見出し画像

時系列分析で見える化する財務予測 - Day 10

たき@財務RAGチャレンジ中です。昨日までKPIダッシュボードを通じて財務状況の「現在」を可視化してきましたが、今日は「未来」を予測する機能を追加していきます。

なぜ予測機能が必要なのか?

予算統制をしていると、よくこんな会話が交わされます。

- 「この調子だと、年度末の売上はどのくらいになりそう?」
- 「来月の経費が予算を超えそうだけど、どれくらい超過する?」
- 「新規サービスの売上、この成長カーブだとどこまで伸びる?」

これらの質問に、データに基づいて答えられる仕組みがあれば、より確かな経営判断ができるはずです。

時系列分析の基礎

財務データの時系列分析では、以下の3つの要素を考慮することから始めます。

1. トレンド(傾向)
  - 長期的な上昇・下降傾向
  - 事業の成長や衰退を反映

2. 季節性(周期変動)
  - 決算期の駆け込み需要
  - 賞与月の固定費増加
  - 特定月の定期支払い

3. ノイズ(不規則変動)
  - 一時的な大型案件
  - 予期せぬコストの発生

実装のポイント

今回は、分析の基礎を念頭に置いて、以下3つの点を注力してみました。

1. 異常値対応の強化
財務データには一時的な大型案件や特別損益といった特殊要因が含まれることがあります。これらをそのまま予測モデルに反映させると、将来予測に歪みが生じる可能性があります。特殊要因を適切に除外することで、事業の本質的なトレンドを捉えやすくなり、予測精度が向上します。また、異常値の自動検出や補正により、分析作業の効率化が期待されます。

2. 予測モデルの実装
財務データには季節性やトレンドなど、単純な線形予測では捉えきれない複雑なパターンがあります。たとえば、決算期の売上増加や賞与月の費用増加といった特徴を考慮することで、より正確な予測が可能となります。事業特性に応じたモデルを構築することで、部門ごとの特性を反映した具体的な予測情報を提供し、経営判断の質を高めることを目指します。

3. 信頼区間の設定
予測には必ず不確実性が伴うため、単一の予測値だけでなく、信頼性を示す範囲を提供することが重要です。信頼区間を設定することで、予測の不確実性を定量的に評価でき、経営判断においてリスク要因を適切に考慮した意思決定が可能になります。さらに、複数のシナリオ(楽観、中立、保守)を提示することで、予算策定やリスク管理の精度を向上させます。

総合的な取り組みの効果
異常値対応、事業特性を考慮したモデリング、信頼区間の設定を組み合わせることで、予測精度と業務効率が大幅に向上します。これにより、将来的にはRAGを活用したアシスタントの実装を目指し、経営判断の質をさらに高めていきます。

実装例

1. 異常値対応の強化
Day 7で実装した異常値検知を活用し、予測精度を向上するようにする。

def prepare_data(self, df: pd.DataFrame) -> pd.DataFrame:
    """データの前処理"""
    df = df.copy()
    
    # 異常値の処理
    if self.anomaly_detector:
        anomalies = self.anomaly_detector.check_anomalies(df)
        df.loc[anomalies, 'revenue'] = np.nan
        df['revenue'] = df['revenue'].interpolate()
    
    return df

2. 予測モデルの実装
シンプルながらHolt-Winters法を使う

def train_model(self, series: pd.Series, key: str):
    """予測モデルの学習"""
    model = ExponentialSmoothing(
        series,
        seasonal_periods=12,  # 12ヶ月の季節性
        trend='add',
        seasonal='add',
        use_boxcox=True      # データの安定化
    )
    self.models[key] = model.fit()

3. 信頼区間の設定
予測の不確実性を可視化

def forecast(self, series: Series, key: str, periods: int = 6):
    """将来予測の実行"""
    forecast = self.models[key].forecast(periods)
    
    # 95%信頼区間の計算
    residuals = self.models[key].resid
    std_resid = np.std(residuals)
    z_score = 1.96
    
    confidence_intervals = pd.DataFrame(
        index=forecast.index,
        columns=['lower', 'upper']
    )
    confidence_intervals['lower'] = forecast - z_score * std_resid
    confidence_intervals['upper'] = forecast + z_score * std_resid
    
    return forecast, confidence_intervals

使ってみた感想

実装しテストシナリオのデータで試したところ、シンプルながら可視化を進められそうな結果になりました。

1. 営業1部(パッケージ事業)
  - 季節性が強く、3月に大きなピーク
  - 予測区間が広い(不確実性が高い)

2. 営業2部(クラウド事業)
  - 安定的な成長トレンド
  - 予測の信頼性が高い

3. 予測精度の評価
  - MAPE(平均絶対パーセント誤差)
    * パッケージ:15-20%
    * クラウド:8-10%
  - クラウドビジネスの方が予測しやすい

次のステップ

明日は、この予測結果を含めた財務レポートの自動生成に取り組みたいですが、プログラムが継ぎ足しになったので、整理しようかと思ってます。

予測機能を追加したことで、ダッシュボードは「現在を把握する」だけでなく、「未来を予測する」ツールへと進化しました。次は、これらの分析結果は、恣意的な判定を除いた自動レポート機能として、実装を進めて行きたいです。

質問やアドバイスがあればコメントください!

#Python #DataScience #Finance #TimeSeries #AdventCalendar

Written by たき@財務RAGチャレンジ中

いいなと思ったら応援しよう!