諏訪でデザインプロデュースを学んだ話
朝4時に起きて、鈍行列車で長野県諏訪市に向かったわたし。
今回の旅の目的は、
”ふるさとデザインアカデミーichi”というプログラムへの参加。
この参加が、私の背中を押してくれるきっかけになったので、その想いをつらつらと書こうと思います。
①プログラムに参加した目的
きっかけは、
”ふるさとデザインアカデミーichi”を友人に紹介され、この文章を読んだのがはじまりです。
◉ふるさとデザインアカデミーの目的
デザインと経営の両面から地域課題を解決する「デザインプロデュースができる人材」を実践型研修および各地域での自走サポートにより育成し、地域の事業者によるデザイン経営や効果的なデザイン活用を促すことで、地域経済の活性化や地域課題の解決につなげる
※デザインプロデュースとは
企業の新商品・サービス開発、新市場開拓やブランディングにおいてデザイン経営実践プロジェクトを立ち上げ、成果に繋げていくこと
この内容に、個人的にビビッときました。
「デザインプロデュース」ができる人材になりたくても、普段の仕事じゃその肩書きは得られない。だからそういう経験をどこかで積みたい…できれば地域が絡むような役回りで…と思っていた私は、気分がアガりました。
「地域で活きる(生きる)」仕事をするために、自分にいま何ができ、何ができないのか。そしてどんな知識が必要なのかを知りたい。
それが、参加した理由と目的です。
ーわたしが地域にこだわる理由
すこしだけ本質から離れちゃうけど、私の想いをつらつら。
学生の頃から、myJapanという団体で「日本の魅力を映像で発信する」活動をずっと続けていたこともあり、私は地域での活動の楽しさを知っていた。
楽しさだけじゃなく、苦しさや厳しさも、なんとなくだけど知っていた。
そもそも自分が仙台から上京してきた理由も、仙台を見つめ直したいという想いがあったからです。
高校生の頃、「ホスピタリティ」という言葉が流行りました。
それと同時に、先生から「マーケティング」という言葉を教えてもらいました。
人を思いやる気持ちから生まれる「ホスピタリティ」と、モノを売るための「マーケティング」を上手に組み合わせることができたら、なんだか日本はもっと楽しくなりそう、と漠然と感じていた私は進路を考えました。
そんなときに出会った「デザイン」という言葉。
その中でも、人に密着しながらその場の課題解決をする「地域デザイン」という考え方に惹かれ、私は公立大学を推薦で受験。
だけど。
勉強もそんなに頑張らなかった私が、この想いだけで公立に入るのは難しく、面接であっけなく落ちました。
そして。
滑り止め私立大学を決めたり猛勉強するよりも、自分が面接で落ちた理由を考えました。
「仙台という街をそもそも知らないのかも」
「なのに地域デザインをしたいなんて上っ面だ」
そう感じました。
課題が明確でもないのに、”面白くしたい”という想いだけを伝えていたら、そりゃ空っぽに聞こえちゃう。
そうだ、私は自分の住んでいる街を知らない。
「だったら外から自分の街を眺めてみよう」
「うん、そうだ、東京に行こう」
そう思って、いままで一切考えていなかった東京私大への受験を決め、一般試験に向けて猛勉強。それが高3の2月で、もうギリギリ!
実際に上京してからは、地域と関わるフィールドワーク授業を受けたり、伝える手段になりそうなPR/広報の資格試験を受けたり、前述したmyJapanに所属したり、とにかくいっぱい行動。
そしてふと仙台に目を向けると、いろんな課題が見えました👀
住んでいた頃には見えなかったいろんな課題が見えると同時に、他の地域では似ている課題に対して様々なアプローチをしていることも知りました。
他地域でやっているアプローチを、仙台やその場の地域性を活かしてやるにはどうすれば良いのだろう、なんて考える日々。
外から見える課題に対して、自分も中に入り込んで解決できるような、場のデザインができる人間になりたい。
できればそれが、人が活きる(生きる)場=地域でやりたい。
それが私が、地域にこだわる理由です。
ーなぜ、諏訪市を選んだのか?
