財務レポート自動生成システムの実装 - Day 11
たき@財務RAGチャレンジ中です。昨日は時系列分析による予測機能を実装しましたが、今日はいよいよ分析結果を実務で使えるレポートとして自動生成する機能を実装していきます。
なぜレポート自動生成が必要か?
ここ10日間で様々な分析機能を実装してきました。
異常値の検知(Day 7)
予算実績の管理(Day 8)
KPIダッシュボード(Day 9)
将来予測(Day 10)
ただ、これらの分析結果は「データ」であって「洞察」ではありません。経営判断に活用するためには、人間が解釈して文章化する必要がありました。この作業を自動化することで、以下のメリットが期待できます。
レポート作成時間の短縮
一貫性のある分析と表現
人的ミスの低減
リアルタイムな更新
実装したコア機能
1. 基本レポート生成エンジン
class FinancialReportGenerator:
def __init__(self, kpi_data, prediction_data, anomaly_data):
self.kpi_data = kpi_data
self.prediction_data = prediction_data
self.anomaly_data = anomaly_data
def generate_executive_summary(self):
"""経営層向けサマリーの生成"""
summary = {
'revenue': self._analyze_revenue(),
'profit': self._analyze_profit(),
'trends': self._analyze_trends(),
'alerts': self._get_critical_alerts()
}
return self._format_summary(summary)
def _analyze_revenue(self):
"""売上分析"""
current = self.kpi_data['revenue'].sum()
prev = self.kpi_data['prev_revenue'].sum()
growth = (current - prev) / prev * 100
return {
'current': current,
'growth': growth,
'forecast': self.prediction_data['revenue_forecast'][-1]
}
2. データ連携の実装
class DataIntegrator:
def __init__(self, config: Config):
self.kpi_loader = KPIDataLoader(config)
self.prediction_loader = PredictionLoader(config)
self.anomaly_loader = AnomalyDataLoader(config)
def get_integrated_data(self, report_date: datetime) -> Dict:
"""統合データの取得"""
return {
'kpi': self.kpi_loader.load_latest(),
'predictions': self.prediction_loader.get_forecast(),
'anomalies': self.anomaly_loader.get_recent_anomalies()
}
3. LLMを活用した分析コメント生成
from langchain import PromptTemplate, LLMChain
from langchain.llms import OpenAI
class AnalysisCommentGenerator:
def __init__(self):
self.llm = OpenAI(temperature=0.7)
self.template = """
以下の財務指標に基づいて、簡潔な分析コメントを生成してください:
売上高: {revenue}円 (前年比: {growth}%)
営業利益: {operating_profit}円 (利益率: {margin}%)
主要KPI: {kpi_status}
検出された異常値: {anomalies}
分析コメント:
"""
def generate_comment(self, data: Dict) -> str:
"""分析コメントの生成"""
prompt = PromptTemplate(
template=self.template,
input_variables=[
"revenue", "growth", "operating_profit",
"margin", "kpi_status", "anomalies"
]
)
chain = LLMChain(llm=self.llm, prompt=prompt)
return chain.run(data)
レポートの構成
実装したレポートは以下の3つのセクションで構成されています。
経営サマリー(1ページ)
重要KPIのハイライト
前年/予算との比較
注目すべき異常値や予測
詳細分析(3-4ページ)
部門別の実績分析
トレンドグラフ
予測結果の解釈
アラート・推奨アクション(1ページ)
検出された異常値の一覧
リスク要因の分析
推奨される対応策
使ってみた感想
実装してみて、いくつか興味深い発見がありました。
効果があった点
時間効率の劇的な改善
月次レポート作成時間が短縮する
分析の一貫性向上
担当者による解釈の違いを排除
KPIの定義や計算方法が統一
過去のレポートとの比較が容易に
新しい分析視点の発見
異常値検知とLLMの組み合わせで、人間が見落としていた傾向を検出
予測モデルの結果を常に含めることで、将来を見据えた分析が標準化
改善が必要な点
テンプレートの柔軟性
特殊な案件や一時的なイベントへの対応が難しい
部門特有の分析視点をもっと取り入れたい
文章表現のバリエーションを増やしたい
LLMの精度
文章が不自然なケースがある
より深い洞察を得るためのプロンプト改善が必要
次のステップ
明日は、このレポート生成システムの品質を支えるデータ品質管理システムを実装します。
データ検証ルールの設定
品質スコアの計算
異常データの自動検出
その後、いよいよRAGチャットボットの開発に入ります。これまでに実装した分析基盤とレポート生成機能は、チャットボットの重要な基盤となるはずです。
#Python #FinancialAnalysis #AutomatedReporting #LLM #AdventCalendar
Written by たき@財務RAGチャレンジ中