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【映画感想文】『屍人荘の殺人』からメディアミックスやミステリを考えてみようの会【2019年12月】

いつもの茶番

映画なに見ようかな~観たいモノ多すぎるんだよね

(退勤、アンケート結果を確認)

ヘェ~やっぱりシティーハンターなんですね。金曜夜にシティーハンター!完璧!!それかシティーハンター→HUMAN LOST!

……オッ?今日は友人も映画行く気らしいぞ?

じゃいつもの廻しは諦めて……

屍人荘!!行くか!!

だって放っといてもシティーハンターと人間失格とルパンは見に行くもんね!!(本当に翌日一気に見た。なぜなら14日はTOHOシネマズデイだから)

本トの導入

はい、と言うわけで映画見てきました。屍人荘の殺人。ミステリ原作ですね。

僕は原作小説は読んでなくて、コミカライズを読んでるくらいの知り度です。

ミヨカワ先生の筆致が最高なんですよ~~
ST&RS-スターズ-って宇宙飛行士浪漫も最高なのでよんでね。

さらに!ヒロイン・剣崎比留子さんは浜辺美波さん。『HELLO WORLD』のヒロイン、一行瑠璃の声を当ててらした人。一行さんの演技が結構よかったから、期待しちゃうんですよね~

めちゃくちゃ熱を入れて感想記事を書いたりもした。こっちもヨロシクネ

ただ、映画予告とかポスターは大分独特っていうか…『しっとりホラー・サスペンス・ミステリ』だと思ってたものが映画だと『パニック・コメディ・ミステリ!』になっちゃってて…正直不安でした。

ただ、だからこそ『メディアミックスによる作品の変化』を考えるのも面白いかな、と。
僕自身、そういうメディアミックスや国際翻訳・翻案による作品変化を専攻していたので、「実写映画だからやめる」は自分の『学』に対して不誠実なんですよ!わかるか!

期待と不安と怖い物見たさ、で友人を道連れに行ってみよう!
というのが今回の顛末でした。

今回の感想文はネタバレありですが、ネタバレがそんなに致命的な作品ではないので観賞前に読んでも大丈夫です

いいところ

明智さんが濃い!
変人ヘッポコ探偵が格好いいのは大事だよね…『自信家の変人』は僕もかつて演じた経験から思うところがあり、あぁプロの演技って凄いなと思った。
「明智です」

比留子さん可愛い!!
最高。最高!カワイイネェ…
可愛いし、探偵役としての意志と癖の強さが滲んでいて良い。マイペースな狂人は(明智さんもだけど)探偵役=物語の核としての必要な資質なんだけど、それが全身全霊一挙手一投足から滲むのは素晴らしい。
比留子に始まり比留子に終わる、に相応しい存在感だった。「欲しい物の為ならなんでも画策する」強さ、好きだなぁ。最後のフレーズが最高。
HELLO WORLDが好きな人は見よう!屍人荘!
「取引をしよう」

※15日追記※
比留子さん、やたらめったら相撲をモチーフにした動き(塵手水も雲竜型土俵入り、絶対「役者を目当てに来る若い客」に伝わらねーぞ…)で目を引きつつ、人のしがらみ(今回で言うとフェス研を巡る憎悪)に絡めとられず、「神=すべてを知るもの=探偵の視点」として間違わないことを表明している。傲慢だな~!そこもいい!
…って思ってたんだけど、そもそも、「ヒルコ」って日本神話における最初の神だわ。しかも「不具の神」、不完全な探偵だから「葉村くん」を求めたんだな。
で、その不完全性や不安定性、蛭子神としての特性を押し出すためのキーが「相撲」…?
わかるかこンななぞかけ!!

