分たちの作ったものを仲介業者さんを通すことなく、直接お客様へ手渡していける販売のあり方を理想として、
デパートやネットショップなどで少しづつ活動をひろげようとしていたところでした。

そんな中で、兼ねてからの一番のお得意様であった、室華風という京友禅ブランドを主催されている津室社長からお声かけいただいた、
小室庵という染工場直送の着物アンテナショップでの販売のお仕事。

↓↓↓こちらご参考までに。



自社ブランドの染の着物と帯が、京都市内にある工場で染められ、新作もそのまま店頭に並ぶのです。

↓↓↓こちらインスタアカウント。

https://instagram.com/komuro_an_kimono?igshid=YmMyMTA2M2Y=

個性際立つ美しい作品の数々ですが、他に仲介業者さんを通さず工場直送なので、お値段は他でお求めいただくより随分とお値打ちのある金額設定になっています。

ここにしかないオリジナルのコーディネートを一式揃えられて、しかも、お値打ちなので、私も店頭で自信を持っておすすめさせていただけるのがありがたいです。

もちろん、私たちがオリジナルで作った帯も置かせて頂きながら。

よく、お着物業界のことをご存知のお客様には、お値段を見て本当に驚かれます。
作家モノの着物のお値段にしたら、破格のものだからです。
それは、直営店だから実現できるあり方でもあります。

そして、当然ですが一方で、このようなあり方を快く思わない業界の方も沢山おられます。

けれど、この先の業界の未来を見据えた時に、
いま私たちがあり方を変えていく以外に、先へと繋がる道筋をみいだすことは難しいのが現状です。

喜びをもってものづくりし、
喜びをもって手渡していけるあり方。

職人も、私達も、小売店も、お客様も、
それぞれに喜びを持ち、喜びの中で進化していけるあり方。

私たちようなあり方の変化は小さなものでしょうが、おそらくこの先、業界全体が変わっていく潮流となれるように。

大きな願いを持ち、伝統を繋いでいけるよう、小さくとも変化を続けていきたいと思っています。





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千果 | A Butterfly Way
フランスからスペインに抜けて進む、サンティアゴ・デ・コンポステーラへの巡礼旅へ出たいと思っています。いただいたサポートは旅の資金にします! 応援おねがいします。