金太郎飴

1年に1度、G避けのブラックキャップを交換する事にしている。
暑くなってきたので今日それをしたのだが、この部屋でブラックキャップの箱を開けるのはもう3箱目なんだなと思った。
7月で出て行く予定だったから、今年は変えなくていいなとぼんやり思っていた時期もあったなと。


そして気付けば品川底辺派遣OLになってからちょうど1年。
結局社員登用の話は辞退した。部長とお話させてもらい、辞退の意思を伝えた時に、少しだけプライベートの話になった。
今は色々うるさいので、派遣の年齢さえ社員さんたちは知らないのだよね。
今年35歳だと言ったらまあ驚かれた。20代半ばくらいだと思ってたと。
ご結婚は?と言われしてませんと言い、(そういえば昔は結婚は?と言われたらまだですと答えていた気がするけれど、まだって言わなくなったな)お相手は?と言われたので微妙なところです…と答えたら、じゃあそっち頑張ったほうがいいかもしれないねー、しかし…いや悩んだんだろうねえ、としみじみ言われた。
そのあとトイレ前で遭遇したときに、いや悩んだだろうねえ…ともう一度しみじみ言われた。
そりゃ社員登用について考える35歳目前独身女派遣社員の気持ちになったらしみじみもするわ。

同じ課で、隣のグループにいるわたしより少し先に入った女の子(その子は確実に20代前半~半ば)もこの話をもらったらしい。
少し一緒に話したのだが、その子は純粋に条件で悩んでいて、おそらく受けるのだろうけれど、うらやましく感じた。
わたしはこの話が嬉しかった。医療事務に戻りたい気持ちはあるし給料は下がるけれど、純粋に嬉しかった。
でもわたしは色々悩むという選択肢すらそもそもなかった。どうするか、真剣に向き合って悩んで相談して考えられる彼女の事が、うらやましいと思った。
たぶん、これから試験を受けたりなんだりする彼女を見る度にずっと思うのだろうなと。


以前読んだ小説に、
「人間は金太郎飴のような状態に長く耐えられない」
という言葉があり、5年程前だろうか、ものすごく共感した事があった。

わたしは気付けばまた金太郎飴の中にいる。
前後を見て何も変わる事がない。変わる要素がない。変えられない。自分の力でどうにもできない。
でも金太郎飴の中にいるのはわたしの意思なのだよ。仕方がないんだよ。捨てられなかった。今はまだ。自分の意思では、捨てられないよ。


このまま秋になって、なにがどうなったとき、わたしはどうなるんだろう。


(今回の話とはずれるけれど、意地で始めた夜職ももう半年経つわ。早いわ。嫌だからってすぐ仕事辞めなくはなったなわたし…)

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