揺れる
1月28日、Zepp新宿にてIvy to Fraudulent Gameのツアーファイナルを見た。期末試験直前でまったく行っている場合ではなかったのだが、最善を尽くして行くことにした。
開場まで立って勉強をしていたら自分より200番もあとの整理番号が呼ばれていた。フロアの雰囲気も変わっているし、周りの人の香水の匂いにくらくらして泣きたくなった。
それでものぶさんの「Ivy to Fraudulent Gameですよろしく!」で一気に引き込まれた。気づいたら満面の笑みで拳をあげていた。
ノリの良さが以前より増していて、みんな元気そうだなとすこし寂しくなった。けれどのぶさんが「腕あげるとか歌うとか、やりたい人はやって!やりたくなければやらなくていいよ!」と言ってくれた。(ああこの人はそういう人だったよな)とすぐに安心した。
「俺らのファン、元気な人もいるけど元気ない奴もいる」と溢してくれたときも心臓がぎゅっとなった。元気な人が増えているフロアの中に小さく佇む“元気ない奴”をちゃんと見てくれているのだと思った。
やっぱり大きい会場に行くと(この人なんで同じバンド好きなんだろう?)と思うくらい明るい人、予定調和の手拍子をする人、群れている人、優しくない人を見る確率が単純に上がってしまう。だからフロアでの孤独感は否めないけれど、のぶさんが絶対に独りにしないでくれる。
Ivyのライブに行って置いていかれたことがない。どんなに人が多くても、ステージに近くなくても、私の歌を歌ってくれる。
Ivyは夢の中に現実を見せるバンドだと思っている。私は生活を歌うバンド(時速)や生きることを歌うバンド(CRYAMY)が好きだ。ほかの好きな音楽もこの2つの範囲にあることが多い。でもIvyは生活や生に加えて夢っぽさがあるところが特徴だと感じている。
のぶさんが「大人になると楽しいことが少なくなる。大人になるって感受性が強くなるってこと。」と言っていた。この言葉を聞いて夢の中に現実を突きつけてくれるところが好きだと再確認した。
感受性が強いことは自分の首を絞めることも多いし、気づかない人が甘い蜜を吸うように思える社会でもある。それでも感受性を鋭く持つことは大人として正しいと言われたようで、胸を張れた。
「運が悪い。ライブをすればこんなことができるって思えるのに、普段は人を羨んで指咥えて見てる。でも今日メンバーに支えられてみんなの視線の中で運がいいかもって思える。大丈夫だよ、根拠なんかないけど大丈夫って言える。」
散々楽しませたあとにこの言葉を発するのぶさんをとてもかっこいいと思った。おちゃらけているのに底に苦しみを抱えている人はどうしても綺麗に見えてしまう。
のぶさんはちょけることで受け手が優しさを受け取りやすい構造を細かく細かく作っている。余裕な顔してかなりいっぱいいっぱいで暗い人なのだと改めて気づいてしまって困惑した。あまりにも好きで。
何度好きな音楽家や作家、友達に引き上げてもらっても結局落ち込んでしまう自分が不甲斐なくて仕方ないが、のぶさんも似たもどかしさを感じているのだと驚いた。そういう人に言われる大丈夫は、根拠がなくても信じられる。
よかった言葉集
「心が折れそうになったとき、俺ら見て。今うまくいかなくても、明日は、明日がダメでもいつか、笑えるときがくるって思ってもらえたらいいな。俺、みんなに支えられてステージの真ん中で歌ってるから。」
希望を見せてくれてありがとう。今がつらいことそのまま受け止めてくれてありがとう。
「怒り、ちゃんと持ってきた?怒りも苦しみも全部俺が歌う!大丈夫だよ。」
いつものぶさんが言ってくれること。きらきらしたステージを見せても曲調が明るくなっても、ずっとIvyの根底にある鬱憤が大好きだ。
「syrup16gが好きだけど大嫌いな歌もある。そういうもんでしょ。」
のぶさんsyrup16g好きなの!?やっぱりあなた暗いわね!?と大興奮してしまった。
泪に唄えば、革命、Memento Moriが本当によかった。
革命やMemento Moriを聴いて大泣きしていたころを思い出した。その頃の悩みが解決したかと言うとそれは違うけれど、その死にたい夜は超えられたんだよなぁ。
また新しい悩みが生まれるし死にたいとは思うし日々は楽しくないけれど、今日みたいな日は生きていてよかったと思えるわけで、今日みたいな日に救われる。
「生きる意味なんかない!音楽は人を救わない!1人じゃないって言うけど1人のときはある!でも音楽に力があると思う!それは音楽で自分を救ってあげられてるあなたの力だ!」
これをMCで言えるバンドがどれだけ居ますか?どうしてこんなに私たちの力を大事にしてくれるんだろう。
この言葉に心を動かされたし理解はできるけれど、音楽は人を救わない、ことはない。自分を救える瞬間をもたらしてくれる源は音楽だよ。
のぶさんが「あなたの心に触れにきた」と言っていた通り、今日ものぶさんと心を共有しているようなライブだった。本当に行っている場合じゃなかったけれど、行ってよかった!
正直この前に行った仲川さんが良すぎて仲川さん以外を見たい気持ちがなかったが、悔しいくらいよかった。汚い街に美しいIvyがいた。
ドライヤー嫌いだけれどIvyのことを考えていたら乾いてにっこりした。余韻のままに眠りにつく。