(7)デトロイトから見える未来の映画作り
A:再びコナーくん。何だか久々の登場ですが、アンドロイドお断りのお店にずかずか入って行きます。
服部:なんというか、非常に古い物語だよね。
A:古典と言いますか普遍と言いますか。
服部:人間の昔からの深層心理みたいなものを、新しい舞台でやってるんでしょう。そうしないと経験ない世界で経験ないこと言われても、理解できないからね。
A:全く斬新な物語というものではないですね、確かに。
で、こちらで呑んだくれていらっしゃるのが、なんと警部補。
服部:西部劇だ(笑)
A:事件だから来いって言ってんのに、なかなか仕事をしてくれませんね。一杯おごって機嫌とりましょう。
服部:ハイセンスなアンドロイドだなあ。
A:ようやく現場に到着です。未来っぽさのない低所得エリアでの殺人事件です。アンドロイドが絡んでいるようですね。被害者の血を舐めながら捜査を続けますw
服部:映画だと省いちゃうディテールを細かく見られるのはいいね。映画だと(冗長にならないよう)ストーリーがわかれば細部はすっ飛ばしちゃうけど、プレイヤーの視点で深められる。
A:ゲームならではの楽しみですよね。
どうやら被害者はキッチンからここまで逃げて来て刺されたようです。キッチンに落ちてるバットにブルーブラッドの痕跡がありますね。おや被害者は人間だったはずでは?どうも先に手を出したのは人間であったらしいですね。そのショックで反撃に出た。
服部:アンドロイドが精神的ショックで人間を殺すのかぁ。
A:そして反撃されリビングに逃げ……(しばしプレイを続ける)
服部:ケヴィン・ケリーも言ってたけど、こうしてプレーしてるのを見てるだけでもコンテンツとして成立するよね。CATVでデトロイトチャンネルみたいなのを作って、きょうは誰のプレーですとか。
A:YouTubeなんか見るといっぱい上がってますしね。
服部:押井守監督も言ってたじゃない。今は映画見ないでゲームばかりやってるって。
映画を多重的に演出するのがゲームだと思うし、ゲームの一側面を切り取ったのが映画とも言える。監督の頭の中にあるストーリーを、この方が売れるとか、この表現はまずいとかいった制作の制約で切り取ったひとつのバージョンが、映画としてパッケージされて出る。でも実際はその中でもいろんな変化が起こり得るわけです。だからこういうゲームみたいな多層的な物語があって、100人がそのストーリーを編み上げたら、100通りの展開が生まれていい。だれそれが作った物語とかね。
A:まさにこのゲームでそれが生まれています。何回かクリアしたんだーっていう同士で話をしてても、話が食い違っちゃうくらい広がっている。
服部:今映画自体をゲーム的に作っちゃうという手法があって。例えば、背景や音楽、役者を多重的に撮って、お金を払った人にそれを解放して、好きに組み合わせてくださいといってみたり。デジタル化したらそういうこともできるんじゃないかと言われてるわけです。
スターウォーズなんかも言ってしまえば、背景やセットや小道具を各分野で作り込んでそれを統合してるわけでしょう?
A:編集以降をユーザーに委ねちゃう?
服部:音楽なんかも、各トラックを公開して、ミキシングしたりトラックを足したりできるでしょう?そうした可能性のあるコンテンツは、高いお金払ってもやりたい人や見たい人はいるんじゃないでしょうかね。
A:やりたい!
服部:そういう意味では、これも未来の映画のように見えます。僕らはこうしたゲームを、ファミコンの延長線上にただあるものと思ってるかもしれないけど、本質的にはものづくりの部分からユーザーが手をつけられるようになっているという、ひとつのトレンドなのかもしれません。
<続>
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ケヴィン・ケリー
1952年生まれ。著述家、編集者。1984~90年までスチュアート・ブラントと共に 伝説の雑誌『ホール・アース・カタログ』や『ホール・アース・レビュー』の発行編集を行い、93年には雑誌WIREDを創刊。99年まで編集長を務めるなど、サイバーカルチャーの論客として活躍してきた、テクノロジー界の思想家的存在。
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