NYLife NYCのバスターミナル
初めてニューヨークで住んだ家は、ニューヨークとは名ばかりのアップステートのスプリング・バレーと呼ばれる田舎町。そこは摩天楼どころかビルはなく、まるで軽井沢の別荘地のような景色が広がる森の中の住宅地でした。
そんなスプリング・バレーからマンハッタンに行くにはRed and Tanという中距離バスに乗ります。スプリング・バレーから1時間ちょっと走ると、遠くに高層ビル群が見えてくるのでした。バスはリンカーン・トンネルを抜け、42nd st.にあるPort Authority Bus Tarminalに到着しました。
30年前、この辺りは治安が悪く、明らかに犯罪に巻き込まれる雰囲気でした。渡米前に見た映画「バスケットケース」はここが舞台でした。映画で描かれていたように、見世物小屋、風俗店が立ち並び、物凄い悪臭で、気持ちは不安ばかりです。
田舎町から初めてマンハッタンに行った目的は、ある映画が公開されたので、それをタイムズスクエアの映画館で見るためです。その映画は、大好きな映画監督アラン・パーカーの新作「ミシシッピ バーニング」。
映画を観た後、実際にあったアメリカの人種差別事件の事実を知り、あまりの怖さに日が暮れつつあったマンハッタンを足早に去ったのを今でも鮮明に覚えています。
帰りのバスターミナルは、怪しい人々、奇声をあげている浮浪者、そして独特の臭い、バスや車のうるさいエンジン音が混じり、とても怖い場所でした。
なんとかバスのチケットを買い、Red and Tanのバスに乗り込み、マンハッタンをあとにし、しばらくはこの大都会には足を踏み入れませんでした。
・・・・・・・・・・・・・
2000年に入り、バスターミナル一帯はディズニーに買収され再開発が行われ、現在は高級コンドが立ち並ぶ綺麗な街に生まれ変わりました。
2024年、ターミナル自体は30年前と比べると治安がよくなりました。建物と、臭いはあの頃のまま変わりません。
これからは、ターミナル自体が建て替えられるそうです。現在、デザインを選定中です。
あの怪しくて臭くて、怖いバスターミナルのイメージは、数年後にはなくなってしまうのだそうです。