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私の美大受験を振り返ってみる(浪人有り!)
あっという間に大学一年の前期が終わって夏休みに入りました。
暇になってきたので美大受験のことを振り返ってみようかと思います。
「受験は情報戦」みたいな言葉を聞いたことありますが、美大受験は特に情報が大事!
普通に生きてるだけでは美大受験に関する情報なんて入ってこないので、他の大学と比べても情報の価値が高いと思います。
私の受験時代は正直あまり褒められるような生活をしていなかったので、あまり参考にはならないかもとは思いつつ、こういう人もいるんだくらいの軽い気持ちで美大受験をする人の情報の一つになればいいかなと思います。
美大についてあまり詳しくない人にも是非知ってもらいたい世界です。
✴︎現役時代
高校に通っている間は個人が経営しているような小さいアトリエに通っていました。
美大受験をする人が毎年1人ずついるくらい。
この小規模な画塾に通っていたことが最大のやらかしでした…
普通美大受験をしようと思えば大半の人は大手の美術予備校に通います。
東日本ではどばた、西日本ではaskなどが有名どころです。
最初にも言ったように美大受験はとにかく情報が超重要。
大手の美術予備校と個人経営の小さい画塾では入ってくる情報の量が桁違いです。
今振り返ると現役の時はとてつもなく無知なまま呑気に本番を迎えていたなと思います…
もう一つ、大手美術予備校と小さい画塾の大きな違いがあります。
それは「競争する相手がいるかどうか」です。
そもそも美大の試験って、どんなふうに行うのか?というのを説明しておきたいと思います。
試験科目は大学によって異なりますが、基本あるのはデッサン。
他にも専攻ごとの試験(日本画なら日本画の試験、)絵の具を使って描写する色彩の試験、立体物を作る立体試験など種類が色々あります。
で、美術についてあまり詳しくない人からよく聞かれるのがこの文言。
「でも美術に優劣なんてないのに作品に点数をつけるのっておかしくない?」
美術大学の試験は「相対点」で決まります。
普通の筆記試験は正解が定められているので絶対点ということになります。
まず受験者が描いた作品をずらーっと並べ、上手い順に並べ替えていく。
並べ終わったら上からその作品に値する点数をつけていく、というのが相対点の付け方です。
並べられて採点されることを前提に、周りの人の様子を見ながら制作していきます。
絶対点で採点する筆記の試験とは違いカンニングし放題、むしろカンニングが推奨されています。
良い構図思いつかなかったら周りの人の構図みて良いやつをパクれ、トイレ行くふりして周辺の人がどんなの描いてるか目に焼き付けろ、と指導されます。
トイレに行く時間を潰してでも周りの人の状況をみておくことはめちゃくちゃ有用です。
ここで本筋の話に戻ります。
受験対策の段階で当時「競争する相手」がいなかった私は、自分の相対的な実力がまっっっったく分かっていませんでした。
受験の知識もない上に自分の実力も分かっていなかった私は先生に褒められながらのんび〜り受験対策をしていました…
結果、第一志望、滑り止めの私立全て不合格。必然的に浪人への道が開かれたのでした。
✴︎浪人時代
現役時の反省を生かして画塾を変えることにしました。
4月、大手の画塾を何校か見て回り一番良さそうなところへ入学しました。
ひとクラスに20人くらいいる中で、初めて競争しながら対策を始めました。
3時間で制作したのち、みんなの作品を壁に並べて先生が一つずつ講評していきます。大体の順位もつけられます。
ここで初めて自分の作品を他の人と並べられる経験をしました。
例えばデッサン。
並べられた私の作品を見るとうっっっすい。
人より繊細に描いているものの悪く言えばまるで存在感がなく、周りの作品と見比べるとどうしても劣って見えました。
作品を並べられた時にどうしても目立って見えるのは濃く描かれたものでした。
こういうのも現役の時に足りなかった情報の1つでした。
作品を並べられた時に周りのよりも自分の作品を目立たせるためには、とにかく濃く描く!
