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【ロック名盤100】#55 Joni Mitchell - Blue

 今回紹介するのは、ジョニ・ミッチェルが1971年6月にリリースした「Blue」だ。前回取り上げたキャロル・キングらとともに70年代のシンガーソングライターの代表格として知られる彼女の最高傑作であり、本作は女性フォークの到達点だとまで言われる。2020年のローリング・ストーン誌が選ぶ最も偉大なアルバム500でも女性アーティスト最高の3位。エポックメイキングな作品である。
 アコギで掻き鳴らされるかまたはピアノで響かせる美しいメロディ、今にもこぼれ落ちそうな儚いボーカル。深い愛情に満ちていて、それと同時に切ない喪失感も感じさせるまさに「ブルー」なアルバムだと思う。取り立てて抑揚があるというわけではないが、アルバムの中で一貫したムードが確立されており、アルバム全体としての完成度はあまりにも高い。

1 All I Want
2 My Old Man
3 Little Green
4 Carey
5 Blue
6 California
7 This Flight Tonight
8 River
9 A Case of You
10 The Last Time I Saw Richard

 個人的にブルっと来た(インパクトを受けた)のは表題曲「ブルー」の最後の"me~"の歌唱だろうか。ジョニ・ミッチェルの万感がダイレクトに伝わってくる印象的な場面で、とてもアイコニックな瞬間として語り継がれるべきだと思った。僕が一番好きな曲「カリフォルニア」は個人的には最も親しみやすい感触がある。後ろで鳴っているペダル・スティール・ギター(なのか?よければ教えてください)の音色がなんとも素晴らしい。
 もちろんおそらくこのアルバムの中でも特に評価が高いであろう「リヴァー」「ア・ケイス・オブ・ユー」にも触れるべきだろう。「リヴァー」はピアノの旋律が感傷的な名曲で、ビートルズの「レット・イット・ビー」、サイモン&ガーファンクルの「明日に架ける橋」の系譜に重なるようなパワーを持った曲だと思う。弾き語りの色彩が強い「ア・ケイス・オブ・ユー」はジョニ・ミッチェルのキャリアの中でも屈指の代表作。これも彼女の思いがか細いようで力強いボーカルから伝わってくるのではないだろうか。
 この作品はジャンルの分類としてはフォークであり、ロックの要素はやや薄いかもしれない。なかには軽快さがないという人や、ロックリスナーにとっては退屈な瞬間もあるかもしれない。僕ももともとそんな時期もあった。だが辛い時や悲しい時にこの作品はあちらから寄り添ってくれる。多くの人に大事にしてほしい作品だと思った。そのためこの作品も「ロック名盤」としてしっかり取り上げるべきなのは間違いないだろう。

↓「ア・ケイス・オブ・ユー」

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