【ITブログ #3 クラウド】クラウドを理解するのは、なぜ難しいのか
今回はクラウドについてのお話です。
1.はじめに
クラウドという言葉をよく聞かれると思います。Googleドライブだと、ネットのどこかにサーバーがあって、その中にファイルが保管できるくらいだと考えることができると思います。がしかし、AWSやSaaSなどの言葉が出て来ると、それ何のこと?になってしまうと思います。
今回は、この「クラウド」という言葉の解説をしながら、なぜ理解しにくいのかを説明いたします。
2.クラウドという言葉がなぜ理解しにくいのか
理解しにくい理由は、非常に簡単です。
【理由①】
それは、名は体を表していないからです。つまり、クラウドという言葉は、体、システムの実態を表していないのです。ですから、クラウドという名詞から、システムの実態を想像しにくいです。
【理由②】
その上に、クラウドは、ITのシステム自体を表しているのではなく、ITのサービスを表す言葉です。つまり、目に見える物ではなく、目には見えないサービスを示す言葉なのです。
ですので、先ほどの例で示した、AWSやSaaSの最後は、サービスのSで終わるのです。
3.仮想化という技術
クラウドの中心となる技術は「x86仮想化」です。「x86」はWindows系パソコンを示す記号と思ってください。Macは含まれません。「仮想化」とは、コンピュータ自体を抽象化することです。
例えば、物理的なハードウェアであるノートパソコンの上に、Windows10がインストールされていると、そのパソコンはWindows10のパソコンと言えます。これは、ハードウェアとソフトウェアが一体化している状態と言えます。
仮想化は、このハードウェアとソフトウェアを分離して、自由に組み合わせることができるようになります。当然ですが仮想化するためには、専用のソフトウェアが必要になります。そのソフトウェアは「x86仮想化のソフトウェア」と言われます。代表的な例として「VMware」(ヴイエムウェア)というソフトウェアがあります。ITの仮想化市場において世界一のシェアを持っているソフトウェアです。つまり、VMwareを使って、クラウドは構築されているのです。
4.VMwareの歴史
VMwareが誕生した、2000年ごろは、多種のWindowsが存在していました。
Windows95、Windows98、Windows98SE、WindowsMe、Windows2000、WindowsXPと6種類ありました。ソフトウェアを開発していると、それぞれのWindowsのバージョンでテストを実施する必要があります。6台のパソコンを並べて置いて、ソフトウェアをそれぞれ入れて、動作の確認をする必要がありました。これでは効率が良くないので、WindowsXPのパソコンにVMwareを導入して、新規に仮想マシンを作成して、そこにWindows2000を新規インストールします。この時のWindows2000は、ゲストOSと言います。ゲストOSに割り振る、メモリーやハードディスクの容量を指定することが可能です。
導入元のWindowsXPのパソコンが仮想化に対応している必要がありますし、ゲストOSのWindows2000の正規ライセンスも必要です。これを繰り返せば、WindowsXPのパソコン上に、複数のWindowsバージョンのパソコンが仮想化された状態で立ち上がります。これで、パソコンを替えなくても、ソフトウェアのテストが実施することができます。
当時は、個人使用が前提ならば、無料で使用することができたので、自宅のパソコンに複数のWindowsを入れて、ゲームをしている人も多くいました。この仮想化の技術は、大型コンピュータ(いわゆる汎用機)では、かなり前から実現されていた技術です。(IBM社のMVSなど)
5.クラウドの始まり
1台のパソコンで複数のWindowsを動かすのではなく、複数のサーバーを1つのVMwareで統合できるようになりました。そのVMwareの上に、ゲストOSのサーバーを立ち上げて、インターネットのサービスを提供するようになりました。これが、クラウド、クラウドコンピューティングの始まりです。
ゲストOSの提供方法で、いくつかのサービスも生まれました。
①IaaS
IaaS(イアース)は「Infrastructure as a Service」の略で、なにもOSがインストールされていない状態で貸し出されます。使う人が自由にOSをインストールして、ソフトウェアも自由にインストールすることができます。いわゆる、素のクラウドサービスになります。
②PaaS
PaaS(パース)は「Platform as a Service」の略で、ゲストOSをインストールした状態で借りることです。例えば、レッドハットと言うLinux系のOSが事前にインストールされているので、使用する人は必要なソフトウェアを入れるだけで使用可能になります。自由度は下がりますが、OSをインストールする手間が省けます。
③SaaS
SaaS(サーズ)は「Software as a Service」の略で、OSやソフトウェアが導入された状態で借りることです。借りたらすぐに使用を開始することができます。自由度は低くなりますが、難しいサーバーの設定やOS、ソフトウェアのインストールする必要や知識が必要なくなります。
6.クラウドという名前
システム構成を示した図を描くときに、インターネットは○に×を組み合わせます。アメリカでは、雲のイラストを使用していました。このことから、インターネットのサービスですので、クラウドと呼ばれるようになったとのことです。これには諸説あります。要するに、クラウドとは、インターネットを利用したITサービスのことを指します。
クラウドが日本に入って来た時に、IT評論家がクラウドという名前を論評していました。「さすが、アメリカはネーミングが上手い。クラウドをいう、何かわからないような名前にすれば人々の抵抗や違和感も少ない。これを、仮想化技術を利用したインターネットや仮想化サーバーという名前にしたら、利用を避けるかもしれない。」と言っていました。つまり、クラウドという名前は、意図的に実態を理解できない名前にしていると指摘していました。
7.最後に
クラウドという言葉の理解は進みましたでしょうか。
クラウドは、複数のサーバー上のVMwareでサーバーを構築するので、故障によるトラブルは理論的に発生しないと言われています。がしかし、クラウドの障害は発生しています。いくら、サーバー自体に問題がなくても、クラウドに入るところと出るところで、障害が発生しています。障害の発生しないシステムは存在しないということでしょう。
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