文化の盗用ってなに?アリアナ・グランデはなぜ炎上したの?
超有名なアメリカの歌手アリアナ・グランデ(Ariana Grande)さん。
彼女が炎上しておる。
新曲「7 rings」にちなんで手に「七輪」とタトゥーをしてしまったと。
日本語間違ってるやーん!!って話かと思ったら、それだけじゃなかった。
(↑新曲"7 rings"のMV)
そもそも、それだけじゃ炎上はせんわな。
というわけで、
なんで炎上したん?と思って調べてみたの。
そしたら、これはかなり複雑なお話だったわけ。
正直、自分みたいな生まれてからずっと日本に住んでる人からすると、
正直なんで炎上したのかわかりにくい。
だから自分なりに解説してみようと思う。
以下今回の目次ね。長いからさ。
1)なにが起こったのか
2)文化の盗用(Cultural Appropriation)ってなに?
3)文化の盗用(Cultural Appropriation)はなにが問題なのよ?
4)でもそれじゃあ文化は発展しない
5)しかしどうしても残る1つの疑問
6)日本人としてできること
7)最後にちょっとだけ個人的な意見を
8)最後に
1)なにが起こったのか
さっき書いたように、新曲「7 rings」にちなんで「七輪」とタトゥーしてしまったアリアナさん。
もともと日本大好きって公言してまして、日本語も勉強中のアリアナさんでしたが、
まぁ日本語的にはおかしい。
「アリアナ!それは焼き肉焼くやつだよ!笑」みたいなツッコミが当然入ります。
んでアリアナも間違いを認めて
「タトゥーが痛すぎて”つの指”って入れられなかったわ」みたいな感じで明るく対応しておりました。(後に”七指輪♡”に修正)
まぁ勉強中だししょうがないよね♪って話ですね。むしろ間違いに明るく返すアリアナ可愛いまである。
・・・・それが!
・・・・それがですよ!
「日本語がプリントされたグッズは公式サイトから削除した」
「もう日本語のレッスンもやめる」
ってアリアナさん。
ここまでの事態になってしまったわけですよ。
え?漢字間違っただけじゃん!!って自分は思った。
何をそんなにみんな怒ってんの?
なんで炎上してんの?って。
けど一番の問題はそこではなかった。
2)文化の盗用(Cultural Appropriation)ってなに?
今回の炎上案件、一番の問題は
「文化の盗用(Cultural Appropriation)」
Cultural appropriation, at times also phrased cultural misappropriation, is the adoption of elements of one culture by members of another culture. This can be controversial when members of a dominant culture appropriate from disadvantaged minority cultures.Because of the presence of power imbalances that are a byproduct of colonialism and oppression, cultural appropriation is distinct from equal cultural exchange.
(Wikipediaより引用)
つまりのところ自分の解釈では
文化の盗用(Cultural Appropriation)というのは
権力があり、人口的にも多数を占める人種的文化的マジョリティー(多数派)が、立場の弱いマイノリティー(少数派)の文化を無理解に使うこと。
という理解をした。
さらにはこれは植民地主義(colonialism)の副産物だと。
もっと突っ込むのならば、
今回のアリアナ・グランデの件にしてみれば、アートとして商用利用しているわけで、「Aesthetic」に利用してるのだとも言える。
「My culture is not your aesthetic」
なんて言われるらしいが、俺達の文化はあんたの美を飾り付けるものじゃねぇ!ってこと。
学校のプロムにチャイナドレスで参加したアメリカの女子高生が批判の的にされたこともある。「俺らの文化はあんたのプロムのドレス衣装なんかじゃねぇんだ!」って。
他にも最近だとVOGUEが日本の着物風衣装を白人モデルに着せて批判されてる。
3)文化の盗用(Cultural Appropriation)はなにが問題なのよ?
