Friendly's フレンドリーズ
大学留学のためにニューヨーク郊外に着いたのは雪の降る1月上旬でした。ニューヨークの大学ということで、摩天楼ニューヨークをイメージしていたのですが、着いた場所は鬱蒼とした森の中にある州立大学でした。ニューヨーク州は大きく、都会なのはニューヨーク・シティだけです。マンハッタンから30分も車を走らせると、そこはまるで軽井沢のような場所になります。森の中に家が点在しているのでした。
大学の留学生課にいくと、住む家に入れるのは1週間後だから、それまではモーテルに泊まるようにと指示されました。
モーテルまで送ってもらうと、そのモーテルは安っぽく、部屋も狭かったです。そのモーテルにはフレンドリーズというレストランが併設されていました。
狭い部屋にいても特にすることがなく、私はフレンドリーズに行きました。
フレンドリーズの店内は暖かく、店員さんも親切でした。
メニューを見ると、美味しそうなアメリカの田舎料理の写真がありました。
どうやらここはパンケーキやワッフルが人気のようです。他にもフライドチキンやステーキなどもありました。私はコーヒーを飲みながら時間を潰し、夕方5時からステーキをいただきました。何時間も滞在しているのに、店員さんは嫌な顔をせず、いつも私を気にしてくれ、コーヒーを注いでくれるのでした。
私がモーテルに滞在中、結局、朝・昼・晩と3食をフレンドリーズで食べました。メニューはたくさんあるので、飽きることはなかったです。
そんなフレンドリーズ。私が大学生活に慣れると、店を訪れる回数は減っていきました。大学を卒業し社会人になった後も、アメリカ出張の際、アメリカのいろいろな都市で同じ形をした店舗のフレンドリーズを見かけると、留学したばかりの頃の私を思い出しました。
最近は、すっかり店舗数も減り、寂しい限りです。
フレンドリーズについて
1935年にマサチューセッツでオープンしたレストランだそうです。アイスクリームが有名なアメリカン。ダイナーという位置付けです。
1997年にNASDAQに上場、東海岸で人気があり、家族向けで、ロードサイドに店舗数を増やしていました。
1988年、当時の副社長がフランチャイズ店を大幅に増やす戦略に出ます。そしてマネーゲームが始まります。2000年、アメリカ証券取引所に株を上場、サン・キャピタル・パートナーズという投資会社に売却されました。この時点で、創業当時のお客さんに対する思いや、メニューへのこだわりは失われていったそうです。そして利益追求主義、株主優先主義に傾いていきました。投資会社は積極的に店舗数を増やしたり、小さなファーストフード型の店舗を作ったりしましたが、ビジネスは傾いていきます。そして次々と会社のオーナーが代わり、フレンドリーズのブランド・イメージが壊れていきました。
アメリカの行き過ぎた資本主義の末路の典型です。
経営者は会社の株価にのみ注力し、自分達の収入を増やすことに邁進していきました。そして、2011年に破産したそうです。
フレンドリーズは、現在でも店舗数を減らしながら営業を続けています。
店員さんたちは、会社の経営状態など気にせず一生懸命働いています。お客さんへの優しさも失われていないようです。もはや会社のマニュアルは意味が薄れ、雇われている従業員個人の人柄で成り立っているのだと思います。
ネットで確認すると、懐かしいシェークやパンケーキは今でも健在です。
もしアメリカドライブをしていてフレンドリーズがあったら、立ち寄ってみてください。今でも店員さんたちはお客さんを暖かく向かい入れてくれます。