見出し画像

彼女によって温められていた私の○○

仕事関係のとある飲み会も、無事終わった。私は幹事だったので、少し肩の荷が降りた感じだ。仕事をしている中でのこのような役回りというのは、意外に負担になったりするものだが、実は、幹事とはいえ、私一人ではなく、我が部署の中からチームごとに合計4名選ばれていた。それだけでなく、幸か不幸か、その中に私のお気に入りの彼女もいたりするのだ!

私以外は、みな私よりも若いということもあり、準備段階でも、いろいろと世代の違いを思い知らされていたが、そんな違いが面白かったり、もっと彼女のことを知りたいとか思ったり、いや、これ以上深みにハマってはまずいのではないか? などという葛藤もあったりして……いずれにしても、そういう状況を楽しんだりもしていた。

そして、幹事4人で、
「やっと終わったね。」
ということで、最後に会場をあとにしようとしたときだった。ハンガーラックにかけていた私の上着が……ない? 誰かが間違えて着て帰った? いや、今どきそんなミスもないだろう。

私のカバンは……? ある。ちょうど、幹事のひとりが、私のところに持って来てこようとしている。早く店を出られるよう、気を利かせてくれているのだ。ということは、私の上着も誰かが持ってきてくれているのか? 持っているのは、誰か? もしかして、そのお気に入りの彼女か? いや、彼女は持ってない。

……? いや、待て。ていうか、彼女がそれを着ていないか??

彼女は、私が上着をキョロキョロ探しているのをずっと見ていたようで、彼女と目が合うと、それと同時に、彼女のほころんだ笑顔が目に入る。いや、特段、特別な意図があったわけでもないことは充分に分かっている。実際、それまでの流れでも、ちょっとした嫌がらせが頻発していて、例えば、イベントの景品コーナーに幹事のカバンが置かれていたり、司会の私が喋るマイクが……事前に高さ調整などもしていたのに……極端に下向きにされていたり。

なので、そんな流れで、誰かにそそのかされて、彼女が私の上着を着ただけだろうとは思う。人畜無害な私のキャラから、この程度のことなら許されると思ったのだろう。ただ、これは、今までの数々のささいな嫌がらせの中でも、ダントツに嫌がらせになっていない(笑)。

彼女は、照れたような笑顔で、
「え? これは、私のですよ(笑)?」
といい続け、最後まで私に返そうとしなかったのだが、小柄な私の上着がぴったりフィットし、確かに、何の違和感も感じられなかった。今思うと、本当にそのまま着て帰ってもらってもよかったのだが――私も、もっと女性慣れしていれば、そんな冗談も言えたのだろう……。

いずれにしても、彼女によって温められた上着を着て、会場をあとにする。なんだか、彼女に包まれているような気分を味わいながら、家路を急ぐ。全く悪い気はしない……。

【関連記事】


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?