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20歳を迎える前に。‐2‐



高校受験受験と集団塾

中学校は地域でも有数のマンモス校。
200人を超えるだけの人が一学年に存在した。

部活は、小学生のときにやっていた野球を何も考えず継続することにした。

しかし、週6は部活に時間を取られ、放課後は部活で、休日は練習or試合。ヘトヘトになって家に帰れば、勉強する余力は残っていない。

なんとなくで満点が取れて当たり前の小学校とは違う中学校という小さな小さな世界は私にとっては宇宙のように広かった。

塾に入るまでは完全独学、というよりテスト期間は便利なもので休みが増えて疲れる部活もない。

テストの危機感も持ち合わせていないから勉強も特にせず、かといって親もテスト期間だと知っているから迂闊に外に出て行けることもなく、ただただ自分の部屋でスマホと向き合い、ゲームの点数とランクをひたすら上げ続けていた。(内申点が受験に響くと知るまでは)

中2になり、テストの準備不足と点数が低い現実から目を背けるのも限界を感じ、友達の紹介で集団塾のテスト対策授業に行ってみることにした。

授業が始まるとともに大声で入ってくる講師。
驚きのあまり座っている椅子から転げ落ちるところだった。
呆気に取られながら授業終了。面白さがあって楽しく受けていただけなのに、内容はしっかり理解できたような気がした。

この塾に入ることを決意した。

さっきまで同じ学校にいてにこやかにしていた人が塾では勉強に集中にしているギャップから始まり、塾生全員が勉強しようという雰囲気が漂いまくっている集団塾でたくさんの刺激を受け、人が限界迎えるとどうなるかを目にしてきた。これは今でもその経験が活かされている。

学校では味わえなかった勉強第一、得点こそ正義、模試の結果で一喜一憂。

頭も要領も悪かった私は、部活最後の大会に敗退するとすぐに勉強モードに切り替え、家ではご飯を食べるか寝るか、それ以外の時間は塾に向かい、授業と自習をひたすら繰り返した。
1番最初に塾に行って1番最後に帰ることもしばしばあった。だって、積み重ねる以外に方法はなかったから。

のんきにおしゃべりする時間さえ惜しい。勉強だけ考えていればいい。集中してるときは会話も耳に入れたくない。

ただおしゃべりだけして塾を後にするファッション受験生とは交われないなと気づいたときにはコミュニケーションの取り方を忘れていて、勉強することだけを目的としたロボットのような生活をしていた。

聞き取れないほどの低い声に声変わりしていたことに気づくのは受験後のことだった。


自分自身を知り始めた


自習室は空き教室を数人で利用する形式。
些細な物音、ドアの開閉音、冊子をめくる音さえも毎回気になってしまう。

ストレスはもちろんものだけではなかった。
集団塾は多くの生徒が在籍していて、記念受験をする気なのか?というぐらい勉強をやる気なさそうに受ける人もいたのも事実。
というか学校の延長線上にあって授業前後はくだらない話で教室をうるさく保つとんでもない人がいた。

塾に通いながら、無闇に勉強しているうちに強くなってきた想いはこれ。

やりづらいな、イライラする。早く受験終わらないかな。

もうこれに尽きた。心身共に限界を迎えそうになっていたのは私自身だった。

受験直前はもうまともに勉強したような気はしないし、高校を争う前に自分を守るか壊すかを争っていたようなもので、
ラストスパートどころかラストで失速した。

共通試験を終えたタイミングで燃焼し尽くしていた。試験結果、合否の心配も脳の片隅に追いやっていた。遊ぶよりも休みたい。満足するまで寝たい。即実行した。ああ、私はやっと解放されたんだ。

ラストで失速したこともあり、結局第一志望校からは不合格の紙切れを渡された。

中学生活の半分を占めた集団塾という名の社会の縮図。
厳しい世界、社会では上手く生きていける人間ではないんだと察する最初のきっかけとなり、色々な面から落ち込む結果となった私は、併願で受けた私立高校へと入学したのだった。

辛い思い出しかなかった塾の生活でも、私を最後まで見届けると言って、ずっと向き合ってくれた講師は、間違いなく恩師だと一方的に思っている。勉強ロボットは感情を取り戻した。

時系列順に書き連ねた塾の話を見返すと、良いことは少しずつ成績が良くなったぐらいで、勉強だけを磨くために多くのことを犠牲にしたことがわかる。

私の戻りたくない過去、黒歴史、反面教師は中学時代に8割ぐらい詰め込まれている。

そのおかげなのか(?)人を見る目、些細なことでも気づける力は人一倍あると自信を持って言えるし、追い込まれないように早々に逃げ道を確保しておくようになった。


小さなことで感動できると経験則から学んだ私は、20歳になって何に心を動かされ、何をしでかすのか、楽しみで仕方がない。

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