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抜いていいのは入れ歯に虫歯、抜いちゃならないアタイのタマタマ

最近 "これを書いているtbtが去勢する" と言う真偽不明な噂が某アイドルやオタクの間で流行っているそうですね。

この謎の去勢ブームの中、私の父親 (1944生-2020没,故人)が、私が生まれる前に
去勢(タマヌキ)を悲しむ、当時の飼い猫のミッタローからの手紙
というお話を書いていたのが実家にて発掘されました!先日文字起こしをしたので、この機会に公開します。

直筆の原文

※お話の舞台は1980年代(昭和50年代)と思われます。去勢の扱い、ペットの外出、差別用語など令和の世には相応しくない表現があるかもしれませんが、オリジナルの表現を尊重してそのまま転記します。
なお、ミッタローチャン(主人公のオス猫、当時のペット)は結局お手紙の訴えにもかかわらずにタマヌキされました。

登場人物:
ミッタロー: オス猫。去勢(キンヌキ・タマヌキ)が決まり、オネエチャンに手紙を書く
オネエチャン: 飼い主夫婦の妻。ミッタローの去勢を決める (私の母親)
オニイチャン: 飼い主夫婦の夫。ミッタローに字を教える (私の父親)
ゴン:  外の野良猫。ミッタローの宿敵。いつも喧嘩でミッタローをいじめる。

ナヤミオオキオノコ(雄猫)より


ハジメテオテガミサシアゲマス


ジツハワタクシ、ジヲカク(注…痔を描くにあらず 字を書くの意※1)ノハ、ウマレテコノカタ、セイヲコノヨニウケシヨリ、イママデ、マツタクゴザイマセン。サクヤ、イチヤヅケデ、モウベンキョウイタシマシテ、ヤット、コノヨウニマズう「カタカナ」ヲオボエマシタ。 
※1 作者が特に意味のない言葉遊びを好んでいた

カタカタニイチジカン。ひらがなに30ぷん。そしてごらんあれ、漢字ににいたっては何と10分。まあわれながらこのオツムのいいことこのできのよさ。

ほれぼれ、ここほれあそこほれ 

てなもんです。
如何(イカ)に短時間でこの「字」を覚えたか。ちょっと以下記します。西瓜(スイカ)でも食べながらお読みください。ついでにも一つ。

水筒、甘いか、酸っぱいか
あなたの好きなのモンゴイカ、
田中の好きなのありゃコイか。
ハートとハートがあそりゃコイか。

ああそうです、「字」の話でした。

"天皇ポンポコ、ハンコは王子"など
(直筆転載)

キリがないのでやめますが、以上のごとくアッというまに様々な「字」をおぼえたのです。

どうも前置きが長くなりました。なぜ私が手紙を差し上げたか、早く書かねばなりません。

なに、初めての手紙ですのでコウフンシテついついワキ道に逸れてしまうのです。読みづらいとは思いますが、少しのご辛抱の上、最後までお読みください。

実は、昨夜10時すぎ、ハナウタ混じりにいいご機嫌で、アタクシの大好きな、ワガヤのオゲンカンの前迄帰ってきますと、中から何やら殿と奥方のヒソヒソ話、耳を澄ませて聞いていると、あいもかわらず吾輩のこと、本当にこの夫婦※2 は話題がないなと思いつつも、暫くきいていますうちに、ワタクシカオがあおざめ、胸がドキドキ、オシッコモレモレ、いやもうすっかりびっくりぎょう天、なんと、わたくしの「キンヌキ」の話をなさっているではありませんか。

※2 この夫婦:生涯猫の話ばかりしていた私の両親

まあおそろしい話、考えただけでも身の毛もよだつオソロシキ、ああそれからワタクシの方策がないものかと。
なんというイマワシイことをご相談されているのか。お二人には、このキンヌキという事が私にとってどんなにオソロシイ事かわかっているのでしょうか。

アッ申しおくれました。
もうおわかりと思いますが、私ワタクシアナタのシモベミッタロチャン※3です。

ミッタロチャン近影

抜いていいのは入れ歯に虫歯、
抜いちゃならないアタイのタマタマ
抜いていいのはペンペン草よ、
抜かれてたまるかアタイのキンキン
じょうずにヌイましょ、オゾウキン

ゴマスリ ゴマスリ ミッタロー
すてきな ヤサシイ オネエサマ ※4
キレイな オカオの おネエチャン
アイシテイルのよ  アネウエサマヲ
ドウカネガイヲカナエテネ
オベッカオベッカミッタロー

 ※4 オネエサマ: 飼い主(母親)の呼び名。
父親はオニイチャン。

とにかくなやみ苦しんで何とか方案はないものかとオニイチャンに相談しましたら、
「オマエがイクラニャンニャンないてもわかってもらえないだろうから、ここはひとつキンヌキされることによってどんな災害が我が身に起こるか、字をおしえてやるから、手紙でも書いて直訴したらどうだ」
といわれまして、只今せっせとペンを走らせているのでございます。

