見出し画像

おかづのままよ日記「一人ゆくあの日ホタルの飛んだ道」 時間が答えと思えた日 220622

私はおかづである。

目の前の夫婦、今日はなぜか…。


「暑いねぇ…、蒸し暑~い。今日はおる。これはおるやろ」と夫くんが言う。



ホタルの話なのだ。

ホタル

夫くん、かつて仕事場が隣街だったので高速で通っていたらしい。
だが、中途半端な距離なので高速代は会社が払ってくれない。
そこで夫くんは一般道の裏道を探し出したのだ。ひと山越えの裏道を。
対向車と、すれ違うのも稀な道を…。


曲がりくねり薄暗くなった川沿いを帰っていると、
「…!。えっ!。えっ!おいおいおい…」
なにか小さな光がふわふわ揺れて点滅している。「ホタルや!」すぐにわかった夫くん、路肩に車を停めライトを消した。


幅は6~7m位だろうか、小さな川だ。
ホタルが飛んでいる。いや、舞っている。川の上、橋の下、草や木の間を行ったり来たりしている。
「すごいやん…、乱舞や」

ホタル

今まで見たことはあっても、こんなに多くを見たのは初めてだった。



だんだんと目が慣れてくると、もう…、いたるところで飛んでいる。
ゆっくりと点滅しているので、これは源氏ボタルだろうか。いや、平家?



川から少し離れた木の周りや畑の上、田んぼの上も光が揺れているのだ。
「そんな所も飛ぶん?」
いや~、びっくり。


寄っていったと思えば離れ、離れたと思えば寄り、カップル誕生がどんなんかわからないが、これだけいればなんぼでも出来るやろう。
夫くんはもう、ずう~っと見とれていた。


遠く畑に鹿も見た。
「……!」



後に、人から聞けば、その上流にはホタルの名所があったようである。

ホタル

帰ってすぐ妻に出来事を話す…。
次の日…、信じてない妻と息子を連れて見に行った。




その日は他に何人か見に来ていたので、その年は当たり年だったのかもしれない。

息子は一緒に行くのさえ嫌がっていた。当たり前だ。まだ反抗期の高1。
だが、ホタルを見た妻も息子も「うゎ~っ!。すごいね。、、あそこも光ってる。こっちの上もおるよ」と喜んでくれてしばらくみんなで見とれている。
薄暗くてよく見えないが、きっといい顔だったのだろうと思う。


帰り道も、車の窓を開け、眺めながら帰った。
今でもこの季節になると思い出す、いい思い出になっている。


ついでに話すと、、、あの時の車の中、知らぬ間にホタルが入って自宅に連れて帰っていたのだ。
決して捕まえたのではない。違うぞ、窓を開けているときに勝手に入ったのだろう。
まぁ、それだけたくさんいたのだ。
ホタルはもちろん自然に帰してあげた。

ホタル

いやぁ、長い前振りになってしまった。
えっ、前振りか?

一昨日、夫くんと妻さんはその場所へ行ったのだ。

すると…、、、行ってみて思い出したこの場所、数年前の土砂災害で、通行止めになった場所。そして、その道を通れないまま退職した夫くんは忘れていた。


今はやっと通れるようになっていたのである、が…。

……!

「ええっ…!あぁぁぁ~ぁ…」
息を飲む夫くん。
川がコンクリートで整備されてしまって、ホタルの住む場所がない。



車から降り、奥はどうだろう?と、少し上流まで歩いたが、ず〜っと整備されている。そしてその途中で立ち止まった時…、、、

はっ!?と目を向けた先に…鹿、、、鹿がこちらを見て、、すぐ逃げた…。

そういえば、、、昔よりもたくさん畑の周りに獣防止の網が張ってある。

う~ん…、なんか答えのない感じ。


夫くんと妻さん…、
「またね…」


時間がたてば…、戻ってくるよと帰って行く。

うん、時間が答えのようだった。


一人ゆくあの日ホタルの飛んだ道

護岸壁ひょいと鹿の子首上げる
歌月


時間が答えと思えた日。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?