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デイリーライフ3/3話~お姉さんの過去と私たちの日々編~

「お前は強いから大丈夫だろ」

私には2年間付き合った彼氏がいた。
同棲、、、まではしていなかったが、お互いの家を行き来し、ご飯を作ったりしていた。お互い仕事をしており、時間がすれ違うこともあったが、まぁまぁうまくいっていると思っていた。


あの時までは______________。


『ただいま』


彼の家に帰ると、何かおかしい。見覚えのないかわいらしいサンダルがある。1Kのアパートの短い廊下を進み、ドアをそっと開ける。


彼氏と知らない女が抱き合っていた。
浮気されていたことより、二人の会話が、私の心を抉った。


「彼女とまだ付き合ってるの?」

「まぁ、飯作ってくれるし、金かからないし、惜しいっちゃぁ惜しいんだよな。でも、女としての魅力っていうか、感情はないんだよな。腹立つけど、俺より稼いでるし、わがまま言わないし、便利だから付き合ってるだけ。」


あぁ、またか。2年間という時間を過ごしても、この程度の感情なんだ。彼に対する怒りより、自分に対する失望の方が強かった。今度こそ、ちゃんとした恋愛ができているって思っていたから。



思いたかったから________________。



『さようなら。お元気で』



ひとことメッセージを送り、連絡先を削除した。



2年付き合った彼氏があんなやつだったなんてさすがにショックだったけど、特に日常は変わらなかった。


それから数か月したころだった。
あの子を、拾ったのは__________。


雨が降る、真っ暗な帰り道。見るからに訳ありの、小さな子。息はしているようだけれど、目の前に立っても、触っても、反応がない。文字通り「死んでしまいそう」だった。



『未成年誘拐』 



そんな単語がよぎったが、どうでもよかった。目の前にいるこのか細い存在を、ただただ温めたい。その一心だけで、私は彼女を背負い、家路についた。



私はこの行為を、一生後悔しない_________。





********************************

ただいま。

ドアを開けると、あの子が駆け寄るってくる。

「おねえさん、、、おかえりなさい!!!!」

抱きしめると、確かなぬくもりを感じる。
灯りが灯る部屋、暖かい空気、帰宅を待ち望んでくれる存在。幸せが溢れる。

さて、ごはんをつくろうか
                                                                                       
名残惜しみながらも彼女を解放し、部屋に入る。ちょこちょことついてくるのが、本当にかわいらしい。

部屋に入ると、驚いた。きれいに掃除機がかけられ、キッチンのシンクもきれいになっている。彼女の手前、しっかりしていたいと思い散らかさないようにしていたが、なかなか掃除は行き届いていなかった。

「えへへ。お姉さんお仕事頑張ってくれてるから、私にできること、なにかないかなっておもって、、、」

ぎゅーーーーーーーーーっ

思わず抱きしめる。なんて健気なんだろう。

「おねえさん、おねえさん、、、」

頬を赤らめながらこちらを見上げると耳元で囁いてきた。


「ご飯食べたら、、、お背中流しますね、、、?」


愛し、愛されること

尽くし、報われる喜び

生きる価値と、意味

諦めた者同士の、不器用で温かい日々。


いつまでも続きますように___________。




____ Fin _____


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