さて、話はプログラムの内容に戻ります。
このプログラム自体、
北は北海道・南は沖縄まで全国20箇所で展開。
(ロフトワークの皆様、おつかれさまです👏)
会社員なので、平日続けて2日もお休みをもらうのは心苦しく、休日が被っていた長野県諏訪市を選択。
なにより長野はおいしいものが多いし、リモートワーカーにも人気だし、諏訪の良さは同僚にも薦められていたので、純粋に行きたいなって。
その時の決断をした自分を褒めたい。
諏訪は本当にいい場所でした。
②プログラムの内容、その様子
プログラムの構成はこんな感じです👀
◉基礎講習2days(8月16-17日)
各デザインに関する考え方、知的財産権・デザイン契約、その他必要なスキル等、デザインプロデュースに関する基礎知識を身に着ける。
⑴ デザインプロデュース基礎
⑵ 知的財産権 デザイン契約の基礎
⑶ プレゼンテーション、プロジェクト管理、コーチングスキルなど
◉ワークショップ2days(8月30-31日)
実際の事業者をモデルにリサーチ、プランニング、プロデュースを実践し、デザインプロデュースの考え方やプロセスを体験。
⑴ リサーチ
⑵ プランニング
⑶ 地域モデル企業への提案
⑷ 提案書のブラッシュアップ
⑸ 地域モデル企業への再提案
⑹ 振り返り
⑺ セルフ・プロデュース企画の作成
各構成の中で、個人的に学びが大きかったものをこれから簡単に紹介したいとおもいます。
ーアイスブレイク
諏訪会場の参加者は、長野県の各市役職員や地域おこし協力隊、諏訪市の事業者、個人経営者、デザイナー、東京で働く人など様々。
(年齢層は30代以上が多かったイメージ)
ワークを一緒にやる前にみんなで参加した想いを共有したり、顔を見ないで絵を描きながら好きな場所を聞き出したり。ちょっと難しかったけど、どのアイスブレイクも楽しむだけではなく、ちゃんと狙いがあることを知って奥深いなと感じました。
※上の絵はわたしを見て描いてくれた似顔絵、特徴捉えている(笑)
最終的にいい繋がりも生まれていてよかった◎
ー基礎講習2days(8月16-17日)
「基礎講習」に関しては以下3つを意識した2日間。
◉「デザインプロデュース」をするうえでの3つの心構え
①出口(顧客)から考える
②現場・現地でリサーチを重ねる
③多様な利害関係者を巻き込む
普段のお仕事でも、お客さまファーストで考えてカスタマージャーニを作成するUX体験を設計する仕事をしているので、各内容の詳細は割愛。
その中でも、やっぱり重要なプロセスだな、と印象に残ったものをご紹介します。
●顧客体験設計
「何の課題を、どんな解決手法で解決する?」
を考えるために、カスタマージャーニを書く作業。
誰が・どんなタイミングで・何の課題を抱えているのか、課題特定に最も必要なプロセス。
解いたことのない課題について、想像を張り巡らせながら、初めましての人たちと考えるのは、思いがけないアイデアが出てきたおもしろい!
▼弊社でカスタマージャーニのセミナーを開催しているGoodpatchさんの記事
●共感を呼ぶストーリーテリング
◉ストーリーテリングとは
伝えたい思いやコンセプトを、それを想起させる印象的な体験談やエピソードなどの”物語”を引用することによって、聞き手に強く印象づける手法
素敵なブランドや成長している会社でも、その魅力を分かってもらう伝え方って、簡単そうに見えて結構むずかしい。
ブランドの誕生や想い、そのブランドを育む地域性を伝え、共感してもらい、感情を呼び起こして実際に行動してもらうにはどうしたらいいのか考えることが必要だと、再認識。
●知的財産権・著作権
知的財産権や著作権など「法律」って勉強してもしなくても何のことやら。
「チンプンカンプンです」なんて、そんなこと言ってちゃデザインプロデュースをする身としてダメなんだということを学びました。
いざ自分で勉強すると気が遠くなりそうだけど、こういうセミナーに参加して自分では勉強しにくい部分の知識を補うのは大事ですね。
●ファシリテーション(場のデザイン)
「場のデザインもデザインプロデュースの一環です」
おっしゃる通り、議論の方向性を正したり引っ張ったり、各自そこでの役割を存分に発揮できるような環境づくりもデザインの役割。
これが自然とできるような人になりたい🍋
ーワークショップ2days(8月30-31日)
フィールドワークから課題解決までをチームでやる2日間。
今回は、「SUWAプレミアム」という、
高品質なものづくりに誇りを持つ、長野県諏訪地域生まれの商品で構成されたアンテナショップのデザインプロデュースが課題対象。
諏訪は昔から第一産業が盛んで、素晴らしい技術をもつ製作所がたくさん。
様々な想いを持った技術者もいるし、性質は抜群によいのです。
●まずは課題を見つける
実際にショップへ行き、現場・現地でフィールドワーク。
(初観を遠慮なく書きました、ごめんなさい)
課題はちゃんと見つめれば見えてきました。
こだわっているのに、その「価値が体感しづらい」。
そのあと、「SUWAプレミアム」で取り扱いのある万年筆『Laurett's』を作る「丸安精機製作所」行き、実際に技術者さんに話を聞きました。
技術のこだわりはもちろん、この万年筆を作ろうとおもった経緯、工場の中でジャズが流れている理由、可愛いエプロンをつける理由など。
「製作所って堅いイメージだけど、面白そうって思ってほしい」
何気ない会話の中で、ポロっとこぼした言葉から、技術者さんの想いを見つけることが出来ました。
こういう想い、ストーリーこそ伝えていかないといけない‥。
はっっ。これこそ、ストーリーテリングだ!!
