〇△■の帯。
前回の投稿で、テスト織りができたというところまで、ご紹介させていただいておりました、〇△■の柄の帯です。
ようやく、織りあがってまいりました。
長い間温めていた図案で、なかなか形になるまで時間がかかってしまいましたが、これまで手掛けたものとは、また少し違った角度から見て、奥行きのある表現方法を見つけた形で織りあがったように思います。
前回の記事はこちらから ↓
前回の記事を参考にしていただければよくわかるかと思うのですが、墨汁で作った濃淡と、クレヨンで作ったカスレ具合とを織物で表現するということにこだわりました。
↓ こちらは、帯のお太鼓部分の丸。
太陽の光と雲との微妙なグラデーションを喚起させるようなテクスチャを織物で作りたいと思い、紋意匠図をコチコチ描きました。
そして、こちら ↓ はタレの四角部分。
タレとは、お太鼓の下15センチほどにつくるその名の通り、お太鼓の下から垂れた部分です。
そして、こちら ↓ 腹の柄は三角形。
右半分と、左半分のどちらも締めてもらえるように三角を配置しました。
写真だと、どうしても光を反射させてしまうので、実物よりわかりづらいかと思えますが、こんな感じです。
実物は、写真の1.5倍くらいは素敵に織りあがっています(自画自賛w)。
経糸を黒にすると、鮮やかな色が映えてくるように思えます。
シックな無地感覚のおキモノに合いそうな帯になりました。
そして、もう一方、白の経糸の場合は、こんな具合です。
↓ お太鼓部分の丸。
↓ タレ部分の四角。
↓ 腹部分の三角。
〇△■図形内の濃淡やグラデーションを作るのに使用した糸は、黒・グレー・ピーコックブルー・金茶・ベージュの5種類の色糸(シルク)たち。
紋図の描き方や、その他諸々の織りの工夫を用いることで、黒からグレーへの濃淡を作ったり、色の混ざり具合を作ったりしています。
これらのような、少し手の込んだ、紋意匠図を作る作業をしていていつも思うのは、「版画の版木を掘っているような気分」になるということです。
とは言うものの、版画は小学生の美術の授業でやって以来は、その後、ほとんど経験していませんが。
紋意匠図を描くときに、
「この線には黄色の色糸を入れよう」
「この線には青の色糸を入れよう」
などと完成図をイメージしながら、それぞれに彩るべき緯糸(よこいと)を入れる部分に一本一本、丁寧に線を描いていきます。
その作業が、彫刻刀で版木を掘る作業に少し似ている気がするのです。
小さなころから、大好きだった版画家の棟方志功さん。
(宗像志功さんの作品については、こちらをご参照ください。↓↓↓ )
https://bijutsutecho.com/exhibitions/4000
宗像志功さんは、晩年にはほとんど目は見えていなかったにも関わらず、意欲的に創作活動をされたと聞きます。
如来像や羅漢像などをよく描かれているのですが、彩の美しさや、瑞々しく、力強い作風に惹かれます。
小さなころに作品を見に行った記憶があるのですが、今でも心の中にその作品の瑞々しさが残っているように思えます。
もちろん、当たり前のことなのですが、版画と織物とは、まったく違うものです。
けれど、「紋」という一つの絵型に対して、どのような糸を配色するかによって、その織物のテクスチャがその都度変化するということ、
版(紋)がひとつあれば、無限に彩の錦を織りなせるということ。
そんなところに版画との共通点を見出してしまいます。
話を戻しますと、〇△■の新柄の帯、図案が出来てから随分と時間は経ってしまいましたが、納得のいく形で織りあがってきたことが嬉しくて仕方ありません。
いままで、どこでも見たことのない作風の帯になりました。
しかも、シックな黒のキモノにも、さわやかな白のキモノにも、モダンなグレーのキモノにもきっとよく合う帯が出来たように思います。
森羅万象のすべての基本の形を司る、〇△■の図形たち。
次はどんなテクスチャで織りなすのか、チャレンジは続きます。
フランスからスペインに抜けて進む、サンティアゴ・デ・コンポステーラへの巡礼旅へいつか出たいと思っています。いただいたサポートは旅の足しにさせていただきます。何か響くものがありましたらサポートお願いします♪