西日本の美術大学は特に濃いデッサンを好む傾向があるそうです。
さらにそれぞれの大学ごとに好みのタッチというものが存在しており、「◯◯大学は濃いのが好きだからもっとコントラストあげてみて〜」みたいな指導を受けたりします。
私は西日本の大学ばかり受けたので、デッサンは常に濃く描くように意識していました。
とにかく濃く!と意識してデッサンしてみるものの、急に濃く描けるようになるわけはない、+私自身薄くても繊細なタッチの描写が好みだったので、自分の好みを完全に取っ払うのに苦労しました。というか取っ払えなえいまま終わった気がします。
実際、入試本番のデッサンはかなり薄かったと思います。
そんな感じで始めの方は自分の作品をとにかく“受験向け“の作品に寄せていく作業をしていきました。
そんな中で出てきたのが精神的な不調。
普通に生活していてもずっと受験への不安を抱えたまま過ごさなければならないため自律神経がとにかく乱れまくり。
めまい、動悸、吐き気などの不調が一年中続いていたのが苦しかったです。
普通の受験とは違って筆記試験とと実技試験どちらも対策しなければならず、筆記の勉強していれば実技やらないと…という気持ちになり、実技の対策中も今度は筆記の勉強しないと…と気が休まることがありませんでした。
さらに元から朝起きられない+精神的なものからくる不眠で、朝から画塾に通うことが難しくなってしまい、他の浪人生は一日中対策しているのに対して私は夕方から画塾に通う生活をしていました。
夏休みの途中からそれも厳しくなり、夏休み後半は完全にお休みすることにもなりました。
それでさらに他の人との実力差が開いていくんじゃないか、と不安になり完璧な負のスパイラルが出来上がっていきました…
他の浪人生と比べると圧倒的に授業を受けた回数は少なかったものの、意外にも実力に差は出ませんでした。
が、自分の実力に自信が持てないままずっと過ごしていました。
そんな中、夏休みが終われば私立の試験が始まります。
私立は大体デッサンのみの試験が多いです。
私は2校受け、一校は補欠合格、もう一校は特待生で合格をしました。
一校目は現役の時にも受けた学校で、合格発表の日には不合格と伝えられたので「去年と実力が変わってないんじゃないか」とかなり不安になりましたが、私の誕生日の日に補欠合格の連絡が来てすごく喜んだのを覚えています。
第一志望の合格発表の後に補欠合格の電話が来たので、丁寧にお断りさせていただきました。
この私立2校ともを合格したのが精神的にもかなり安心したし、ちょっとは自分の実力に自信が持てたきっかけだったなと思います。
今でもこの私立2校には感謝しています。
そして年を越し、次に迎えるのは共通テスト。
美大とはいえ国公立の美術大学は共通テストの点数も採点対象です。
私の第一志望の大学は美大の中では比較的共通テストの点数が全体の点数に反映される割合が高いので、手を抜くわけにもいきません。
現役の時にギリ目標の点数は取れていたので、浪人時代はそれを維持することだけを目標に独学で勉強していました。
現役の時は高校で他の人に合わせて2次試験対策用の問題を解かされる時間が多くて時間が勿体無い…!と思っていたので、共通テスト対策だけに集中していた浪人時代はむしろ現役の時よりも効率的な勉強をしていたと思います。
英語はひたすら長文を読む、古典は文法など完全無視、漢文に至っては現役の時に受けたテスト以降一回も勉強しないまま本番に臨みました。
元々怠惰な性格で、しかも勉強があまり好きではないのでゴリゴリ勉強していたというわけでもないのですが、効率の良い勉強していたおかげで目標としていた点数に届きました。
そして勉強から解放され、残るのは第一志望である国公立のみとなりました。
1、2月は受験生にとって最後の追い込みの時期。
画塾ではみんな一日中対策しまくるモードへ突入していました。
かくいう私はライブに行ったり少し友達と遊んだりしつつ、頑張って朝から起きて画塾に向かう生活をしていました。
(受験生が1月にライブ行くのは今考えるとだいぶヤバいですね。)