自分のような日本に長く住む日本人的にはこの説明を聞いてもなかなか理解できない。
え?そんな目くじら立てることじゃなくない?って思った。(少なくとも自分はそう思った)
(Photo by Louie Martinez on Unsplash)
なぜわかんないのかってそれは、
日本はほぼ単一民族で構成されてきた国だからってとこに行き着く。
さらに言えば植民地支配をされたことがほぼないから。(戦後GHQの統治を植民地支配でないとすれば)
アメリカのような多民族国家では自分たちのルーツとなる文化というのは、自らのパーソナリティに関わる重要なものと捉えられている。
そして多くの少数民族が、かつてとてつもない植民地支配の被害で虐げられてきた歴史がある。
それを虐げてきた側である文化的人種的マジョリティーが無理解に自分たちの文化を使い、あまつさえありえない改造や改悪までするわけだ。
だからこそ植民地主義の副産物なのだ。
その苦しい歴史を想起させるものなのだ。
今度は守ってきた自分たちの大切な文化をも支配し取り込んでしまうのかと。
そりゃ許せない!って気持ちもわかる(やっとわかった)
日本にいると自分たちが人種的にマイノリティーだとは感じることはないし。むしろ自国では圧倒的マジョリティーだ。
だから日本に住む日本人にはわかり辛いってことだね。
例えば日本の文化、サムライとかニンジャとかね、
アメリカの映画で意味わかんない描かれ方することあるじゃない?
もっとひどいのだと意味なくハラキリ!とか、特攻してみたりとか。
他にもよくあるのは中国の文化とごちゃごちゃにされてたり。
日本人でもそれをみてちょっとイラッとしたりしないです?
怒りはしないまでも、やるならちゃんとやってよ!って思わないです?
【結論】
結論として、
今回のアリアナ・グランデさんの炎上に関して、
マジョリティーであるアリアナさんが、国際社会ではマイノリティーである日本人の文化を盗用したと批判されているってことがわかりました。
文化のいち要素である日本語を誤用し、タトゥーというある種美的なものに不用意に使い、新曲のMVも含めて日本文化を歪曲して商業的プロモーションに利用した。
といったところでしょうか。
納得するしないは置いといて、こういった理由で炎上しておりますということです。
4)でもそれじゃあ文化は発展しない
ここまで調べてわかった。
文化の盗用(Cultural Appropriation)でなぜ問題とされるのか。
そしてアリアナはなぜ炎上したのかということ。
同時に日本人として、というよりいまいちこの概念が肌感覚としては理解できない日本人だからこそ、
こういった国際社会の重要なセンシティブなトレンドを意識的に理解しなくてはいけない。と思う。
しかしながら、一方でいくつか疑問が生じません?
「それじゃあ文化は発展しないんじゃない?」
自国の文化を発展させたい、広めたい!って思った場合どうしたらいいんだろうか。
着物も歌舞伎もKawaiiもSushiだって、もっとたくさんの人に触れてほしいって考えた場合の話だ。
じゃあどうしよ。
でも海外の人がむやみに日本文化に触れると文化の盗用って炎上すんじゃない?
ってことで今の段階で思いついた方法は2つ。
①日本や日本人が直接自分たちの文化を広める。
例えばこれを見てほしい↓
ボストン美術館がクロード・モネの「ラ・ジャポネーズ」の前で着物の試着イベントを開催したと。
内容的に着物に関する日本文化を広めたり、歴史や正しい着方を説明するというより、ただの試着イベントでしかない等の理由で炎上。
イベントを中止する事態まで発展した。
簡単に言えばそういうこと。
これがもし葛飾北斎などの浮世絵に関連するイベントの一環で、例えば呉服屋さんとコラボレーションする形や、日本政府の関わる形なで行われたものであれば、恐らくここまで炎上はしない。
文化の担い手である日本が自分たちで自分たちの文化を紹介しているわけだから。
そこにはマジョリティーもマイノリティーもない。盗用もない。
だから文化の盗用(Cultural Appropriation)には当たらない。
②日本や日本人が自ら宣言をする
一定のレギュレーションを作るなり、窓口を作るなどして、基本的に自由にやってくれ!(orやらないでくれ!)と宣言する。という方法だ。
誰が日本を代表するんだ?とか日本人の間でも意見は分かれるだろという指摘はもちろんあるだろうが、
それは日本で日本人なり関係業界が議論すべき話題でしょ。
今までそのような日本文化に関連する規定はあまり為されていないのではと思う。
