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【ロック名盤100】#45 David Bowie - Station to Station

 今回紹介するのは、デヴィッド・ボウイが1976年1月にリリースした「Station to Station」だ。最近ではローリング・ストーン誌のベストアルバムリストでTop100に入るなど評価も鰻登りで、デヴィッド・ボウイのカタログの中でも前回紹介した「ジギー・スターダスト」に次ぐ傑作だと思う。
 とはいえ「ジギー・スターダスト」とは全くサウンドが違う。デヴィッド・ボウイとはそういう人で、違うジャンルに挑戦していくスタイルがとにかくかっこいい。本作の前にリリースされた「ヤング・アメリカンズ」のブラック・ミュージック路線にドイツの先進的ジャンルだったクラウト・ロックを取り入れた———このクラウト・ロックのスタイルは本作の次の「ロウ」を含める「ベルリン3部作」で後に花開くことになる———サウンドは本作独自のものだろう。神々しいエネルギーのような雰囲気を感じるが、かといって小難しくなってしまうこともなく天性のポップセンスも健在。

1 Station to Station
2 Golden Years
3 Word on a Wing
4 TVC15
5 Stay
6 Wild Is the Wind

 表題曲「ステイション・トゥ・ステイション」はなんとのべ10分間の大作。ノイズを含んだ長いイントロはやはりクラウト・ロックのエレクトロニックなサウンドに影響を受けたものだろう。一方中盤の心地良いグルーヴ、後半で展開されるディスコのセクションなどはブラック・ミュージック方面のテイストが強い。クラウト・ロックとソウル、ファンクの折衷というのは当時かなり斬新なものだったのではないだろうか。
 モロにファンクな「ゴールデン・イヤーズ」や明るいけどやや前衛的で不思議な歌詞が歌われる「TVC15」あたりもめちゃくちゃいい。だけど僕が特に好きなのはラストを締め括る「ワイルド・イズ・ザ・ウインド」。意外にもこれは50sポップのカバーで、イントロのメロディアスでか細いギターフレーズから心を掴みに来る。ロマンチックなボウイのボーカルがなんといっても最大の聴きどころだろう。
 実のところボウイは制作中かなり深刻な薬物中毒を抱えていたようで、制作途中のことはほとんど記憶にないらしい。たしかにどこか退廃的な雰囲気が漂っていたり、プログレッシブでアート・ロック的な音色に幻覚的要素が散見されたりもする。とはいえいつも思うんだけど、そんな危険な状態でよくこれほどの完成度の作品が作れるよね。
 かなり挑戦の意欲に満ちた内容で、現代でもこのアルバムのような音像の作品を作りたいと思っているアーティストも少なからずいるはずだ。だからこそ再評価されたのだろうし。鬼才デヴィッド・ボウイの持つ宇宙的な魅力は限界を知らない、ということだろうか。

↓「ステイション・トゥ・ステイション」 

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