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デイリーライフ2/3話~少女の過去とお姉さんとの出会い編~
雨が降る、真っ暗な夜、私はぜんぶ諦めていました。
夜の秋雨が肌に突き刺さり、冷たいを通りこして痛かったことを覚えています。
でも、いっそこのまま凍死でもしないかな、なんて思っていました。
自分で死ぬような気力も体力もなくて、ただ、このまま消えたい______
そう願っていました。
私の母は、異性にとてもだらしない人でした。私はいつも、邪魔をしないように、息を殺しながら生きていました。でも、私が成長するにつれ、母の交際相手の目つきが変わってきました。ある日、とうとう母の交際相手に襲われ、不運にも、それを母に見られてしまいました。その男は私が誘ったと嘘をつき、母は怒り狂い、私に当たり散らしました。それから私は、それまで以上にただ無になり、時間が過ぎるのを待つ毎日々を送りました。
ある日、私は母に捨てられました。
家に帰ると「何もなくなっていた」のです。
私は、すべてを理解しました。
私は、誰かに助けを求めようとはしませんでした。
生きていたくないと思うのに、自ら終わらせる行為もできませんでした。
そんな気力すら、なかったのです。
どこで間違えたんだろう。
何が悪かったんだろう。
どうすればよかったんだろう。
どうして生まれたのかな。
消えることを夢見て、何も食べずに人目を避けながら時間を消化する日々。
あぁ、この冷たい雨の中なら、そろそろ終われるかな。
もうなにも考えたくない___________。
そんなとき、私はお姉さんに拾われました。
お姉さんは、自分が濡れることも厭(いと)わず、お姉さんは私を背負い、家につれていきました。
ごめんなさい、ごめんなさい。
お姉さんの背中の温かさを感じながら、私は心の中で謝り続けました。
お姉さんは私を家に連れ帰ると、お風呂に入れてくれました。
割れ物を扱うように、丁寧に扱ってくれるのが伝わってきました。
お姉さんは、薄汚れた私を、きれいにきれいにしてくれました。
それでも、感情の出し方や感謝の表現の仕方をわすれてしまった私は、なにも伝えることができませんでした。
お風呂を上がると、お姉さんはココアをくれ、ドライヤーで髪を乾かしてくれました。母に捨てられてから何も食べていなかったので、温かいココアが、胃に心に染みました。
「おいしい、、、」おもわず声がでていました。
お姉さんは、ずっと穏やかな顔で、私の髪を整え、ふわふわのパジャマを着せてくれました。
私を見て、お姉さんがひとこと
『かわいい』
と言ってくれました。
お姉さんは何者なの?天使?ここは天国なの?私、死んじゃったのかな?
なんて、ぼんやりと考えていたら、
『わたし晩御飯作るけど、お腹すいてる?ご飯食べれそう?』
そう聞いてくれました。
ココアで空っぽの胃が温められたせいか、ずっとなかった食欲を感じました。
あのココアが無かったら、きっとご飯食べれなかったと思う。
すごいなぁ。もしかしてそこまで考えてくれてたのかな?
「あ、、、、いいんです、、、か、、、?」絞り出すように話すと
『いいから聞いてるんだよ』とお姉さんは笑いながら返事してくれました。
お姉さんの声、料理する音、もこもこのパジャマ、温かいお部屋、すべてが心地よくて幸せでした。
『はい。卵雑炊。熱いから気をつけな?』
すごくいい匂い。雑炊をレンゲですくい、ふーっと息をかけ、おそるおそる口に運びました。ほんとにおいしくて、おいしくて、涙が出そうでした。
長い間何も食べていなかったのと、無くなってしまうのがもったいないのとで、すごく長いごはんになりました。でも、お姉さんは急かすことなく、おいしいお茶を入れてくれました。お茶といったら緑茶か麦茶しか知らなかったけど、香ばしい香りのするお茶に、お姉さんのやさしさを感じました。
お姉さんは新品の歯ブラシまで用意してくれ、一緒に歯磨きをしました。ベッドに入ると、おねえさんは私を抱きしめて、頭を撫でてくれました。
初めて会った私に、何も聞かず、なんでここまでするの?
もう全部諦めたはずだったのに、、、、
「……っく、、、ひっく…うわぁぁぁぁぁぁぁ」
自分にまだ感情があったことに驚きました。
人生でこんなに泣いたことあったかな。
お姉さんは、私が泣きつかれて眠るまで、ずっと抱きしめて、頭を撫でてくれました。
この日から、私はお姉さんと一緒の生活が始まりました。