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ステップ 〜乗り越えない、一緒にいるということ〜



時代の進行にはついていきたくない


また時代の進化の代償で、偉大で、たくさんの人の心に残る、素敵な演技ができる俳優が亡くなってしまいました。お悔やみ申し上げます。

休日だったので、家でテレビを流し見しながら、スマホを触っていたのですが、突然の訃報に驚き、茫然とし、心がぎゅっと苦しくなって、SNSを見るほどの心の余裕も無くなっていました。ただその場で座り尽くす事しかできませんでした。
私はこの手のニュースへの耐性がなく、自分があまり知らない人の場合でも強く心が痛みます。


余計な情報を入れるのはやめて、とにかく気分転換がしたくて、散歩しようと思いました。これが午後4時頃のことです。

でも、どうせ散歩をしても、頭の中の事実は変わらない、今日はずっと脳内を支配することは火を見るより明らかでした。

とにかく、温かい気持ちに触れたい、ただではこの悲しみを終わらせたくないと思いながら、私は近所の映画館の上映スケジュールを見ていました。

このご時世、落ち着いてはいませんが、経済活動が再開し始めたことで、着々と新作映画が公開されるようになっていました。今年初めからこまめに新作映画を探していたので、気になる作品はある程度マークしているのですが、そのうちの1つがちょうど、もう、運命的と言いたいくらい、ぴったり、見たいと前々からワクワクしていた作品が公開されたばかりでした。

それが、「ステップ」でした。



すぐ席の予約を取り、思いついてから2時間後には映画館に到着しました。


私の心を照らした、「ステップ」


ストーリー

一人の娘に恵まれた、幸せに溢れていた家庭に突如不幸が押し寄せ、妻が亡くなってしまう。親族の協力もありながら、シングルファーザーとして、1歳半の娘を男手一つで育てることになった。
母がいないことで幾度となく障害物が現れる娘と、どうもしてやれず、うまくいかないことばかりの父一人が、仕事と育児を両立できるのかと悩みながら、日々奮闘していく。
ゆっくり成長していく父とどんどん成長していく娘とずっと見守ってくれて、味方でいてくれる家族、どの立場も、悩みを抱えながら愛で次々と困難を対処する。


シングルファーザーという、予想外の連続の境遇を、支え続けてくれていたのは親戚、職場の人で、この協力が娘と父を成長させていった。
小学生になった娘が我慢と気遣い、そして反抗を覚え始めるごとに悩む父。妻だったらどうしていたかを考えてしまう。そんな時に相談できる相手と出会う。

関わっていく人からかけられる言葉に救われ、時には現実を突きつけられ、それでも向き合うしかない。葛藤の連続。
変わることに抗えない父とゆっくり、一緒に成長できる作品。


鑑賞後の感想を


あぁ、本当に見たいと思い立った時にすぐ見に行って良かった。これに限ります。

主演の山田孝之さんと、義父役の國村隼さんの熱演が圧巻でした。基本的にBGMは多用されていなかったので、雰囲気での誤魔化しもなく、演技とセリフとストーリーへの力の入り具合が見ている側にもひしひしと伝わってきました。

何度も出てくる描写は、成長していくごとに少しずつ変わって、確かな変化に子どもの成長に擬えられています。変わっていくものが多いのは、「同じ」ものがあるからこそである、それを暗に表現しているように私は捉えました。

家族愛が表面上ではずっと繰り広げられていますが、この愛はもっと大きな括りでも共通するもので、やさしさ、誰かに寄り添う、見守ってあげる、、、
きっと形が違っても、相手にプラスになってほしい、笑顔でいてほしい、幸せでいてほしいなど、そんな願いが根本にあるのは家族だけではないでしょう。

ちなみにタイトルの「ステップ」、これが気持ち良く腑に落ちる瞬間はぜひ作品をご覧になって体感してほしいです。

この作品の良さはセリフにギュギュギュッと詰まっています。ネタバレは避けますが、私はこの作品を見たことはきっと人生単位で貴重な経験だと自信を持って言えます。少なくとも、辛いことと向き合えるだけの余裕は少し生まれました。

幸せな気持ちで溢れる中でのエンドロールで流れてきたのが主題歌である秦基博さんの「在る」という楽曲、これがストーリーときれいにマッチし、歌詞が自然と入っていくのがわかりました。Music Videoも「ステップ」に沿って作られています。家に帰ってからこのMusic Videoを見て私はまた涙を流しました。


とにかく、ここまで温かい気持ちを残してくれる作品は、今見に行ったからこそ、一際素敵なものだと感じました。一度ではなく、何度も見返したくなると思います。私はこの映画をすぐに家族にオススメしました。


心も荒がちな大変な時期ですが、心の拠り所、気が落ち着くものを近くに置いて、いざとなったら逃げるという大事な選択肢を忘れずに、いっぱいご自愛ください。

マスク越しではなく、直接笑顔を振りまける日を心から待ち望んでいます。


ここまでご覧いただきありがとうございました。






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