記憶
小学生の頃、僕の住む家の近くにパン工場があった。風向きによっては、焼きたてのパンのにおいが家の中までやってきて、なんとも言えない幸せな気分になったものだ。
今でも香ばしいパンの匂いを嗅ぐたびに、あの頃住んでいた家を思い出す。その頃、必死で集めていたビックリマンシールを思い出す。遅くまで遊びすぎて家を閉め出されたことを思い出す。兄の部屋でこっそり聞いたBOØWYを思い出す。匂いが脳を刺激して温かい記憶を呼び覚ます。
あの工場はもうなくなり、今は大きな看板の紳士服店が建っている。工場も匂いもなくっなったが記憶は確かに僕の中にある。