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【本】 穂村弘の短歌を読もう


【本】 穂村弘の短歌を読もう


あなたの生活をちょっと豊かに✨》
重吉のおすすめ紹介マガジン収録記事♢



和歌は一度取り上げましたが、今回はおすすめの現代短歌『世界中が夕焼け』という本です。
この本は歌人のお二人、穂村弘さんと山田航さんの共著です。穂村さんは平成最大の歌人。山田さんの穂村短歌評に作者の穂村さん本人がコメントを付したなかなか珍しい形式の本です。
全50首収録。

どのような作品であっても自分の想像力を発揮して楽しめばよいのですが、人の読み方(今回でいうと山田さんの)を学ぶと、読み方の幅が広がったり、深く読めるようになって、より一層短歌を楽しめるでしょう。

穂村短歌の中から三首ご紹介します。
短歌って意外と面白いじゃんと思われましたら、『世界中が夕焼け』を手に取ってみてくださいね♪

では、いってみよー☺︎


☆⭐︎


体温計くわえて窓に額つけ「ゆひら」とさわぐ雪のことかよ

『シンジケート』

この歌は上の句で女性の描写、その次に女性が「ゆひら(雪だ)」とさわいで、そのあと男性が雪のことかよとツッコミをいれる、ドラマのワンシーンのような構成になっている。ぴたっと窓につけた額の冷たさが読者にも伝わってくる。
七・七の頭(それぞれの台詞)を〈ゆ〉で揃えているのも心憎い。
熱を計りながら窓に額をつけ「ゆひら」と言ってさわいでいる女性を、ツッコミをいれつつ愛情深くみつめている、そんな歌なのだと思う。


「十二階かんむり売り場でございます」月のあかりの屋上に出る

『手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)』

エレベーターガールの口調で始まり、〈かんむり売り場〉という不思議な言葉が登場する。
幻想的な想像をしたところに、月のあかりがこうこうと、さらに幻想の色が濃くなる。
売り場と屋上なので場所はデパート、〈かんむり売り場〉は少女的な想像の世界なのだろう。
かんむりと月の絶妙な取合せが輝いている。


サバンナの象のうんこよ聞いてくれだるいせつないこわいさみしい

『シンジケート』

この歌は歌集の第一稿では落ちていたらしく、林あまりさんの助言で入れることになったらしい。
『世界中が夕焼け』の50首には入っていないけど(山田さんの短歌評には出てくる)、僕の中での穂村弘の代表歌のこの歌を紹介しないわけにはいかない。世界中が夕焼け以外の穂村さんの本や、穂村さんがTVに出演されているのを見てきた僕としては〈サバンナの〜〉の歌のイメージが僕の穂村さんのイメージなのだ。少年時代の穂村弘が本当にこう呟いてそうなのだ。

この歌が無事発表されたおかげで、この歌は世界中のみんなのものになった。心が弱ってしまった時、この短歌を呪文のように唱えればよい。サバンナの象のうんこは、遥か彼方でドンと受け止めてくれるだろう。





ご紹介した本『世界中が夕焼け』はこちら

穂村弘といえばこの本も!

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〔簡単な自己紹介〕
詩書き。〈青い鳥書店〉店主。
noteでは詩の投稿や販売、人生で出合った特別なものを紹介する『重吉のおすすめ紹介マガジン!』の運営などをしています。
詩の面白さを伝えたい。
何度も読んでもらえる詩を書いていきたい。









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重吉陽一郎〔詩人兼店主〕
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