ぜんざいにまつわる3つの話(沖縄旅_番外編②)
じりじりと照りつける南国の日差しに火照った身体には、冷たい氷がよく染みる……沖縄滞在中、ぜんざいと「ぜんざい屋さん」にすっかり魅力されてしまった。ぜんざいロス解消も兼ねて、3つの味と思い出をつらつらと振り返る。
声に出るほど、うまそうなぜんざい
初めての沖縄ぜんざいは、首里城近くの「ぜんざいの店 純」だった。午後三時、お店には部活終わりの男子高校生が溢れていた。お店を見渡すと「友達とのゆんたくに使ってください」とあり、みんなのお喋りの場になっている。たしかに30名は余裕で入るほど広い店内では、おばちゃんが1人でワンオペ。だからほぼセルフサービス。
ぜんざいはこんもりしていて、かなり大きい。私のぜんざいを見た高校生が「わっうまそう!俺もあれにしよう」って言ってて、ちょっと恥ずかしくなる。でも、それほどうまそうなのだから仕方ない。
噂のとおり、沖縄のぜんざいは金時豆。ふんわりとした氷の奥には白玉が入っててうれしい。練乳たっぷりのミルクぜんざいも魅力的だったけど、暑い日にはあっさりしたノーマルがぴったり。
私が食べ終えるころ、高校生たちのぜんざいも運ばれていた。(正確には、おばちゃんに呼ばれた彼らが運んでいた)
机に並ぶぜんざいと、うめーと言いながら頬張る男子。部活後にぜんざいを食べる高校生活が羨ましい。
三温糖とおばちゃんの優しさが沁みる
ちんすこうも美味しいと噂のパーラーは、漫湖にほど近い住宅地に佇んでいた。狭い店内にはすでに男子高校生でいっぱい。ちんすこうを買って帰る手もあったけど、外は灼熱。ぜんざいを食べないわけにはいかない。
お会計の机のすぐ隣に席をしつらえてもらうと、おじちゃんが氷を削る。出てきたぜんざいは優しい甘さで、黄色い白玉はウコンが香る。この組み合わせがまぁ絶妙。おばちゃん曰く、金時豆は三温糖で煮てるのだそう。だからこんなに優しいのか、と納得。
おもむろにおばちゃんが「今日は来てくれてありがとうね〜」と高校生たちに売り物のパイを渡していた。彼らが帰った後、おばちゃんと話してると、高校生に見えた彼らは成人していて、友人のお葬式後だったと教えてくれた。パーラーはその友人と来た、思い出の場所だったのだ。
パーラーの壁を見ると子供たちのノートがびっしりかかっており、落書きからメッセージまで溢れている。「今の子たちはもうこんなことはしないのね。みんな画面だもの」と、おばちゃんが少し寂しげに呟いていた。
カフェのような店内でおしゃれなぜんざいを
町中の小さなぜんざい屋さんだけでなく、ミーハーなので有名店もちゃんと訪問した。ガイドブックでもよく見る「富士屋」は、予想通り混んでいて20分ほど待った。おしゃれなインテリアにハワイアンなBGMはまるでカフェのよう。アパレルコーナーも併設されている。
注文したのはもちろんノーマルタイプ。
金時豆のお汁を凍らせ、それをかき氷にしている。歌舞伎揚のようなお煎餅のアクセントも嬉しいし、白玉とお豆を好きな配分で口に運べるのも楽しい。あっという間に食べ終えてしまった。
……あれ、なんか物足りない。
申し分ないクオリティなんだけど、なんだこの物足りなさは。
ああそうか。私にとって、ぜんざい屋さんはおばちゃんと子ども達がセットなのかもしれない。そう思うと、町中のぜんざい屋さんが恋しくなった。