まず申し上げますと、ワレラネコナカマではキンヌキサレタものを、ビッコネコとして非常にケイベツしております。
なぜ、「ビッコ」というかと申しますと、ヌカレタことによりまして体のバランスがびみょうにくずれ重心を失い下半身がかるくなるために歩くときに重心が上半身すなわち前足にかかりすぎ、びっこを引くようなカッコウになるからです。では、びっこ猫になるとどうしてこまるか、これが一番の問題点です。

ひとつ、びっこネコになると、
  体のバランスがくずれるために、窓からの出入りが不自由になり、オシッコ、ウンチなど、外でできなくなる。即ち、排泄をすべてウチの中でする事になり従って今以上にオネエサンに迷惑をかけることになる。

ひとつ、びっこネコになると、
  やっとこのごろ五分五分になっていたヘイの上でのゴンとのケンカも体の平均を失うことになり、キットコテンパンにヤラレ、アタクシノ名誉をイチジルシク傷つけられる

ひとつ、びっこネコになると、
  当然男としてのキノウを失い、アノことができなくなる。そうするとワタクシのこの芸である、ワタイレモミモミもできなくなるし、なにより一度だけでもシタカッタアノケイケン。(ハズカシながらワタクシハまだドウテイナノデス。)
 オニイチャンに聞きましたがソレハソレハキモチノイイモノらしゅうございますからね。めくるめく快感、まるで、四次元の世界にでもいるようなコウコツの境地…… 思ったダケでも体がホテル。

 サミットカイギハニューオータニ
 二人でいったよ都ホテルに
 かがみのおへやだエンペラー
 シタカッタ、シタカッタ ナニシタカッタ アレシタカッタ

ヨコミチにそれましたまだまだやります

ひとつ、びっこネコになると、
  アタシのタマタマをオモチャにして遊びをしている、私のソンケイするオニイチャンの「キンキン、キンキン、ミッタロー」などのアソビができなくなり、オニイチャンをがっかりさせる。
 つまらぬこととは、思いますが、オニイチャンにとってこのアソビの意味は実に重要な意味を持っており、このアソビなしでは、さびしく、せつなく、かなしくて、毎日世界が灰色になると今も私にオニイチャンは語ってくれました。
 きけば、お二人は愛し愛されてゴケッコンになられたとの事。夫であるオニイチャンを悲しませないでください。それは妻であるオネエチャンのツマラヌ義務なのですぞ。

ひとつ、びっこネコになると、
  トウソウ欲がなくなり、今のワタクシの一番の生きがいである、あのニックキゴンタとのイクサも出来なくなる。
 私からこれを取るとダラダラのクッチャネネコになり、只でさえオオグライのワタクシメは、ますます食欲がおうせいとなり、オネエチャンのフトコロ即ち家計を大いに圧迫し、挙げ句の果てはこの家を経済的ハタンにみちびくようになる。

以上はほんの一例にすぎません。
どうか「タマヌキ」を考えなおして下さい。
私はコのウチの住人、アナタガタの婿養子となりましてコノカタよく教育され「カイネコ十ヶ条」※5をキチンと守ってきました。  

※5: 猫と飼い主の間で取り交わされる父親考案の条文。"飼い猫たるものは〜〜べし"と書かれた十箇条があり、これに猫が「猫印」を前足で押印することで発効される。これがないと飼い猫になれない。

ついいましたが、オニイチャンと私で可決されました「カイネコ十ヶ条」その三条によりますと
「カイ主は何人といえどもイカナル事情があろうともそのカイネコである物の基本的猫権をオカスベカラズ」
その十条では
「以上の事項にツイテ問題が生じたる時は、カイ主カイ猫互いに双方が平和に話し合い民主的ルールにのっとって解決すべし」
と決められており、一方的な武力による解決を深く禁じて、立場の弱いカイネコの保護を強く朗らかに守っております。

どうかオネエサマ、イハンしないでください。
カサネガサネよろしくおねがいします。

ココデウタウ山笠音頭のフミテ
カネガあってもオラカサネー
アメガフルノニオラカサネー
ヒト目会いたいオラカサネー(母さん)
カサネテカサネテヨカッタネ
カサネテカオネガイオネエサマ

アー 夜がシラジラとシラジラともう明けてまいりました。
オネエサンのカワイイネガオに朝の光がさんさんとふりそそぎ、まるで天女か観音さまみたいにみえます。
どうかコノネガイかなえてくれますように
ハンンヤハラミッダロベ、南妙法蓮華経
断りなくオキョウをとなえつつ、筆を置きます。

涅槃

アナタの家来、ドレイ、作業員、使用人、小使い、
 下男、下働き、そして幸せを運ぶ天使

              ミッタロー🐈



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