トッキョー ①
1話
少年は歩いていた。
行きたい場所があった。
だけどそこに向かって歩いているわけではなかった。
行き方が分からないからだ。
少年はただ、目の前にある道を、てくてくと歩いていた。
行きたい場所を思い浮かべては、あぁ、行きたいなぁ行きたいなぁと呟きながら歩いていた。
しばらく歩いていると、少年は大きな駅を見つけた。
それはそれは大きな駅だった。
少年は中の様子を見ようと駅の中に入った。
中には人がたくさんいて、駅員は大きく腕を振りながらピーッと笛を鳴らし人を誘導している。
リロリロリロリロリロ
大きな音が駅の中に響いた。
人々がホームへ歩き出す。
少年は聞いた。
「これは何の音だい?」
1人が答えた。
「列車が来るのさ」
どこへ行くんだい、と訊こうとしたがガタンゴトンという列車の大きな音にのまれてしまった。
「さぁ、乗るぞ少年」
1人が少年の腕を引っ張った。
どこへ行くんだい、という少年の問いかけは、プシューッという扉が開く音にかき消された。
ぞろぞろと人々が列車に乗り込んで行く。
1人はぐいぐいと少年を引っ張る。
少年は、大きな声で叫んだ。
「こ、この列車は一体どこへ行くんだ!」
「ゴタゴタ言ってねぇでさっさと乗れよっ!」
後ろにいた1人が怒鳴った。
少年はびっくりして、しょぼんとしてしまった。
すると、少年を引っ張っていた1人が振り返った
「大丈夫さ。この列車に乗れば間違いないんだ。ほら、周りの奴らも皆乗っているだろう?」
少年は辺りを見回した。
確かに駅にいる人は皆、列車へ乗り込もう乗り込もうと必死な様だった。
と、気づいた時にはもう、少年は列車に乗り込んでいた。
大きな列車は、さっきまで駅にいた人々で溢れていた。
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続く。
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