画塾にいる間はプレッシャーでめまいなどの不調がピークでした。
人生で初めてひっっくい音の耳鳴りを経験し、呑気に過ごしていても実は緊張してるんだなと感じました。
直前模試が画塾で行われるのですが、その模試の講評中、吐き気が止まらなくて人知れず離脱したり…
呑気に過ごしている自分とプレッシャーをめちゃくちゃ感じている自分が同時に存在していました。
そしていよいよ国公立の入試がはじまりました。
美大の入試は普通の筆記試験に比べると科目は少ないものの、一科目にかかる時間はめちゃくちゃ長いです。
デッサンで言うと最低でも3時間、長いところで2デイズで10時間程かける大学もあると聞いたことがあります。
(西日本は短め、東日本は長めの傾向があるように思います。)
試験時間が長い分めちゃくちゃ集中力が必要です。
対策でそれに慣れてる分共通テストが短く感じるのは美大受験生あるあるだと思います。
私は試験当日は緊張しないタイプなので、とにかくリラックスしながら試験を受けていました。
現役の時に休憩時間めちゃくちゃ暇だったことを踏まえて本を持って行って読んだり、机に突っ伏して仮眠したりしていました。
読書はともかく本番中眠くなってくるので仮眠するのは超重要だと思います。
当日の手応えというのはまったく分かりませんでした。
これも相対点の辛いところです。
あくまで他の人の作品と比較してみないと自分の点数は分からないので手応えというものが存在しません。
家に帰って自己採点!なんてこともできない+作品は回収されてしまうため、自分で作った作品の記憶がどんどん薄れていき、合格発表日までにどんどん自信がなくなっていき、もはや運なのでは?とか思い始めてしまいます。
試験が終わってから合格発表日まではとにかくダラダラしまくりました。
しかしソワソワしてしょうがないので高校の友達と遊んで気を紛らわりたりしていました。
そして迎えた合格発表当日。
私は家で1人で合格発表を見ることに。
サイトにアクセスが集中していて動きが遅いサイトを1つずつ進んで合格の受験番号が書かれたページを開きました。
なんと合格。私の番号が確かに載っていました。
最高に嬉しい気持ちを噛み締めたり、本当に自分の番号か何回も受験票と照らし合わせてみたりを小一時間反芻していました。
発表後からの三月はとにかく遊びまくり。
当時のカレンダーを見返してみるととにかく遊ぶ予定が乱立していました。
しかし、当時の実際の自分は合格して浮かれていたかというと違いました。
自分が合格したのはたまたまだったのではないだろうか?という気持ちになってくるのです。
自分だけではなく、これもまた美大受験生あるあるなんだと思います。
ただ「合格ですよー」と言われただけで、実際に自己採点して合格ラインを上回ってるのを確認した訳ではないので、全然実感が湧きませんでした。
点数開示が送られてきた5、6月くらいにようやく納得?できるようになった覚えがあります。
そういうわけで長かった受験生活が終わり、大学生活が始まることとなりました。
受験生活を通して分かったのは、私はとにかく「努力」ができない怠惰な人間だということ。
側から見れば努力していたように見えていたのかもしれないし、実際私は努力していたのかも知れません。
でも自分の努力を認めることがどうしてもできない。
自分が想像する「努力」のハードルが高すぎて、実際にしていた努力を努力とも感じていないというだけかもしれませんが、確かに他の人より授業に出た回数は少なかったし、甘い考えをしていたのは確かだと思います。
画塾の中でも、私よりも確実に実力があったのに不合格だった人も少なくありません。
その人と私の違いはただ運とタイミングだけだったと思います。
そういう感じで長かった美大受験を振り返ってみました。
つまり私が美大受験をする人に言いたいのは、
・画塾は大手を選べ
・辛かったら自分のペースで。意外と実力に差がつかない
・美大受験は運とタイミングがほとんど!
邪道な合格体験記ではありますが、誰かの参考になればいいなと思います。