連載 #夢で見た中二物語 38
これは、とある小学校の体育館に住み着いた一人の妖精が主人公の夢物語。
彼は昔、この学校の生徒だった。
元々病弱で生まれつき身体の弱い少年だったが、人一倍好奇心旺盛で外で友達と遊ぶことが大好きだった。
大人達に止められても構わず遊びまわり、誰かがイジメられていたりするとすぐさま駆けつけて助け出すような子供だった。
しかしある日を境に歩く事が出来なくなり、それからというもの寝て過ごす日々が続いた。
最期の最後までもう一度学校に行きたいと願っていたが、その思いもむなしく少年は亡くなってしまった。
☆
少年が亡くなってからしばらくして、その小学校の体育館の倉庫に幽霊が出るという話が広まった。
その第一目撃者は亡くなった少年と一番親しかった少年で、見間違いではなく確かに彼だったと言い張った。
教師達は初め信じなかったが、それ以来目撃者が相次ぎ体育館の倉庫の封鎖が検討された。
しかし例の少年と親しかった生徒達がそれに反対し、彼らは体育館で怪我や事故などが起こりそうになった時に確かに彼が助けてくれたのだと言う。
しかもそれは事実のようで、その後教師たちもそれらの事象を幾度もなく目撃することとなった。
教師の中には多くの生徒たちと同じように少年の姿を見たものもいて、子供たちを疑った自分を恥じた。
それから少年は不吉な幽霊としてではなく、正義感あふれる陽気な妖精のような存在として扱われることとなった。
☆
それから数十年後、小学生だった子供たちが大人になり世代交代が繰り返された。
例の少年のことを知る者も少なくなってきた頃、何かしらのキッカケで霊界から悪意ある幽霊たちが例の学校の周辺に現れ始めた。
その頃には異動が繰り返され何も知らない教師たちは、過去のことをいろいろ調べていく内に、やはり例の少年が悪霊だったのではないかと疑い始めた。
その話を聞いてしまい悲しんだ霊の少年だったが、その事で心を決める。
もしこの世から完全に消え去るとしても、最期の最後に例の悪霊たちと戦って彼らを追い払うおうと。
☆
悪霊たちの力は強烈だったが、霊の少年は最後の力を振り絞り彼らを完全に霊界へと追い払い悪霊たちが出てきたらしき穴を塞いだ。
その際に体育館の倉庫では、傍目から見ると原因不明の爆風が起こり扉が壊れてしまう。
少年は本来離れることの出来ないはずの体育館の倉庫から出て、美しい青空のもとに出ていずこかへと去っていこうとする。
その時、少年の背後から声をかける者がいた。
驚いた少年が振り返ると、少年が生きていた頃に担任だった教師の老成した姿があった。
☆
「ハルキ!」
「え・・・渡辺先生!?
先生、随分前に転勤したはずでしょう;?」
「君は知らなかったか
今年、教頭として戻ってきたんだ」
そう言って一旦言葉を切ると、渡辺先生は続けて言った。
「・・・君はその姿になってから、ずっとこの学校を見てきたんだな・・・
・・・私よりも、ずっと長く・・・
この学校のことを私よりも知っているんだろう、さっき何があったのか教えてくれないか?」
「・・・でも先生、僕を疑っているのでは・・・?
・・・聞いちゃったんです、他の先生達が悪さをしてるのが僕なんじゃないかって・・・」
悲しげにそう話すハルキの言葉を聞いて渡辺先生はしばらく黙っていたが、不意に笑い出して言った。
「私も、自分の生徒を守れないとは情けない教師だな
あの頃の君とあまり長い付き合いが出来なくて残念だったが、今の新人の先生達よりは君のことを分かっているつもりさ
その姿のまま、君も大人になってしまったのだな
物言いが妙に大人っぽいし、何よりも悪霊すら追い払ってしまうその強い心が成長の証か」
「どうして、僕が悪霊たちを追い払ったことを知ってるんですか?
・・・追い払う時、扉まで壊してしまいましたけど・・・」
「・・・君が子供の姿のままで大人になったように、私は大人の姿でいて子供のままなのかもしれないな・・・
他の人に見えないものが見える、それが幸か不幸かは分からないが役立つこともある
君はずっと優しい子だった、どんな理由があろうとも他を傷つけることを良しとしなかった
その事だけで十分さ、人は変わっていくものでもあるけどね
君はもう十分戦ってくれた、この学校の為に尽くしてくれた
・・・だけど、君はそれで幸せだったかい・・・?」
そう問われたハルキはしばらく渡辺先生を見つめていたが、不意に上空の青空を見上げ笑って言った
「この世界に生まれて、一瞬だけでも関わりを持てただけで僕は幸せでしたよ
その一瞬だけでも、素晴らしい友達や先生と出会えたんですから
ありがとうございます渡辺先生、僕は本当に幸せでした
またいつか、必ず会いましょう」
そう言ってハルキは、大気にとけるように姿を消した。
☆☆☆
この夢物語は随分前に見たものですが、どんな風に書けばいいのか長らく悩んでいました。
一つには実際に見たものが断片的すぎて一つの話としてまとめてしまっていいのかということ、もう一つにはただ自分の文章力の無さをいつものことながら痛切に感じたこと。
それでも書いて残しておきたいものだったので、今回筆を執らせてもらった次第です。
ただ夢が元という事と例の文章力の所為で、所々文章崩壊している気がしないでもない。
ついでに言うと、珍しく会話文まで入ってます。
中高生の頃より現在のような夢を元にした物語(文と絵)を書き続け、仕事をしながら合間に活動をしております。 私の夢物語を読んでくださった貴方にとって、何かの良いキッカケになれましたら幸いです。