トッキョー ④


4話


るりこの母親の嘆きは、少年の方までも聞こえてきていた。

るりこ。
さっきの赤いリボンの少女と、るりこという文字を重ねる。
うん、いい名前だ。
少年はそう思って、いやいやそんなことより、と頭の中を整理した。
いくつかの疑問が浮かんでいた。

一体、この列車はなんなんだ?
どこへ行くんだ?
なぜ、列車に乗らなかったるりこは哀れまれているんだ?
なぜ、皆この列車に乗ることにあれほど必死だったんだ?
たまたま流れで乗ってしまっただけの列車だが、本当に乗って良かったのか?
横で前を見つめる1人も、もう片方横にいる怒鳴った1人もなんだか信用ならない。
また怒鳴られるのも嫌だしなぁ。
少年は、はぁ、とため息をつき、途方に暮れて天を仰いだ。その時。
列車の天井に、鮮やかな張り紙に、少年は釘付けになった。
青い海に囲まれた緑の島の真ん中にまるでそこが目的地と表すような、大きな星が書いてある。
『さぁ行こう!君の夢を叶えに!
希望の島、トッキョー』
それは、少年がずっと行きたかったあの場所だった。
「ねぇ、あそこ!僕が行きたいのはあそこ、トッキョーなんだ!」
少年は、隣で前を見つめる1人の腕を引っ張り叫んだ。
1人は、瞳だけ彼の方に向け言った。
「あそこには行くな。」
その鋭く、冷たい瞳に、先ほどまでとは違う眼差しに、少年は固まった。

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あらたまき
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