それをやりましょう!そして宣言したらどうでしょう?ってことです。
例えば「剣道」
自分は長いこと剣道をやってきたので知っているのだが、
全日本剣道連盟は公式で剣道をオリンピック競技化することに反対している。(世界大会はある)
剣道はあくまで武道であり、競技としてのスポーツ的特性より、所謂「道」としての特性を大切にするという判断。
賛否はあるかもしれないが、これはこれでいいと思う。
文化の担い手というか関係団体が宣言をしているわけ。
「世界大会はやるし、文化としては世界中のひとに親しんでほしいけど、文化的特性を守るためにオリンピック競技にはしたくありません。」って。
だから海外から文句は言えないよね。
文化を柔軟に多角的に発展させるのか、それとも特性は守りつつ輪を広げるのか、逆に閉ざして守るのか自分たちで決めて宣言したらどうでしょうって思いました。
【まとめ】
調べたり考えたりして思ったのはこの2通りかな。
他にもあるかもしれない。よかったらコメントで教えてほしい。
とにかく考えのベースとして大事なのは、
その文化をどう扱うのかは基本的にその文化の属する国や人が決めるべきということだよね。
発展させようが、守ろうが、究極的には衰退させようが、基本的にその国や人の決断だと思う。
だから逆に日本が他国の文化を日本で紹介したい!なんて場合は、文化に敬意を払い、文化の盗用にならないよう気をつけるのは大前提。
実際に文化に属す人に関わってもらうとか、監修してもらうとか、相手の文化についてしっかりと理解するとか。
日本人には馴染みがないからこそ重要です。
特にアジア圏の文化は場合によって歴史的に日本がマジョリティーになり得るからね。すべての文化に敬意を。
5)しかしどうしても残る1つの疑問
だけど!どうしても疑問が残る!
「・・で今回のアリアナ・グランデの炎上は、いったい誰が怒ってんの?」
ってこと。
アリアナに限らずだが、日本文化を対象にした文化の盗用に関する炎上案件全般に言えることかもしれない。
炎上するためにはかなりの数の人が怒らないと無理でしょ?
でも日本人でそんなに怒ってる人いるん?
そりゃいるだろうけど、
基本的には日本人はこの手の話に疎いとすれば、そこまでのボリュームにはならないはず。
七輪を作ってる会社が怒ってるん?それとも焼肉店?
はたまた日本漢字能力検定協会とかが怒ったりしてるん?
いや、現段階では怒ってない。
「じゃあ誰が怒ってるん?」
これがめちゃくちゃ疑問なわけよ。
てかなんなら日本人は大半怒ってないと思う。(これは個人的な感覚)
これは調べても個人レベルではわからない話だから、ここからはTwitterやネット記事を見た個人的な予想として聞いてほしい。
【個人的推測】
怒っているのは、
日本人や日本文化に触れている人たち”ではない”人たち
が多くを占めているじゃないかって。
一般的にこれは日本文化に対する文化の盗用(Cultural Appropriation)だってことで、批判されているわけ。一般論としてね。
だけど"自分の"文化に対する盗用だ!って、
「"My" culture is not your aesthetic!!」と言っているひとは少ないのではないのかって感じるの。
つまり直接的には日本文化に関係ない人が怒ってる。
「文化の盗用(Cultural Appropriation)は悪」という文脈において考えれば、これが悪いとは一概に言えない。
けど問題は、当事者である日本や日本人は置いてかれてない?ってこと。
当事者の頭上を飛び越して人種的平等を振りかざして炎上してるの。
え?ちょっと待ってよ!ってこと。
6)日本人としてできること
だからこそ、当事者として黙ってちゃいけないと思うの。
「待ってくれ!私は日本人だが怒っていない。むしろアリアナが日本を愛してくれていることが嬉しいんだ!」とか。
「今度から漢字の間違いは気をつけてね!でもそれ自体は嬉しい!」とか。
逆に、
「日本語は自分たちにとって大切なものだから、間違った使い方を影響力があるあなたに広められては困る。訂正をして、次回以降は細心の注意を払うなど日本文化に敬意を払ってほしい!」とかね。
今回の件に関して、どう思うかは個人の自由だと思う。
別に喜んでも怒ってもいい。
重要なのは
形は何であれ日本人として表明すること
だって思う。
じゃないと置いてけぼりをくらう。
自分たちの文化のことは自分たちで決めて表明していかなくちゃいけない。
関係のない誰かに勝手に決められちゃいけないことなんだ。
