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単独避行

名古屋というとシャチホコとか手羽先とかいろいろあると思うんだけど、ぼくにとっては断然メンマラーメン。

誤解を恐れずにいうと名古屋に対して特に思い入れがない。最初の文を書くときも、名古屋というとでリアルにシャチホコと手羽先しか思い浮かばなかった。先日行ったばかりなのに。なんなら名古屋に親戚がいるのに。ほんとごめんなさい。
過去に何回行ったことあるのか、も思い出そうとしたんだけどなかなかあやしかった。

思い入れがない土地はわりとフランクな心持ちで行けるのでいい。なぜなら思い入れがないから。
今回も名古屋という土地よりもそこであるイベントに思い入れがあったから、その目的以外にメンマラーメンくらいしかプランがないまま名古屋行きを決意した。名古屋って山梨からだとちょっと遠出したいなって時にはちょうどいいな、と思ってたけど、今回、思ってたよりも近くて印象がガラッと変わった。
逆になんで遠いと思ってたんだ?

この間のnoteに書いたとおり、中部横断道の開通により、劇的にアクセスが改善したと噂の静岡から新幹線で名古屋を目指す。
静岡に着いてからしか写真がないのは、運転に集中していたからであって、寄り道して写真を撮る余裕がないくらい新幹線に遅れそうだったわけでは断じてない。

いざ静岡に着いてみたら意外と時間があったので、駅の近くを散策して歩いた。
名前は聞いたことあるライブハウスとか、気持ちいい光の差す駅地下とか。天気予報は雨みたいなこと言っていたけど、めちゃくちゃいい天気で着てきたパーカーを脱ぎ捨ててしまいたいほど暑かった。
お気に入りのパーカーだったから捨てなかったけど。

新幹線に乗るのはいつぶりだろう。ホームで待ってる間もワクワクして落ち着かない小学生みたいにずっと動いていたと思う。パーカーの下はこの時点で言わずもがな汗だくである。

高架を走る電車に乗ると、チャットモンチーの"世界が終わる夜に"のMVを思い出す。し、なんならイントロのフレーズをちょっと口ずさんでしまう。MVみたいにドラムのリズムと電柱がリンクしている錯覚に陥る。もはや病気にちかい。

窓の外を流れる鉄塔がたくさんある地帯とか、誰もいない駅のホームとか、そういうのを見るとなんだか途端に嬉しくなる。不思議。
浜松あたりで田園風景に不釣り合いなバカでかいイオンモールが現れた時には心の中でスタンディングしてオベーションをキメてしまった。拍手喝采です。

新幹線を降りて在来線に乗り換えたんだけど、誰ひとりとして乗っていないし、ホームにも人影はないし、変な世界に迷い込んだ気がしてちょっと怖かった。
甲府ならまだしも、名古屋にかぎってこんなことはないぞ、と。
実際は出発までまだ時間があって全然人が乗っていないってだけだったんだと思う。

今夜泊まるホテルに着いてチェックインを済ます。
部屋は小さめだけど全然充分だ。なんなら狭めの方が落ち着くまである。
今夜の目的、tacicaの猪狩さんの弾き語りワンマン"単独飛行"の会場は徒歩で20分くらい。時間もあるしせっかくなのでGRを持って歩いて行くことにした。

沈んでいく太陽、いわゆるマジックアワーってやつ?その恩恵を感じられないままシャッターを切りながら歩き続ける。
役をしていない時計のやるせなさ、いろんな自販機に取り憑いている見覚えのないKING、面白いものがたくさんあった。RICOHのビルがあったのでGRで撮らねば、という衝動に駆られた。
そんなこんなでライブ会場に着いたけど、まだちょっと早すぎた。少し近くを探索することにする。

名古屋のタクシーは色が絶妙でかわいい。
ライブが終わってもし終電を逃すようなことがあったら絶対このタクシーに乗ろうと思った。
とても辛そうなソースが自販機で売っていて、その時は敬遠したけど、買っとけばよかったな。

会場前に戻った時には、かなりの人で賑わっていた。手元に電子チケットを用意して待つ。紙のチケットじゃないのにもようやく慣れつつある。半券を手帳に貼るのが好きだったから、なんだかちょっとさみしいけど。

弾き語りで2時間近く、ロングフライト万歳。全く飽きない、なんなら朝までこのままやってほしいと思うくらい。
終演後、少しだけ話ができた。大憧れの存在とご対面でめちゃくちゃ緊張しちゃった。内容を要約すると行こうぜマニアックの向こう側という帰結。行きましょう。

カセットテープの音源を買ったので、帰りも聴きながら歩いて帰ることにした。良すぎて笑う。

興奮していたのでなかなか気づかなかったけど、めちゃくちゃ腹が減っている。せっかくだからなにか名古屋っぽいものが食べたい、と思ってGoogleマップで"名古屋"と検索した。馬鹿すぎる。
だいぶ夜も更けていたので麺ならやってるだろう、と今度は"めん"で検索した。きしめん屋が何軒か候補に出てきたのでちょっと遠かったけどそこに決めた。
なんかめちゃくちゃ大きなことを言ってる看板を横目にきしめんを食べてホテルに帰った。ていうかしっかり"名古屋といえば"なきしめん食ってんじゃん。なんで冒頭で思い出せないの。

