病床カーテンの向こうで… 2/18
「はい、撮りますよ。息を大きく吸って~、止めて…」
「もう一度いきますね…息を吸って~、止めま~す」
「では、次…、お腹いきますね~…」
ポータブルレントゲン撮影が室内で始まりました。
私にとっては初めて出来事
の前…、
夕食持って看護師さんが来られていました。
「〇〇さん、今日元気ないね~、どっか痛い?」
「……」
「〇〇さ~ん…、痛い…? 〇〇さ~ん」
返事がないので私も不安になります。
少し看護師さんが増えてます。
「〇〇さ~ん…、どんな?ご飯食べたくない?ね~。どっか痛い?」
返事のない会話が続けられます。
外では音も聞こえます。
しばらくすると、奥さんも呼ばれて来ます。
「〇〇さ~ん…。奥さん来たよ~…。〇〇さ~ん…」
「奥さん来たよ~…」
返事がありません…。
「わかる…?」
「わかる…?」
奥さんはベッド横にいて、手を握ってるだろうはわかります。さすってるだろうもわかります。
え~、どうするの?
こんな場にいていいの?など考えていると、
部屋の外では静かに準備が進められていたようで先生が来られていました。
すぐに、この場で検査が始まるようです。
そして看護師さんが退出されて、部屋のドアが閉められ…、
ポータブルレントゲン撮影が室内で始まりました。
「はい、息を吸って~」ということが、私の斜め向かいの方のベッドで始まったのです。
レントゲン撮影にポータブルがあるとは初めて知りました。
人に自慢できるくらい撮影している私は同じ室内での撮影などどうでもいいです…。
何か異常があれば、このような感染症禍でも動かず体内の状態を知る撮影ができる。
すごいな…など考えながら聞いていました。
大丈夫やろか?
私はドキドキしながらもトイレへ出た帰り道の廊下で、看護師さんに肩を抱えられながら歩く奥さんとすれ違いました。
心配になり静かに部屋に入ります。
〇〇さんの声は聞こえませんがおられます。
どうやら集中治療室へは行かなくても大丈夫そうで、新たな点滴が始まるようでした…。
ふ~…、
部屋の中はふたたび静かになり、隣の方のいびきのみが響きます。
〇〇さんの横には看護師さんがずっとついておられる。
少し時間たったころ、少し落ち着かれた顔になったのでしょうか…。
看護師さんが話しかけられてます…。
「〇〇さ~ん」
「……」
「〇〇さ~~ん…」
「…ぅん?」
返事が聞こえる。
「〇〇さ~ん。さっき奥さん来とっちゃったのわかった~…?」
「……。ぅん?」
「奥さんがね~…、おっちゃったんよ~…」
「……。うん?」
返事してる!声も出てる。
ふ~、なんか一安心です。
その後いったん一人部屋に移されていましたが、就寝前にまたカーテン向こうに戻って来られました…。
よかった~
ほんとうに
よかったです。
昨日は、ドラマのような現実がカーテン向こうで起こりましたが、
これは特別ではなく日常だと、あらためて思いました。