だから自分はこうしてnoteに書いてみている。
海の向こうの炎上案件ではない。俺らの文化の話だから。
これは状況を変える力があると思う。
例えば、今怒っている人たちが、日本人の意見を聞いてどう反応するのか。
文化の属する日本人の意見を尊重するのか、無視するのか。
後者の人たちは、センシティブな話題にのかって自分の意見を通したい人たちでしかないってことがわかる。
そうすればこの手の炎上の正体が少しずつ鮮明になってくるんじゃないかって思う。
今回の件、アリアナに日本人として、または日本文化に接するものして支持を表明するためのハッシュタグもできたらしい。
#JapanLoveArianaとか #ThankYouArianaLikeJapanとか。
めちゃくちゃいいことだと思う。
確かに今回の漢字の間違ったこと、不用意に言葉を短縮したことなんかは批判されても仕方ないこと。
で、そこから当の我々はどうしますか?ってのが大切だよね。
これは批判でも支持でもどっちでも自由よ。そこも大切なとこ。
もっと日本は世界で表明していこうよって思う。
個人レベルで言えば、無理に世界とか大きな話じゃなくてもいいかも。自分も日本語で書いてるし。
何語でもいいけどまずは表明することだよ。
やっぱり大好きな日本の、俺らの、私たちの文化だからね。
7)最後にちょっとだけ個人的な意見を
ちょっと暴論なとこあるかもしれないから嫌な人はここまでで。
読んでくれてありがとう!本当に嬉しい!
・・でなんの話かって
文化の盗用(Cultural Appropriation)ってさ、
基本的に主にアメリカで声高に叫ばれていることなんじゃね?って思うの。
人種のるつぼって言われるように、人種の問題って世界中でも一番深刻で身近な話なんだろう。
マイノリティーは強く主張していかないと、埋もれてしまうのだろうから。
(アメリカに住んでないし、この辺は専門家に詳しく聞いてみたいけど)
でもね、それを世界の標準だと思ってほしくないなって。
日本文化っていうアメリカの外のことまで、これが世界標準の人権思想だって騒ぎ立てないでほしい。
確かにアメリカ人の歌手のことだけど、そこには日本文化が絡んでいるんだから。
これがアメリカの考えですけど、日本さんどう思います?って話ならわかるよ。
でも今みたいに日本を差し置いて炎上させてさ、これが世界標準や!って。
その瞬間、本人たちが嫌いなマジョリティーに属しちゃってないですか?って。
植民地主義的な言動じゃないですか?って。
そう思います。違ったらごめんね。
見当違いだったら本当に申し訳ないんですけど、いろいろと見ていてそう感じたのね。
(もちろんアメリカ人の一部であることも理解してます)
それから日本文化は東アジアの文化圏に属しているから、これは日本だけの話じゃない!って意見もあるんじゃないかって思う。
日本だけが勝手に決めていいことじゃない!とか、ルーツをたどれば日本だけの文化じゃない!みたいなね。
けどさ、それに関しては
「うっせー。俺らの文化のことに口出すな。」って言っていいと思うの。
個人的にだけどね。
文化はその文化の主たる使用者に帰属するんだから。そこから逸脱するんなら話は聞けないよね。
(一方で人種差別に関してはきちんと自分なりの意見をもって戦わなくちゃいけないと思うし、日本が文化の盗用をしてしまう側にならないようにしなくてはいけないと思う)
8)最後に
ちょっと書きすぎて疲れちゃった。
前回趣味のお話だったから、急だよね笑
でもさっき書いたようになにか表明したかったからね。
推測の部分もあるし、そもそも議論しつくされた話題じゃないから、これが正解じゃないし、いろんな意見があると思う。
いち意見として読んでほしいなと思います。
特に7番目の話は書くか迷ったけど不快に思った方はごめんね。
だからこそもっと知りたいなって思いました。
あ、あと「文化の盗用(Cultural Appropriation)」って毎回英語で書いてたのは、まだ和訳に揺れがあると思ったからです。念のためにね。
それから日本人という表現。ちょっと難しいけど、今回の場合は日本文化に属する人という意味合いで書きました。
国籍とかではなく。この辺は難しいよね。
ということで、
ここまで読んでくれてありがとう!大変だったと思います。
読みづらい文章でごめんね。
コメントなんかでいろんな意見を教えてくれたら嬉しいです!
もし僕の書く記事を、もう少し見てみてもいいかなと思ったらサポートよろしくお願いします。頑張ります!