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生ハムを作った。 そして食べた。

あれは2年前の2020年1月8日、その前日に教えていただいた方法を実践したくて、川越の精肉卸会社からむさし麦豚のもも肉を1本、購入した。
あれから1年半。 「もう出来てるよ?」と言うお言葉を頼りに妻の実家から降ろしてきた。(前回参照)

カビカビですよ。

いやもー 感慨深い。2年前のあの日を思い出す。

1年半前か。
見比べるとやっぱり太いな。 1年半の時間を経て大分絞られた感じ。

早起きして川越の市場から10.35㎏のもも肉を車に積んで、自宅に戻ると休む間もなく血抜きと塩もみを2時間ほど試みた。いい加減手がしびれたところで塩に漬け、車で1時間の妻の実家の物置に安置し、40日の塩漬期間を経て脱塩。義父に嫌がられながらも納戸の一角を借りて熟成の日々を重ねた肉がこうして、

目の前に

・・・写真の撮り方ヘタだなぁ・・・。もう少しきれいな写真を撮れる人生を歩みたい。
母が天ぷらを持ってきた。 生ハムと天ぷら。 なんてカロリー

鎮座ましましていると、なんとも言えない思いを抱く。
やー、出来たんだなぁと思う気持ちと、本当に食べられるんだろうかコレと不審げな眼差し。

感慨もそこそこにカット開始。

蝋化したような膠化したような脂肪面は、刃物をあてただけでスッとその刀身を受け入れる。 触った時に感じるような硬さは表面だけのものであり、
すぐ下の脂肪層は室温でだいぶ緩くなったのか、包丁が滑るたびに、茶褐色、黄変、そして白と、本来の色味を見せ始めている。
やがて肉の層が顔を見せる。
生肉の時のような鮮やかな肉色が、1年半の時間が経ったことを嘘のように感じさせる。

見せやすくするため、縦で撮影。

肉と脂のバランスの良い切り方をすると、本当に良い味わいを楽しめる。
肉の旨みと脂の甘み。 さて、むさし麦豚はどうだろう。
厚く切っても悪くは無いが、ビーフジャーキーじゃあるまいし、ボリュームよりも繊細さがハムには大事、できる限り薄く切って、しっとりとした柔らかさと、それが空気を含んで口に香気を届けてくれるあの感覚を楽しもう。

コルタドールには成れないね。

カットについて以前調べたところ、適当な大きさという物があるようで、まぁ、大きすぎても口の中に入りきらないでしょ? という至極まっとうなご意見。
それもそうだと思いながらYoutubeとかで上手い人のを見ているとだいたい一口で収まりの良い大きさにカットされている。 そういやお寿司もそうだよな。 大昔はおにぎりくらいの大きさだったのが、洗練されて今の形になったんだって。 まぁ、はみ出す位大きいのも嬉しいけどね。 口いっぱいに頬張って可愛いのは幼児くらいでしょ。

高齢の両親でも、これくらいペロリ

さて、肝心の味についてですが、旨みが深く、これが熟成された風味というものかとかなり満足。 脂の口溶けもよく、獣臭さもほとんど感じられず、風味のうしろに隠されているよう。
1年半、待ち続けていた身としてはこれはこれでかなりの満足。 妻子共々切るそばからつまんでいく始末。 お行儀悪いな。
家族でたいへんおいしくいただきました。 ごちそうさま。

さて、時間はかかったが大変おいしくいただけた自作生ハム。
百点満点かというと必ずしもそうじゃなく、素人の自作、それも一本目となるとやはりどうしても目につくアラがいくつか出てくる。
まず第一に『そのままで食べると塩っぱい』
保存食だし、本場のハムは塩辛い、などと言われるからその塩気は間違いじゃ無いとは思う。 食事と一緒に食べるとき、野菜の旨み、お米の甘さが引き立つ引き立つ。 なのだが、それ単体で口に運ぶととにかく塩気が舌にくる。 旨みも有るし、旨みの余韻も楽しめるのだが、もう少し塩気には控えめに出てきていただきたい。
塩漬の塩の量を減らすのは製造プロセスとして合理的じゃ無いので、塩漬期間を短くするか、塩抜き時間を長くとるべきなんだろうな。 肉の重量1キログラムに対して1日と言う塩漬期間なら、2週間も有れば充分なのかも知れない、今回は(何度も交換したが)ため水で抜いたが、ため水の場合は2~3日で抜く方もいらっしゃる。 今年作ったのにも言えることだが、塩抜き作業を行う時は勤務がからまない時にするべきだろう。

第二は、乾燥が進みすぎてる? と言う疑問。
カットするのに問題は無いが、何というか硬さがソフトジャーキー位の硬さ。 鰹節ではないし、保存食なのだからそれでいいはずなのだが、なんというか、もう少しみずみずしさが残っていて欲しかった。
しっとりとした口当たり、柔らかさ。 スーパー売りの国産生ハムの、あの液体に浸けた製法の生ハムほどで無くて良いから、もう少ししっとりさせてみたい。
水分量が低くなりすぎた可能性が一番だが、肉の質ももしかしたらあるかも知れない。脂肪の量が例えばもう少し違ったのかも。
乾燥を防ぐ目的でスニャトゥーラをするのだが、メイガの被害を恐れて秋以降はしていなかった。 腐敗の懼れを過剰に恐れ、乾燥を優先させたわけだけれども、乾燥の進みすぎる冬時期にそれは杞憂だったのかも知れない。
今作っている物も含め、10月くらいの気温が落ち着き、メイガが出なくなった頃に冬期間だけスニャトゥーラしてみようと思う。 あるいは全体を真空パックという手もあるが、嫌気性細菌であるボツリヌスを考えるとちょっと冒険が過ぎる気がする。
あとは切り出すタイミングが遅すぎたのかも。
重量比67%だと水分が抜けすぎなのだと思う。
なので次回からは必ず各個体ごとに重量を計測して、70%を切らないタイミングで食べ始められるようにしようと思った。

味については豚のスペックによるので、そのうち機会があれば違うところでむさし麦豚以外の豚を買って試してみるのも楽しいかも知れない。

切り始めて1週間以上、自分も家族も誰一人、体調不良を訴えるのはいないので多分上手くいったのだろう。
実際に作ってらっしゃる方、あるいはこれから作ってみようとされる方がもしかしたらいるかもしれない。 日に何人かいらっしゃるらしいご来客の皆様には、『くれぐれも自己責任で』と前置きをつけた上で、楽しい生ハムライフを! と願わずにいられない。

今作っているハムのこの後の作業としては、夏の終わりごろにカビ落とし、気温が下がったらスニャトゥーラ(試し) 冬になったらその次のハムの仕込み・・・となり、正直あまり書くことが無い。 もしかしたら実食と称して書くかも知れないが、その辺は不明。 あとはとんこつラーメンでも作ってみようかなと思ってもいるが、どうだかね。
気が向かれたら、ご覧ください。

それでは、今日はここまでです。 お疲れ様でした!

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