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【ロック名盤100】#24 The Velvet Underground - The Velvet Underground And Nico

 今回紹介するのは、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドが1967年3月にリリースした「The Velvet Underground And Nico」だ。最も影響力のあるロックバンドのうちのひとつであり、そして全く売れなかった。「アルバムは3万枚しか売れなかったが、買った3万人全員がバンドを始めた」とはブライアン・イーノの言葉。
 ヴェルヴェット・アンダーグラウンド、通称ヴェルヴェッツをプロデュースしたのは何を隠そうあのアンディ・ウォーホル。ジャケットのデザインも彼のもの。本作はヴェルヴェッツとアンディ・ウォーホルによる、コンセプトアルバムなどとはまた違ったロックにおける芸術作品だ。なお、タイトルにあるニコというのはアンディ・ウォーホルが引っ張ってきて本作のみ参加した女優。客寄せパンダみたいなものなのかと思いきやリードボーカルを4曲もとっているし、これが意外と味があって悪くない。

1 Sunday Morning
2 I’m Waiting for the Man
3 Femme Fatale
4 Venus In Furs
5 Run Run Run
6 All Tomorrow’s Parties
7 Heroin
8 There She Goes Again
9 I’ll Be Your Mirror
10 The Black Angel’s Death Song
11 European Son

 ルー・リードのソングライティングは独特で攻めた詞が注目されがちだが、曲も十分に素晴らしいということを気に留めておいてほしい。確かに当時のポップスとは全くの異色だが、もう少し売れてしまってもよかったんじゃないかと現代の耳でありながらも少し思う。「サンデイ・モーニング」「アイム・ウェイティング・フォー・ザ・マン」あたりを聴くと、将来花開くルー・リードのポップセンスを垣間見ることができるのではないか。
 …などとは言いつつも、やはり尖っている。「ヘロイン」はこのアルバムの象徴ともいえる実験的な楽曲だ。ちなみに、僕が1番衝撃を(物理的にも)受けたのは「ヨーロピアン・サン」で突如鳴り響く金属の衝突音。刹那、ギターにディストーションがかかる。これにより、リスナーは何か楽器か録音機器なんかが壊されたのかと思わせるような仕掛けとして成立している。ジョン・ケイルのアイディアだろうか。
 ヴェルヴェッツのジャンルを形容するならアート・ロック、エクスペリメンタル・ロックといったところだが、彼らはパンク/オルタナの源流とも言われる。その文脈で行くとガレージ・ロック、プロト・パンク的要素も強い。さらにはシューゲイザー方面へ与えた影響も計り知れないだろう。
 これだけ多くのジャンルに通じるようなアルバムが世間に見つからないままだったら、と想像するとぞっとする。全くポップではない方向に振り切りながらも、絶大な影響力を持つ作品にしてみせたヴェルヴェッツとアンディ・ウォーホルには脱帽してしまう。ここでもう一度、ブライアン・イーノの言葉を借りたい。「アルバムは3万枚しか売れなかったが、買った3万人全員がバンドを始めた」

↓「サンデイ・モーニング」

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