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『泣いたっていいじゃないか?』が好きだ

乃木坂46の楽曲ではない。

いや、もちろんそっちも大好きなんだけど、今回はその話ではなくて、『乃木恋』のストーリーの話だ。
あらすじはこんな感じ。一応ラストはぼかしておこう。

 高校3年生の夏、サッカー部に所属する主人公は別のクラスの堀さんに片想いを続けていた。二人はひょんなことからギターを通じて距離を縮めていく。迎えたインターハイ予選、同校9年ぶりとなる準々決勝進出目前まで駒を進めたサッカー部。主人公は次の試合に勝ったら堀さんに想いを伝えることを決める。そして堀さんも観戦に訪れた試合当日、同点で迎えた終了間近、主人公はフリーキックを外し、その後延長戦でチームは敗れてしまう。泣き崩れる主人公を慰める堀さん。その後、二人は地元のお祭りで再会し……。
 10年後、東京の大学を卒業し、ハウスリノベーション会社に就職した主人公は、淡々と毎日を送っていた。そんな時、高校の同窓会のお知らせが届く。会社の後輩の飛鳥はコンペの準備で共に残業しながら彼の初恋の話を聞き、ざわざわとした気持ちになる。結局同窓会に堀さんは現れず、コンペにも落選する。涙をこぼす飛鳥に、かつて堀さんにかけられた言葉と同じ言葉をかけられた主人公は、あの夏、堀さんは自分を好きでいてくれたこと、今、目の前の飛鳥が好きだということに気づく。恋人になった二人は、主人公の故郷を訪れ、お祭りに出かける……。

乃木恋のストーリーは、オープニングがひとつ存在し、そこから平行に分岐するものが多い。一方で、『泣いたっていいじゃないか?』のように、別のメンバーのストーリーが一本につながっているものは珍しい。
また、乃木恋のストーリーは、メンバーと主人公(=プレイヤー)が結ばれるものがほとんどだ。しかしながら『泣いたっていいじゃないか?』の堀パートでは、二人はおそらく互いに想い合っていながら、ついに結ばれることはない。
こういった点で、『泣いたっていいじゃないか?』は異質である。

私が大好きなのは、まず堀パートのノスタルジックな雰囲気。東京からは離れていることを思わせる故郷で、部活、ギター、屋上、夏祭り、初恋といった"エモい"要素が詰め込まれている。こんな青春を送っていなくても、なぜか「懐かしい」と思ってしまうような理想の夏、幻想の「日本の夏」だ。
ちなみにこの町のお祭りでは"徹夜で盆踊りが行われる"。おそらく、岐阜県の郡上八幡をモデルにしていると思われる。言わずもがな、岐阜県はリアルの"堀さん"の故郷である。

対する齋藤パートも夏であるものの、主人公は社会人として波の小さい毎日を送り、ギターも"押し入れの中に放り込んだまま"。「俺と同じだ」と思う人も多そうな、現実の生活である。この対比が美しく、どこか寂しい。

対比といえば、両パートには同じセリフが何組か登場する。サッカー部の顧問と大人主人公、堀さんと飛鳥、そして堀さんと大人主人公。思わずグッとくる表現だけれど、極めて易しいレトリックだ。個人的には、この文章の平易さが、実在の人物をスターシステム的に使う乃木恋ストーリーの特性に合っているんだと思う。あくまで創作物であることを念頭に置きながらも、情景を想像しやすい。

ストーリーはどこまでも切なく、どこまでも美しい。初恋の儚さとか、少年時代への憧れとか、愛し合うことの喜びとか、幸せへの嫉妬とか、いろんな想いでぐちゃぐちゃになる。周囲に乃木恋のプレイヤーがいないのでこんなにこのストーリーで盛り上がっているのは私だけなのかもしれないけれど、とにかく大好きなのだ。

あまりにもお気に入りなので、ポメラに文字起こしして、いつでも読めるようにしたりした。堀さんが卒業した今、「何かの間違いで映像化しないかな」というのは、私の永遠に叶わぬ幻想だ。

『彼氏イベント』やライブでの『乃木恋リアル』が目立ちがちな乃木恋だが、(一向に更新されないメインストーリーと違って)イベントは異様なペースで開催され、ほとんどのイベントには新規ストーリーが収録される。金か時間を莫大につぎ込まなければまともに報酬も見込めない現在の乃木恋でも、イベントストーリー獲得だけならば新規プレイヤーでも容易である。学生設定のメインストーリーとは異なり、イベントストーリーは設定や雰囲気も幅広く、各々の琴線に触れるものがきっとあるのではないかと思う。

残念なのは、過去のイベントストーリーを後から獲得できる機会がほとんどないことだ。回収専用のイベントが2回ほど開催されたに留まる。ストーリーが使い捨てになっていくのはあまりに惜しい。過去ストーリー獲得のチャンスが、常設化されることを願う。

なんだか宣伝記事みたいになっちゃった。一坂道ファンの嗜好晒し記事でした。

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