技術者には「ストーリーに共感した人に買ってもらいたい」という想いがあって、顧客には「ストーリーに共感したら買いたい」という想いがある。
これが最終的に課題解決のアイデアの題材になりました。
●課題を定義し、アイデアを考える
チームで課題はなにかを書き出した。
そしていっぱいアイデアが出ました。
想いがある技術者さんに触れたことで、みんな課題がたくさん見えました。
●実際にアイデアを形にするためのデザインプロデュースをする
財務、市場調査、競合との優位性、マーケットサイズ、ロードマップ、ステークホルダー、そしていまその事業をやる理由。
それらを設計していたら、「本当にこの事業みんなでやりたいね」という気持ちに。自分たちが可能性を感じられるまで考え込むことができたのは、課題を正確に捉え、各人がいいアイデアを出したからに違いないです。
●ストーリー仕立てのプレゼンテーション
実際に事業者にアイデアを採択してもらうために、どうしたら伝わりやすいか?を考える。これも「場のデザイン」。
プレゼンテーションが得意なチームメンバーにお任せした。
…最高でした。
聞き手が分かりやすい、聞いていて楽しくなるようなストーリー仕立てのプレゼンテーション。伝える要点はしっかり伝える。
本当に素晴らしいスキルだと感動しました✨
●WSの振り返り
GOOD
・各人の強みを生かし弱みを補う役割分担ができたこと
・なんでやるのか見失わずにアイデアを形にできたこと
・フィールドワークを通して自分が顧客の視点に立ち課題特定できたこと
・技術者の想いをヒアリングして引き出したこと
BAD
・財務知識が乏しくフォローできなかったこと
・プレゼンのフォローができなかったこと
③プログラムに参加した感想
参加して本当によかった。自分に自信がついた。
そして地域を見つめるいい機会になりました。
モノが溢れる時代だからこそ、
人が本当に求めている(もしかしたら自分では気が付いていないかもしれない)本質を捉えて、他とは違う価値を提供できるモノ・サービスづくりをしていかなければならない。
だからこそ、
起きている課題に対して本質を捉え、デザインというアプローチで解決する考え方や手段がたくさんある。
そして、
その手段のひとつとして、価値やストーリーに共感してもらうサービスや伝え方は、確実にこれからどんどん流行ってくはず。
ちょっと高くてもこだわりある食品を販売する会社のUX担当として、共感できる伝え方やモノの売り方に関しては、どこの誰よりもピカイチで在りたい。
そして近い将来、身に着けた考え方や手法を活かして、だいすきな地域の課題を解決できる人間になりたい。
そんなことまで感じました。
●さいごに
今回のプログラム、基礎ワークショップ編は8月で終了。
だけどその後約半年間、地域の事業者とタッグを組んで、実際に事業課題をデザインプロデュースする機会が与えられています。
実際に諏訪市の事業者さんといっしょに個人として取り組みができるという、夢のようなチャンスもまだあるので、今後も頑張っていきたいです。
このプログラムを通して出会った、
諏訪会場参加者のみなさま。
SUWAプレミアム関係者のみなさま。
そして、ロフトワークのみなさま。
諏訪にひとりで来てドキドキしていましたが、温かく迎えて頂き、本気で議論もして頂き、本当にありがとうございました!
また一緒になにか出来る機会をたのしみにしています。
諏訪がすきになっちゃいました!
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このプログラムに参加しながら、実は諏訪を堪能していました。
その内容を書きましたので、よければこちらもご覧ください👀