これから始まる四重奏「#青ブラ文学部」
静寂を破る放屁の音が部屋中に響きわたった。
病室ではプライバシーなどない。名前も病状も全て聞こえてくる。放屁音しかり。
ここは4人部屋なのだ。
初日から思い知らされる。
えらいとこへ来てしまった。
私以外の3人の方々にとってこの部屋はリビング・ダイニング兼トイレである。当たり前だろう。ベッドでテレビを見ながら食うことは出来てもトイレへは行けない。起き上がれないのだ。
手術後のこの病室の方々にとって、きちんと食べてきちんと出す、ってことは最も重要なことなのである。もちろん、おならも単なる「プー」ではいけないのだ。
「プーー、プイッ!」である。
この最後の「プイッ!」ってのが重要だ。出し切れることが大切なことなのだ。君は最後まできばれるか? だ。
元気な時に、こんなことを考えたことがあるだろうか。
私はない。
はたして、周りに誰一人いない時でも、こんなにきばってしてたかなぁ? と思い出すのである。
記憶にはない。
ただ、出たことはある。だろう。
いや、病気をして入院すると、人体の不思議ってのを知ることがあるが、これもまた、なかなか経験できないことかもしれない。
いいじゃないか4人部屋。
他人のおならの出し切り音「プイッ!」を、そいつがいったいどんな姿勢でどんな顔して出しているかがわかるほどの間近で聞けるのだ。
臭っちゃいけない、笑っちゃいけない。1日だけじゃないのだ。
開始だ。まるで放屁出し切り三重奏。なんか心配になってきた。
前隣、「プーー、フヒ…」 弱ーい! 腹筋鍛えろ。
左隣、「プーーーー、ピーーー」と、止めろー! 芋食うんじゃない。
真横、「プーー、パンッ!」き、君!? 尻の下は板か? どういう姿勢やねん。
あ〜、どうする、尻の形と向きさえわかりそうだ。悩む。
おっと、繰り出される放屁の中、私の担当医が来られた。
「こんにちは、さいとうさん。 さいとうえい子さんですね」
「はい」
「手術頑張りましょうね。術後のおならは最も重要で、男も女も関係ありませんからね、精一杯やりましょう。ふふ」
「ふふ」
551文字(適当)
しまった。こんなん無視しようと思ったのに、、参加してしまった。
なんせ「放屁」のシリアス話を書く!? 無理だ!
シリアス!?
いや、ある。
去年入院した時、間近で3人分の「放屁」を聞いた記事を書いたことを思い出してしまった。なので参加しようっと。
あれは去年の冬でした。
話をショートショート風にアレンジ。
よろしくお願いします。