朝、起き抜けにカセットを聴いて、外の喧騒の中で聴くのとは違ってまた良くて、しばらく放心していた。
それでもお腹はすくもんだから、放心もほどほどに朝ごはんを食べに行った。
朝ご飯はバイキング形式で、ひつまぶしとかあんかけパスタとか、名古屋っぽいご飯がふつうにあった。
味噌汁が大好きなんだけど、味噌汁に限らず汁物が好きなんだけど、わかめも麩も大好きなのでお好みで入れていいよってなってると下品なほど入れてしまう。今回も案の定そうなってしまった。むしろそうなることをわかっていてやっているフシもある、というかフシしかない。節足動物かよ。

出発の準備をする前に、やっぱりカセットを聴きながら三ツ矢サイダーで一杯やった。コンビニで調達したロックアイスに注ぐ。氷ってやっぱりきれいだな。
写真に写っているデスクライトがスイッチを入れても全く反応がなくて、滞在中ついに一度も点灯することはなかった。

名古屋2日目は、ひさしぶりに会う大学の後輩と合流して何をするでもないんだけど、名古屋をまわった。
ただ、せっかくカセットプレイヤーを買ったので、名古屋にあるレコード屋には行ってみたいと思っていた。
後輩のばんちゃんは知らないうちにエレファントジムにハマっていた。いいね。
朝のバイキングから2時間経つか経たないかくらいに僕らはラーメン屋にいた。冒頭にふれたメンマラーメンのお店だ。

お店に入ると店主が元気よく迎え入れてくれた。
セルフのおしぼりを持って席に着く。期待に胸はパンパンだし、腹は朝ごはんでパンパンだけど、どうしてもスペシャルメンマを頼みたい。と思う前にスペシャルメンマを注文していた。自分でも怖すぎる。
正直もう全然入らない胃袋で、のこしちゃうかな、とか不安に駆られていたけど、実物を目の前にしたぼくはもうそんなこと忘れてメンマと麺を啜っていた。

スペシャルメンマのスペシャルは"表面をチャーシューで埋め尽くす"の意で、メンマはその上に敷き詰められている。でもスープもメンマもチャーシューも全部優しい。見た目はインパクトあるけど、めちゃくちゃ優しい大型犬みたいなラーメン。最高。毎日食べたい。
僕らがラーメンを待っている間にも続々とお客さんが来ていた。意外とみんなメンマを頼まないんだな、と思った。こんなにうまいのに。

レコード屋が開くまでそこそこ時間があったので、ばんちゃんに名古屋をふらふらしてもらった。知らない街なので目に入るもの全てが新鮮でたまらない。なんとなくだけど、赤いものが多いな、なんて思ったりした。

熱田神宮にもつれていってくれた。都会の真ん中に森があった。大安だったこともあるのか、結婚式らしき催しが散見された。やさしめの雨が降っていたけど、それはそれできっと思い出になるよね。

前に名古屋に来た時に行った矢場とんを横目に、レコード屋に向かう。名古屋は広い。おまけに道が広すぎて怖すぎる。なんで右折レーンの右側に直進レーンがあるのか、初見殺しも甚だしい。なんなら右折レーンの右側に左折レーンがあるところもあった。怖すぎる。

なんとか無事レコード屋についた。カセットテープがあるか不安だったけど、ちゃんとコーナーができていて、やっぱり好きな人は好きなんだろうなと思った。
カセットテープをひとつ買ってウハウハしながら出発。新幹線まではまだ時間があったので、ドアラに占拠されたファミマを眺めながら、新しめのイオンモールに向かう。イオンモールだいすき。

イオンモールの中を散策して、結局落ち着くのはスターバックスコーヒー。アメリカンな飲み物はアメリカンな味わいがした。散々からだにわるそうな生活をしているからあんまりひとのこと言えないんだけど、この飲み物はあんまりからだにはよくなさそうだ。

駅まで送ってもらって、それでもまだ時間に余裕あるな、と思ってたけど、お土産屋さんが激混みで結局出発ギリギリの時間になってしまった。
結構見た目で外国の方だろうなと思う方々が多くて、また前のような日常が戻ってきているようだと感じた。

雨の滴が電車の窓を走るのがおもしろくて、シャッターを切ったけど、伝わりますか、これ。
名古屋と静岡の間は一瞬なので途中で寝てしまうと乗り過ごす自信があったから絶対寝ないように気張っていたけど、気づいたら船をこいでいた。新幹線の中なのでほんとうに船をこいだわけじゃなくて、慣用句的なアレです。わかると思うけど。いちおう。
無事船からも新幹線からも降りれたのでよかった。

ほんとうのたたかいはここからだった。
一度眠気をおぼえてしまうと、しばらくの間はその眠気に支配されて十分なパフォーマンスを発揮できなくなるのが人間という生き物の悲しいSagaだ。
眠くてぼやける視界を醒ましながら、自分の運転で帰らなければならない。安全第一のバリケードがあてつけのように感じられる。運転する前に自分の車で仮眠をとって、途中でも休み休み帰路についた。

今年はもうちょっと色んなところに行ってみたいな。
何かひとつ目的があると、どうしてもそれだけになってしまうから、目的地だけ決めてふらふらとしたいものです。

今回も非常に長くてとっ散らかってしまった。
もうちょっと断片を切り取れるようになりたい。
善処します(たぶん無理)。

では、また。

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