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【コラム】バレーボールにおけるフルセットマッチの勝敗と獲得セットの関係

こんにちは。ray-manと申します。

今回は「バレーボールの流れの可視化」に挑戦しました。短い文章ですが、お付き合いいただけますと幸いです。

はじめに

バレーボールには「流れ」が存在するとよく言われます。競技経験者の中には、

「フルセットマッチは最終セット直前のセットを取ったチームが有利」

といった言説を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。

この言説の背景には、「最終セット直前のセットを取ったチームは勢い=流れを持っており、その勢いのままに勝ち切れる」といった根拠(?)があるものとされます。

しかし、この説は本当に正しいのでしょうか?

そこで今回は、「流れの可視化」の足掛かりとして、フルセットマッチの勝敗と獲得セットの関係について、実際のデータを用いて検証したいと思います。


分析対象

イタリア男子1部リーグの、2010/2011シーズンから2021/2022シーズンにおける、全フルセットマッチを対象としました。

データはStudent_analysis 様の公開データを用いました。


結果

まずは、フルセットマッチに勝利したチーム第4セットを獲得した割合を、シーズンごとに見ていきます。もし、最終セット直前のセットを取ったチームが有利なのであれば、勝利チームが第4セットを獲得した割合は0.5を大きく超えるはずです。

しかし、実際は、シーズンによっては0.5を下回ることも多く、第4セットを取ったチームが必ずしも有利とはいえない結果となりました。

(なお、この12シーズンの平均±標準偏差は0.477±0.0836、帰無仮説の母平均0.5に対する1標本t検定のp-valueは0.362、95%信頼区間は[0.424, 0.530]でした。)

次に、話を少し拡張し、フルセットマッチ勝利チームの獲得セットの組み合わせに、共通のパターンが隠れていないか探りました。

横軸は勝利チームが獲得したセットの組み合わせ。横棒は平均。破線はy=1/6。

シーズンごとのフルセットマッチ勝利チームが、1-4セット目をどのような組み合わせで獲得していたか、その割合を調べました。第1-4セット獲得の組み合わせは全部で6通りあるので、セット獲得に共通の傾向があるならば、1/6 ≒ 0.167を大きく上回る/下回る組み合わせが出現するはずです。

しかし、結果は、シーズンごとにばらつきがあるものの、平均すればどのセットの組み合わせも1/6を大きく外れることはありませんでした。

以上の結果から、フルセットマッチにおいて、獲得セットの組み合わせと勝敗には関係がない可能性が高いことが推測されました。


まとめ

今回の検証の結果、近年の男子トップカテゴリには、「フルセットマッチは最終セット直前のセットを取ったチームが有利」という説が当てはまらないことがわかりました。

男子トップカテゴリは相当な鍛錬を積んだ猛者の集まりであり、メンタルコントロールも一流だと推測されます。そのため、「勢い」だけで勝てるほど甘くはない場所だと思われます。

逆に言えば、「勢い」で簡単に流れが変わるのは、メンタルコントロールが不十分なカテゴリ特有の現象なのかもしれません。

以上を踏まえると、「バレーボールの流れを可視化」するためには、トップカテゴリだけではなく、上から下まで、様々なカテゴリを横断的に分析する必要があるのではないかと考えられます。

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