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ニューマンライツ、カメラ、アクション!

そして、雄大な地球を背負ったスタッフロールが終わった。「国際連環」「国際人類和平機構」の堂々たるロゴがスクリーン中央で止まる。

――止まって一分、何も起きなかった。

君の周囲が、演出でなく事故か、とざわついて数秒。背景の地球が高速逆回転を始めた。同じく昇りの数倍速で、スタッフロールも下へ流れていく。

「『和平伝』をご覧頂き、有難うございます」

逆流する名前たちを隠さぬよう、向かって右隅。三十歳前後、スーツの似合わない男が現れた。
エンドロールにはいなかったが、君は彼を知っている。映画特集で顔を見たことがある。

「ここまで観て頂いた皆様には、改めて言うまでもないでしょうが、人類は半世紀前までヒューマンだけでした。私自身実感はないんですが」

芝居がかった丁寧さで彼は語る。ぱきん、と指を鳴らすと、手元に指示棒が現れた。彼の"新能"だろう。

「ニューマン権利闘争のドキュメンタリー。監督の私が言うのもなんですが、いい映画です。アジヤとか、本人と対談して役作りしたんですよ」

キャスト一覧の「ガンジマ議長」を指す。指示棒の先が描く円がだんだん大きくなる。

「勘のいい人、映画慣れした人……あと時間系ニューマンなら気付いてると思いますが、今上映から60分、半分なんです」

くるり、指示棒全部を時計の針のように一回転させた。そうしてから、キャストの五番目を指す。

「ここからは」

朗らかな作り笑いは、一言を境に消えた。スーツの公に着られていた青年が、それを呑み込む私を顕わにした瞬間、逆廻しのテーマ曲も終わった。

「"本当の英雄"。まぁ、俺の叔父貴なんですけど」

視線は、君を突き刺している。

「彼の真実。国際連環が隠した『人類和平闘争』の真実をお送りします」

ぎんと煌めく眼は、ニューマン特有の異質とは違う、人類共通の怒りに燃えていた。

「ここから先は、ノンフィクション。ここから先が、本編です」

もう、君の周囲は静まりかえっていた。

【続く →Chapter1(6)】

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高梨蒼
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