ジンジャーハイボールに稲妻
「酔っ払うと僕は幽体離脱して、脳みそを宇宙に置いてくる。そこから言葉を受信するんだ」
柊木くんは言った。
「わたしもそういう時あるよ。わたしは脳みそを海の底に沈ませる」
しまった、と思った。
油断して自分の秘密をぽろっと出してしまった。
ここでわたしが伏せた目の焦点を彼の瞳に持って行き、無理やり微笑んで見せれば、それだけでわたしたちはこれからお互いをずるずる引きずっていくのだろう。頻繁に会わなくとも、季節が街のにおいを変えるたびにどこかでそっと生活するお互いに思いを馳せるだろう。
ふたりの密度が無限になる瞬間、イナズマのようなものが神経の内側を図々しく走る。
もう飲み終えてしまったジンジャーハイボール、多過ぎる氷、ジョッキから滴る水滴、どうしよう。
こんな数秒の出来事がわたしたちをしぶとく呪っていくこと、彼も理解しているとしたら、どうしよう。
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