癖の強い味
ハッキリ言って好みの分かれる部分ではある…けど「ミステリと無茶無法とエンタメ・コメディのごった煮」は面白い味だった。
あとこの中の誰かが犯人の「クローズドサークル」に「この中に誰も犯人は居得ない」って状況を被せるのは面白かったネ。

悪人に因果応報。
きもちがいいね。

最後の解決が気持ちいい
最後の解決が推理的にもメンタル的にも一気に結び目を解いてくれて「アーーーー」ってなる。勿論事前の手掛かり提示も出来てるからきもちがいいね。

オヤァ…?ってなったところ

テンポがなぁ…
そんなに良くなかった。ギャグの掛け合いコメディのリズム、って短期的な意味ではかなり優秀なんだけど、「物語全体」の大局的な意味では軋みがある。
緩急が悪い意味で付いてる…

それ、いる?
サスペンス、ミステリ、「サークルの過去を巡る謎」、そういう部分において不要なノイズが入りまくり。
いやまぁ「異質」を入れるからにはそうなるのも自然なんだけど…いや……そのオッサンとオバサンいらんだろ!
ノイズにも必要なノイズと不要なノイズがある!

葉村くんがなさけない
ワトソン役葉村くん、漫画に比べてなんと情けないこと。
もうちょっとさぁ……

ギャグ過多演出過多
ノイズにも略!

この映画の楽しみ方―ファンタジーとロジックの融合について―

というわけで総括ですが、この映画は「純粋なミステリ」としては半失敗であり、「ミステリ・コメディ」としては優秀で、「ファンタジーにおける推理」としては成功です。

「ミステリ」や「ロジカル」においては現実が尊ばれます。
現実的に不可能ならばその可能性は否定する、証拠がなければなんだろうと妄言。大事な考え方ですね。

そこに於いて「現実的な常識が壊れた場面において、人間はどれだけロジカルで/現実的に/論理的にいられるか」を描く「ファンタジーミステリ」という切り口。それを汲んだ作品でした。

原作小説はしらないけど、漫画はミステリを強調し、映画はファンタジーを強調した感じかなぁ。

ファンタジー×ミステリでオススメなのは以下!

スパイラル(たとえば神と悪魔がいるとして、その盤面を崩すには?)

折れた竜骨(暗殺者が魔術師。壁抜け、海渡り、その他何でも出来るとして、その上で『たった一人の犯人』を論理で見つけることは出来る?)

天賀井さんは案外ふつう(土地神、異世界人を前提にする街と、それに絡む殺人)

魔人探偵脳噛ネウロ(人間を超越した『何か』による犯罪を暴くことはできるか?)

アイリスゼロ(子供全員が何らかの『異能の瞳』を持つ時代、誰が何を見て、どう思いそれをした?)

亜人ちゃんは語りたい(亜人、妖怪とさえ呼ばれる特質を持つ人間たちは『何』を抱えるか。そしてその――本人たちもしらない――本質は何か?)

こういう『異質混ぜミステリ』を読んでおいたから、割と「異常事態ありきの推理」や殺しを暴いていくことに違和感がなかったかな。
一緒に行った友人は全然飲み込めてなかった様子なので、この辺は慣れがいる部分だと思う。受容体の有無と言い換えてもいいかな…

果たして、
人の論理は、
人の理外の状況で立つことはできるか。

メディアミックスについて

とにかくコメディ強くなったな…としみじみ。

毎週(隔週)で客をじっくりもてなせるコミカライズと、二時間一発勝負で客をぶっ飛ばす映画のスタイルの違い

映画、大画面大音響というのが映画の何よりの特別故に、静かな節回しよりもコメディ性を強調する方が「強い」んだよね。

この話はそもそも「ミステリ」と「ファンタジー」の両面を持つ。漫画は前者を、映画は後者を優先した――ということだ。

甲乙けつるのは難しいし、癖も強いけど、この強さを否定は出来ないんだよな…

嫌じゃないけどアニメの方がもっと好き!が正直なところですわよ。

というわけで。

好き嫌いは出る作品です!
コメディ性を受け入れて割り切らないとしんどい部分はある!
でも確かに面白いし、「人間のロジック」「欲しい物を奪うエゴの強さ醜さ」を描写した出来は十二分!

屍人荘の殺人、見よう!!責任はもたない!

いずれ「魔法や異能が日常の世界のミステリ」やってみたいですね…

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