ヴァンパンダ ―吸血大熊猫奇譚―
衝撃!奇跡の珍パンダ!悪戯の疑いも?
――あるニュースの見出し
その日、ジャイアントパンダは『白黒』ではなくなった。白黒に加え、紅。そんな新種の群れが中国の奥地で発見されたのだ。目や口には隈取りのように、背中や手足には内功の流れの如き紋様で紅色が確かにあった。
正式な新種認定を受けた翌月、世界周遊は始まった。若い紅流大熊猫、雄のホンホンと雌のフアフア。彼らは東洋神秘の体現として喝采を浴びた。一連のブーム、あるいは旅路そのものをシルクロードに擬え、世界は『レッドドラゴン・ロード』と持て囃した。
月の紅い晩。オーストリアで数人の少年少女が失血死した。紅パンダ公開会場で興奮のあまり卒倒し、一時的な貧血として入院。そのまま快方に向かうことはなかった。
訃報は二頭の紅パンダが脱走した数日後のことだった。捻じ曲がった檻。パンダに似合わぬ蝙蝠めいた巨翼の粗い映像。紅き龍の道の先端にはそれらだけが残されていた。
【続】
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