ホルスクエスト 第5話
第5話
灯台の戦いと新大陸への船出
一行はマトリン山のふもとのベルチャムの街で旅の支度を整え、半島を横断して関所を通り、ポルテコ城下町へたどり着いた。
山奥で育ったホルスとニサンはベルチャムよりも大きな街を見るのは初めてだった。
ホルスは巨大な建造物や人の多さに素直に驚き、その様子を見たニサンは、ばか、田舎者に見られるだろ!と自身は平静を装った。
ミリコは街よりもそんな2人を見ている方が楽しかった。
一行は食事に寄った店で情報を整理することにした。
3年前、各地で街や村が消失。
現在消失を把握しているのはボコイ、ミミクローザ、ロットフル、コバークの4箇所。
きっと知らないだけで他にも消失している場所があるだろう。
調査した限りでは、消失している範囲はどこも同じくらいの広さで、範囲内の建物や木や地形の起伏がなくなっていて、平らで黒っぽい滑らかな地面が広がっている。
ミミクローザだけはミリコが消失する瞬間を確認している。地鳴りと共に光に包まれて、地面に沈んでいくように消えていった。
現在は範囲内に入っても害はないし特別な魔力の残留も感じない。
範囲外の建物や地形は以前と変わりなく残っているが、消失範囲の境界線は綺麗に切り取られている。
3年の月日でガレキなどは、外側から内側へ崩れ落ちている所もある。
そして全ての消失範囲の中心部には、異形の魔物が出現。
その場に根を張っていて移動はしないが、近付く者を襲う凶暴性をもっている。
調査した4箇所の魔物は撃退済みだ。
撃退後、それぞれの魔物が持っていたらしいカギのようなものを入手。
形や大きさはバラバラだが、どれも共通して読めない文字が彫られている。文字の内容は少しずつ違うように見える。
今わかっているのはこんな所だな、とニサンがまとめる。
ここまでで何か分かることはないかと考えるが、現状では情報が足りないという結論に至る。
3人が言葉に詰まると、近くにいた旅の吟遊詩人が話しかけてくる。
聞くつもりはなかったが、少し前から聞こえてしまっていたから、と言い訳を添えてから本題を話す。
今いるポルテコ大陸から南東に広がるジャピテル大陸。その南部にある「ときかりの洞窟」という場所が3年前に消失したらしい。
消失したのは街や村じゃないのですか?
とミリコが聞き返す。
吟遊詩人は頷く。あくまで噂なので正確な事は分からないが、他の街と同じように洞窟があった場所がまっさらになっているらしい。
何か新しいことが分かりそうだな、とニサン。
次の目的地が決まった。
一行はすぐにポルテコ城下町を後にして、ジャピテル大陸への船が出ている港町ポートマンに移動。
ポルテコのすぐ南に位置する、この大陸の玄関口とも言える港町だ。
船着場には船乗りと乗客たちが溢れ、辺りは騒然としていた。
どうやら灯台に魔物が棲み着いてしまって、船を出すどころではないらしい。
ポルテコ城に討伐隊を要請しているらしいが、派遣されてくるのがいつになるか分からないようだ。
それなら俺らで退治すっか!とニサン。
危ないぞ、と船乗りに止められるが聞く耳持たず灯台へと向かっていく。
仕方なくついていくホルスとミリコ。
3人は町の外れに立っている灯台を登っていく。
建物の中はひんやりとして静かだった。
壁に張り付くように設置された螺旋階段を登り、最上階にたどり着くと暗がりから巨大なタコの魔物が現れた。
ホルスは港の人が困ってるから海に帰ってよ、と魔物に話しかける。
しかしホルスの言葉はまるで伝わらないようで、魔物は腕を伸ばして襲いかかってきた。
仕方なく剣を抜く。
ミリコはホルスとニサンに補助の魔法をかけた。
魔法で体が軽くなったニサンは、ポルテコ城下町の武器屋で新調した短剣を構えて前に出る。
今まではショートソードを使っていたが、ボコイの村跡での戦いで、より短い武器の方が小回りが効いて持ち前のスピードを活かせると感じ、ホルスもそれに賛同したため、思い切って戦闘スタイルを変えたのだ。
ホルスも実戦の経験を積んで確実にレベルアップしていた。
魔物の4本の足から繰り出される攻撃はニサンがほとんどを捌き、ホルスは隙をついてぶよっとした足の1本を見事に切断した。
そしてミリコは、敵が怯んだのを見逃さずに強力な魔法の火球を命中させた。
巨大なタコは香ばしいにおいを残して灯台からそそくさと逃げていった。
3人がポートマンに戻って灯台を解放したという話を聞くと、船乗りたちは喜んですぐに船を出す準備を始めた。
近くにいた乗客たちも思い思いの反応で喜んだ。
お前ら意外と強いし勇気があるな!などと声が飛び交った。
港の近くで出航を待っていると、船長がやってきて魔物討伐のお礼に、と乗船チケットを3枚くれた。
そろそろ出航できますよ、と言って船の方へ戻っていく。
俺たちも行こう!
3人はまだ見ぬジャピテル大陸へ向かう船に乗り込んだ。
続く!
次の話
前の話
第1章のこと
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?